マスクの着用が当たり前になると、つい口腔ケアがおろそかになりがちです。
気づかないうちに舌が白くなっていたら、それは舌苔(ぜったい)かもしれません。
舌苔は口臭などの原因になるため、ケアが必要です。
今回は、舌ブラシでの舌苔の取り方と舌磨き以外のケア方法をご紹介します。
舌苔ケアで口臭改善を目指しましょう。
口臭の主な原因「舌苔」はケアすべき!
まずは、舌苔ケアについて行ったモニターインタビューの回答をご覧ください。
※わかもと製薬モニターインタビューより抜粋(2019年6月実施)
舌に白くこびりつく舌苔は、口臭の主な原因といわれています。
インタビューで舌苔ケアを口臭対策が目的と回答している方もいるように、舌苔ケアが口臭対策になることは知られてきています。
舌苔を減らすには適切なケアが必要ですが、そもそも舌苔とはどのようなものなのでしょうか。
まずは舌苔の正体を知り、引き起こす可能性のあるリスクを確認しておきましょう。
口臭の約6割は舌苔が原因
舌を鏡で見ると白くなっていませんか。
これは舌苔(ぜったい)と呼ばれるもので、口臭の原因の約6割を占めるといわれています。
舌苔はその名の通り、舌に苔(こけ)のように付くものです。
舌苔自体は治療が必要となる病気ではありませんが、口臭をはじめ、健康や生活の質(QOL)を脅かす原因にもなるため、毎日ケアすることをおすすめします。
舌苔は食べかすや細菌の塊
舌を白くする舌苔の正体は、食べかすや細菌の塊です。
舌の表面は凹凸になっていて、このすき間に食べかすや口腔内から剥がれ落ちた細胞、それを分解する細菌などが溜まっていき、舌苔が形成されます。
食べかすや細胞を細菌が分解する際、悪臭のする硫化水素、メチルメルカプタンといった揮発性硫黄化合物が発生します。
これが舌苔によって口臭が発生する理由です。
細菌は食べかすや細胞をエサに増殖していきます。
舌苔は歯周病進行の原因にもなる
舌苔は細菌の塊であるため歯周病進行の原因にもなります。
同じく細菌の塊である歯垢が歯周病を引き起こす原因であることをご存知の方は多いでしょう。
歯垢は歯周ポケットと呼ばれる歯と歯ぐきのすき間に溜まり、歯垢に棲み付く細菌が歯周ポケットを深くしていきます。
これが歯周病の原因となり、進行すると歯ぐきが痩せていき、最悪の場合は歯が抜けてしまうこともあるのです。
そして歯周病対策として歯垢を取り除くために歯磨きをしっかり行っていても、舌苔に潜む細菌を放っておくと、歯周病が進行する原因になってしまいます。
舌苔は歯周病の予防、進行を防ぐためにも取り除く必要があるのです。
高齢者にとっては舌苔が誤嚥性肺炎の原因になることも
高齢者の場合、舌苔が誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)の原因になることもあります。
誤嚥性肺炎とは、口腔内の細菌が誤って気管から肺に入ることで引き起こされる肺炎のことです。
高齢者は飲み込む力が低下するので、食事の際に食べ物が誤って気管の方へ送られてしまうことがあります。
その際、舌苔の中にいる細菌も紛れ込んでしまい、誤嚥性肺炎を引き起こしてしまうのです。
令和2年の主な死因の構成割合(戸籍法により届け出られた死亡の全数を対象)では誤嚥性肺炎が第6位となっています。
入院が必要な60代の肺炎患者のうち、誤嚥性肺炎の割合は約半数にものぼり、年代が上がるにつれてその割合は上昇する傾向にあります。
舌苔の除去は、肺炎予防の観点からも必要とされるのです。
令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況(厚生労働省)
舌苔が増える原因!唾液の減少が起こる理由
舌苔は口臭を引き起こすだけでなく、歯周病や誤嚥性肺炎など深刻な病気の原因にもなるわけですが、口腔内が唾液で潤っていれば、舌苔が付着するのを予防できます。
しかし、さまざまな理由で唾液の分泌量が減少すると、舌苔を増やす原因になってしまいます。
ここでは、唾液の減少が起こる理由を解説します。
加齢
年齢を重ねると筋力が衰え、食べ物を咀嚼する力が低下します。
すると、唾液を分泌する唾液腺への刺激が少なくなります。
唾液には、口腔内を洗い流して清潔に保つ自浄作用がありますが、分泌量が少ないと十分に機能しなくなります。
洗い流されずに残った食べかすや細菌などが舌に溜まっていくと、舌苔が増えてしまうのです。
口呼吸
口腔内が乾燥しがちな口呼吸も、唾液減少の原因となります。
とくに就寝中は、無意識に口が開いて口呼吸になってしまう人もいるので要注意です。
子供は就寝中だけでなく、口元の筋力も弱いため、ポカンと口が開いてしまうことで、口呼吸の習慣がついてしまうことがあります。
大人が普段の生活から気をつけてあげることが大切です。
緊張・ストレス
緊張やストレスが唾液減少の原因になることもあります。
緊張で喉がカラカラになる経験をしたことがある人は多いでしょう。
これは自律神経の働きによるもので、緊張状態が続くと舌があまり動かなくなり、唾液の分泌が減少するからです。
緊張状態やストレスのかかる状況になると、唾液によって口腔内が洗浄されず、舌苔が堆積しやすくなります。
水分不足
大量に汗をかくなどして体内の水分が失われると、唾液も減って口が渇きやすくなります。
1日に約1〜1.5リットル分泌されるといわれる唾液を確保するには、それ以上の水分補給が必要となります。
咀嚼(そしゃく)不十分
柔らかい食べ物中心の食事をしていると、咀嚼が不十分になり唾液の分泌量が減ります。
本来は噛む力がある若い世代でも、咀嚼回数が減ると筋力が衰えていきます。
すると咀嚼回数がさらに減り、唾液の分泌量も減少するので、舌苔が溜まりやすくなってしまうのです。
将来的に飲み込む力が弱まってしまうと、溜まった舌苔が誤って気管に入り、誤嚥性肺炎を引き起こしやすくなることも考えられます。
妊娠
妊娠中は個人差はありますが、唾液の分泌が減少傾向になることがあります。
ちなみに、妊娠中は女性ホルモン「エストロゲン」の分泌量が増えますが、唾液中のエストロゲンも増えることで、歯肉炎や口内炎、虫歯などが起きやすくなります。
薬の副作用
薬の副作用が原因で、唾液の減少が起こる場合もあります。
口渇や口内乾燥、唾液分泌減少、脱水など、口腔乾燥につながる副作用を提示している薬は、日本医薬品集に掲載されている薬剤全体の約1/4である約600品目に及ぶといわれています。
薬を服用中で口の渇きが気になる方は、医師・薬剤師にご相談ください。
基本の舌苔ケア「舌磨き」とは
病気の原因にもなりうる舌苔を取り除くには、どのような方法があるのでしょうか。
ここでは、基本の舌苔ケアである舌磨きについて見てみましょう。
やり過ぎはダメ!舌磨きの頻度
舌磨きは文字通り、舌を磨いて舌苔を取り除く方法ですが、舌はとてもデリケートな部位なので、やり過ぎると舌を傷つけてしまいます。
また、舌には味を感じる組織・味蕾(みらい)もあるので、傷つけると味覚が鈍くなる可能性もあります。
できる限り取り除きたいからと、1日に何度も磨いたり、力を入れて擦り過ぎたりしないようにしましょう。
舌磨きの頻度は、多くても1日1回、とくに付着が多く見られる朝に行うのがおすすめです。
市販されている舌磨きアイテムの種類
市販されている舌磨きアイテム・舌クリーナーには、ブラシ型・ヘラ型・スクレーパー型・スプーン型といった種類があります。
特徴は以下の通りです。
通販サイトでの人気商品や口コミ評価なども参考に、それぞれの舌ブラシ特有の磨き心地を実際に試してみて合うものを見つけましょう。
ブラシ型
舌磨きアイテムのなかでもっともオーソドックスなのがブラシ型です。
その名の通り歯ブラシによく似た形で、舌の凹凸に入り込み、溜まった汚れを掻き出して取り除きます。
ヘラ型
舌表面を軽くなでるようにして使うヘラ型。
優しい使用感でブラシタイプよりもえずきにくいです。
スクレーパー型
U字型スクレーパーとも呼ばれ、ヘラ型よりもさらに広い範囲を掃除できます。
他のタイプと比べて喉の奥まで入り込みにくい形状で使いやすい反面、持ち歩くにはややかさばります。
スプーン型
こっそりケアしたい人には、一見舌磨きアイテムには見えないスプーン型がおすすめです。
材質がチタン製なら耐久性もあるため長く使えます。
正しい舌苔の取り方は?舌磨きの手順
舌も磨いたほうがいいと聞いて、歯磨きのついでに歯ブラシで磨いているという人もいるかもしれません。
ですが歯ブラシのブラシ部分は硬いため、舌を傷つけるリスクが高くなります。
必ず舌専用ブラシを使いましょう。
舌苔の取り方は難しくありません。
奥から手前に向かってブラシを動かすのが正しい方法です。
手前から奥に動かしたり、往復させたりすると、細菌を気管に送り込んでしまう可能性があるので、やらないようにしましょう。
磨き終わったら口をゆすぎます。
その際、マウスウォッシュを使うのも効果的です。
ただし殺菌剤入りのものだと、良い菌まで殺してしまう可能性があるので気を付ける必要があります。
舌苔が乾燥しているなら保湿剤を使う
水分不足や唾液の減少などで口腔内が渇くと、舌苔が舌にこびりついてしまうことがありますが、乾いた状態で無理に取り除こうとすると、舌を傷つけてしまいます。
舌苔が乾燥しているなら、保湿剤を使ってふやかしてから磨くようにしましょう。
口腔保湿剤には、リキッドタイプやスプレータイプ、ジェルタイプなどがありますが、高齢者など誤って飲み込むリスクが高い人の場合は、塗って使うジェルタイプがおすすめです。
舌磨きアイテム以外で舌苔を効果的に除去する方法
舌ブラシなどを使った舌磨きは一般的な舌苔ケアです。
しかし、下記のように、満足していない、満足できずにやめてしまったという人もいるのが現状です。
A:舌苔用のブラシヘラを買って歯磨きの時に洗っています!
Q:今行っている舌苔ケアに満足していますか?
A:していません
Q:満足していない理由を聞かせてください
A:半年くらい使っているのですが、あまり綺麗になっているように感じません
(30代前半・女性)
A:舌の歯磨きはやめました。ウェとなるしあまり効果がわからなかったので
(60代前半・女性)
※わかもと製薬モニターインタビューより抜粋(2019年6月実施)
舌苔ケアには他にもいろいろなやり方があります。
ここでは、舌磨きアイテム以外で舌苔を効果的に除去する方法をご紹介します。
ガーゼ・綿棒
身近にある衛生用品でも舌磨きはできます。
ガーゼ
ガーゼで舌磨きをする際は、濡れたガーゼを人差し指に巻きつけて優しく舌を拭いていきます。
ガーゼに黄色い汚れがついたら、ガーゼをきれいな部分に変えて再び拭き取りましょう。
色がつかなくなるまで繰り返せば、舌苔を取り除くことができます。
ガーゼでの舌磨きは、汚れ落ちがわかりやすいのがメリットです。
きれいに磨くポイントは、人差し指を前後左右に小刻みに動かすことです。
ガーゼで舌磨きをする場合は、取り残しがないようにさまざまな方向から拭くようにしましょう。
行うタイミングは、食後の歯磨きが終わった後がおすすめです。
拭き過ぎたり強くこすり過ぎたりすると舌が傷ついてしまうので、力を入れ過ぎず優しく拭くようにしましょう。
綿棒
綿棒を使う場合も、舌磨きの要領はガーゼと同じです。
綿棒を水で濡らして優しく拭いていきます。
凹凸の部分に拭き残しが出ないよう、奥から手前に拭いていきましょう。
白い部分はつい強くこすってしまいたくなりますが、棒状の綿棒で強くこすれば、舌を傷つけます。
舌汚れをこすり取るのではなく、力を入れずにあくまで優しく拭くことを意識しましょう。
重曹
コップに小さじ1杯程度の重曹を入れてうがいをするのもおすすめです。
舌苔は酸性なので、アルカリ性の重曹が舌苔を中和し、酸性の汚れを落としてくれます。
はちみつ
はちみつも舌苔ケアに効果的だとされています。
はちみつを舌に乗せて全体に行き渡らせることで、舌苔に含まれるタンパク質が分解されて浮き上がるため取り除くことができるのです。
また、はちみつには強い殺菌力があるので、舌苔の原因となる悪玉菌の増殖を抑制できるとも考えられます。
純度100%のはちみつなら、虫歯予防も期待できます。
キウイフルーツ・パイナップル
近年、キウイフルーツやパイナップルに舌苔を取り除く成分が含まれることが明らかになってきました。
キウイにはアクチニジン、パイナップルにはブロメラインというタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)が含まれており、舌苔の主成分となる食べかすや古い細胞などのタンパク質を化学的に分解・除去する効果が期待されています。
とはいえ、大量摂取すると舌を保護している粘膜のタンパク質まで分解しかねません。
食べすぎには注意しましょう。
乳酸菌
舌苔が増えたり口臭が発生したりする原因、さらに歯周病や誤嚥性肺炎を引き起こす原因はヒトに悪影響を与える口腔内悪玉菌の増殖です。
この悪玉菌対策として、善玉菌を口腔内に摂り入れることで、悪玉菌の増殖を抑える効果が期待できます。
WB21乳酸菌というお口の善玉菌なら、口腔内に摂り入れることで口内環境改善に効果があることが報告されています。
タブレット
舌ケア用のタブレットでケアするのもおすすめです。
噛まずに舌の上でゆっくり溶かしていけば、舌ケアの効果が期待できる成分が舌の上に長くとどまります。
水もいらず舐めるだけなので、いつでもどこでもケアできるのはメリットといえるでしょう。
おすすめ!唾液を増やす対策
舌苔の付着を防ぐには唾液の自浄作用が大きな役割を果たします。
ここでは、唾液を増やすおすすめの対策をご紹介します。
口臭ケアにもなるのでぜひ実践してみましょう。
食べ物で唾液の分泌を促進する
唾液の分泌を促す方法として、梅干しやレモンを口にするのもひとつの方法です。
すっぱいものが苦手な人は、梅干しやレモンの画像を見るだけでも分泌が促進される場合があるのでお試しください。
そのほか、昆布に含まれるアルギン酸も唾液の分泌を増やします。
唾液で溶けにくいダシ用の昆布ならより良いです。
唾液を増やすには、よく噛んで食べることも有効です。
食事の時間を十分に取れない人もいるかもしれませんが、よく噛んで食べることは口臭予防にもなり、消化の助けにもなります。
少なくとも30分、できれば1時間かけてしっかりと咀嚼しながら食べることをおすすめします。
どうしても時間が取れないときはガムを噛むなどして、唾液の分泌を促すようにしましょう。
唾液腺マッサージ
唾液の分泌を増やすには3箇所の唾液腺のマッサージも有効です。
力を入れる必要もなく、誰にでも簡単にできます。
緊張やストレスが続いているとき、リフレッシュも兼ねてマッサージをするとよいでしょう。
舌・口の運動
舌を動かすことも唾液の分泌につながります。
簡単な舌の運動として舌回しがあります。
口を閉じたまま、歯ぐきに沿うようにして舌先を右回りに10回、左回りに10回ゆっくりと回します。
すると唾液腺が刺激されて、分泌量が増えます。
また、舌回しは口周りの筋肉を鍛えることにもつながるため、噛む力がアップしたり、ほうれい線の改善に貢献したりと、さまざまな効果が期待できます。
また、「パタカラ体操」は、唾液の分泌以外に口呼吸の改善や噛む力、飲み込む力の維持に有効とされ、介護の現場でも実践されています。
やり方は次の通りです。
しっかりと口を閉じてから、「パ」と大きく口を開けて発音します。
噛んでいるときに口から食べ物が出ないように唇を閉じる筋力を鍛えます。
上アゴに舌をくっつけて「タ」と発音。
食べ物を押しつぶし、飲み込むために必要な舌の筋力をつけます。
「カ」を発音するときは、喉の奥を閉めることを意識しましょう。
誤って気管に食べ物が入る誤嚥(ごえん)を防ぐためです。
「ラ」は舌を丸め、舌先を上の前歯の裏に付けて発音します。
食べ物を喉の奥に送り、飲み込むために必要な動きです。
「パ・タ・カ・ラ」それぞれをひとつずつ、少々大げさに口・舌を動かしながら大きな声で発音しましょう。
「パ・パ・パ・パ・パ」「タ・タ・タ・タ・タ」とそれぞれ5回ずつ発音する方法もおすすめです。
唾液が分泌され口の中が潤い、口や舌が動かしやすくなり、咀嚼や飲み込みもしやすくなっていくことを実感できるでしょう。
まとめ
現代はストレス社会に加え、柔らかいものを食べることも多くなり、昔と比較して唾液が分泌されにくい状況になっています。
唾液が少ないと口腔内での自浄作用が十分に機能せず、舌苔が増えてしまいます。
舌苔自体は病気ではないものの、口臭を引き起こす要因となります。
歯周病や誤嚥性肺炎を引き起こす可能性もあるので、日頃から口腔ケアを怠らないことが大切です。
市販の舌磨き専用の商品もありますが、ガーゼや綿棒など身近なものでも舌磨きに効果的です。
まずはできることからセルフケアを始めましょう。