歯周病の治し方は?一般的な歯周病治療の方法と自分で治す方法について解説!

歯ぐきの腫れや出血など歯周病の症状があっても、自分で治せるのであれば治したいと考える方は少なくありません。

歯科医院に行かなくても、歯周病は治るのでしょうか。

また、歯科医院ではどのような治療が行われるのでしょうか。

今回は歯周病の一般的な治療方法日常のケア方法について詳しく解説します。

 

歯周病は治るの?

歯周病は歯垢(プラーク)の中にいる歯周病菌が歯と歯ぐきの間にある歯周ポケットから侵入し、歯ぐきに炎症を引き起こしたり歯を支える歯槽骨を破壊したりする病気です。

歯周病になると、基本的に病気になる前の完全な状態には戻すことができません

しかし、適切なケアと治療を行うことで進行を止め、症状が出ないようにコントロールすることは可能です。

 

【歯周病】自分で治すことは難しいが予防することはできる

歯周病の原因である歯垢や歯石は、自宅で行うケアでは完全に取り除くことはできません。

とくに、歯周ポケットの中の歯垢や歯石は専門的な処置を行わないと取り除くことができず、進行度にあわせた適切な治療が不可欠です。

悪化すると歯を失ってしまうことは少なからずあるため、歯周病の症状があるときは自分で治そうとせずに早めに歯科医院で受診しましょう。

歯周病になったときは歯科医院での治療でしか治すことはできませんが、毎日のブラッシングや生活習慣を意識することで歯周病を予防することは可能です。

 

歯周病を予防するセルフケア方法

歯周病を予防するには、どのようなケアが効果的なのでしょうか。

ここでは、歯周病を予防する具体的なケア方法を5つ紹介します。

 

1ヶ月に1回は歯ブラシを交換する

歯ブラシは使っていくうちに毛先が広がり、清掃力が弱くなっていきます。

そのため、劣化した歯ブラシを使い続けると、きちんと歯垢を除去できずに歯周病になりやすくなります。

また、歯ブラシは水洗いして乾燥させても雑菌が繁殖するため、衛生的によくありません

弾力性が低下して歯や歯ぐきを傷つける恐れもあるので、定期的に交換するようにしましょう。

 

1日3回のブラッシングをした場合、歯ブラシを交換するタイミングは1ヶ月に1回が目安です。

1ヶ月経っていなくても、歯ブラシを背中側から見て毛先がはみ出ているようであれば交換するようにしましょう。

短期間で毛先が広がってしまう場合、歯みがきをするときの力が強い可能性があります。

ゴシゴシと磨かずに、歯ブラシの毛先が広がらない程度の力で優しく丁寧に歯を磨くように心がけましょう。

 

歯周ポケットを意識したブラッシングで歯を磨く

歯みがきをするときは、歯垢が溜まりやすい歯周ポケットに毛先を当てて磨くように意識すると歯周病予防になります。

歯ブラシを斜め45度に傾けて歯と歯ぐきの間に毛先を当て、回転させながら歯垢を掻き出すように磨きましょう。

そのままの角度を保ち、軽い力で前後に動かすと歯周ポケットの歯垢を取り除くことができます。

他にも、歯と歯の間や奥歯の噛み合わせ部分も歯垢が溜まりやすい場所のため、磨くときは小刻みに動かして入念に歯垢を取り除きましょう。

 

デンタルフロスや歯間ブラシを使用する

歯と歯の間は歯ブラシの毛先が入りにくいため、デンタルフロスや歯間ブラシを使用すると歯垢を取り除きやすくなります。

 

【デンタルフロス】

・選び方

デンタルフロスは弾力のある繊維の束で、歯と歯の間の歯垢を取り除く道具です。

必要な長さを切り取り指に巻いて操作する「糸巻きタイプ」と、ホルダーにフロスが取り付けられた「ホルダータイプ」があります。

デンタルフロスを使い慣れていない方や指での操作が難しい方は、ホルダータイプを選ぶとケアしやすいでしょう。

 

・使い方

  1. 前後に動かしながら、デンタルフロスを歯と歯の間に差し入れます。(手前の歯の歯ぐきの中に糸が隠れる程度まで)
  2. 手前の歯の表面に沿わせて、接触点(歯列において隣在歯どおしが接触する部分)まで歯垢を掻き出します。
  3. 次に奥側の歯の表面に沿わせて、接触点まで歯垢を掻き出します。
  4. 前後に動かしながら、デンタルフロスを取り出します。

 

【歯間ブラシ】

・選び方

歯間ブラシは歯と歯の間が大きい方向けの道具です。

前歯に使いやすい「ストレートタイプ」と奥歯に使いやすい「L字タイプ」があります。

ストレートタイプは折り曲げて角度をつければ、どの部分でも使用可能です。

自分の歯と歯の間よりも大きいと歯や歯ぐきを傷つけることがあるため、少し小さめのサイズを選びましょう。

 

・使い方

歯と歯の間に差し込み、前後に数回動かして歯垢を取り除きます。

 

歯みがき粉を見直してみる

歯みがき粉は商品によって配合されている成分が異なるため、歯周病対策に役立つ成分を配合した歯みがき粉を使うこともおすすめです。

薬用歯みがき「アバンビーズ® グラン」は、ブラッシングをともなって歯垢を除去する生きた乳酸菌「WB2000 乳酸菌(清掃剤)」が生きたままが配合されています。

また、以下のような歯周病予防に効果が期待できる薬用成分が配合されているのも特長です。

  • 歯ぐきの腫れを抑える「β-グリチルレチン酸」
  • 歯石の沈着を防ぐ「ゼオライト」
  • 歯ぐきの炎症・腫れを抑える「塩酸ピリドキシン」

他にも、「フッ化ナトリウム」が配合されているため、歯周病予防以外にも虫歯の発生や進行を予防する効果を期待できます。

 

生活習慣を改善して免疫力を高める

免疫力が低くなると口の中の細菌バランスが乱れ、歯周病の発症・進行のリスクを高めます。

不規則な生活や暴飲暴食など生活習慣の乱れは免疫力を低下させる原因となるため、生活習慣を改善することが歯周病予防になります。

免疫力を高めるために、以下のようなポイントを意識してみましょう。

 

【質の良い睡眠をとる】

睡眠不足は自律神経のバランスを乱れさせて、免疫力の低下につながります。

睡眠時間を確保して、ぐっすりと眠れる質の良い睡眠をとるように心がけましょう。

 

【食生活を見直す】

免疫力を高めるには暴飲暴食は避けて、栄養バランスの良い食事を摂ることが大切です。

栄養バランスを意識しつつ、以下のような歯周組織の抵抗力を高める栄養素を取り入れてみましょう。

  • ビタミンC、E、A、D
  • 食物繊維
  • タンパク質
  • カルシウム
  • 鉄分

 

【喫煙を控える】

タバコに含まれるタールがヤニとして歯に付着すると、その上に歯垢が付きやすくなります。

また、タバコに含まれる有害物質は歯周病菌への抵抗力を低下させたり、血流を悪くして歯周ポケットの中で歯周病菌が繁殖しやすい状態にしたりします。

そのため、歯周病予防をするなら、喫煙は控えるようにしましょう。

 

【ストレスを減らす】

ストレスは免疫力の低下につながるため、日頃からリラックスできる時間を作ることが大切です。

ストレスを減らすには、以下のような方法があります。

  • よく笑う
  • ウォーキング・ジョギングなど適度な運動をする
  • 好きな音楽を聴く
  • 自然を感じながら散歩をする

 

一般的な歯周病治療の方法

前述のセルフケアでは、歯周ポケットの中の歯垢や歯石を取り除くことができません。

これらは専門的な処置を行わないと取り除くことができないため、歯科医院での検査や治療が必要になります。

歯周病治療で実施される検査は、以下のようなものがあります。

 

【歯周ポケット検査(プロービング検査)】

歯周病は進行するほど歯周ポケットが深くなることがあるため、プローブという目盛りのついた針状の器具を歯周ポケットに差し入れて深さを調べます。

他にも、炎症による出血の有無、歯根の形、歯石の有無、歯と歯ぐきの状態などを確認します。

 

【X線写真検査】

X線写真により歯槽骨の破壊された範囲や程度、歯石の有無などを調べます。

 

【歯垢の付着率の検査】

染色液を使い、歯の表面の歯垢の付着率を確認します。

 

【歯の動揺度検査】

ピンセットで歯を挟んで動かし、歯の動揺度を測定します。

歯周病は進行するほど歯槽骨が破壊され、歯がグラグラと動きやすくなります。

 

これらの検査により、軽度の歯周病・中等度の歯周病・重度の歯周病と診断されます。

歯周病の進行度別に、一般的な歯周病治療方法を確認してみましょう。

 

軽度の歯周病

軽度の歯周病は、歯ぐきのみが炎症している状態です。

歯根膜や歯槽骨まで炎症が起こると、骨が溶けはじめて歯周ポケットが深くなることもあります。

歯ぐきの腫れや歯磨き時の出血といった症状が出ることがありますが、軽度だと発症に気づかないことも少なくありません

一般的に、軽度の歯周病の場合はブラッシング指導・スケーリングを行い、歯周病の原因となる歯垢を取り除くプラークコントロールだけで治療が可能です。

 

【治療の流れ】

①ブラッシング指導

歯科衛生士による歯ブラシの持ち方や歯の磨き方などの指導を受けます。

②スケーリング

専用の器具を使い、歯ぐきの上の歯垢や歯石を除去する治療です。

歯石は歯垢が石灰化して硬くなったもので、表面がザラザラしているため歯垢が溜まりやすくなります。

歯石は自宅でのブラッシングでは取り除けないため、スケーリングにより取り除く必要があります。

 

不適合な被せ物がある、歯並びや噛み合わせが悪い、歯ぎしりがあるといった場合は歯周病のリスクが高まるため、必要であれば調整をすることがあります。

治療後に再度検査を行って改善がみられれば、治療を終了して定期的なメンテナンスに移行します。

 

中等度の歯周病

中等度の歯周病は炎症が広がって歯周ポケットが深くなり、歯槽骨が歯根の長さの2分の1程度まで溶けて歯根部が露出し始めている状態です。

歯ぐきの出血や痛み、膿、知覚過敏といった症状が出やすく、歯槽骨が溶けることで歯がぐらつきやすくなります。

一般的に中等度の歯周病治療は、軽度歯周病と同じくブラッシング指導・スケーリングを行なった後にルートプレーニングを行います。

 

【治療の流れ】

①ブラッシング指導

②スケーリング

③ルートプレーニング

専用の器具を使い、歯周ポケットの中の歯根部にある歯垢や歯石を除去する治療です。

細菌により汚染された歯根の表面を削り、歯石が付着しないように滑らかに研磨する作業も行います。

治療後に再度検査を行って改善がみられれば、治療を終了して定期的なメンテナンスに移行します。

 

重度の歯周病

重度の歯周病は歯ぐきの痛みや出血といった症状がひどくなり、歯槽骨が歯根の長さの3分の2以上まで溶けて歯がかなりぐらつくようになります。

症状により日常生活に支障が出るようになり、放っておくと自然に歯が抜け落ちてしまうこともあります。

一般的に重度の歯周病の治療では、軽度・中等度と同じ基本治療を行った後に状態にあわせた治療方法が判断されます。

 

【治療の流れ】

①ブラッシング指導

②スケーリング

③ルートプレーニング

④状態にあわせて以下のような治療を行います。

 

【歯周外科処置(フラップ手術)】

歯ぐきを切開して歯根を露出させ、付着している歯垢や歯石を除去する治療です。

 

【歯周組織再生療法】

歯周病により失った歯周組織を再生させる治療です。

代表的な治療方法には、タンパク質を主成分とした「エムドゲイン®ゲル」を歯根の表面に塗るエムドゲインや、「メンブレン」という人工膜で破壊された部分を覆うGTRがあります。

 

【歯周補綴治療(ししゅうほてつちりょう)】

歯槽骨が溶けてぐらついている歯に被せ物をし、隣の歯と繋げて固定することで歯を安定させる治療です。

 

FMD(フルマウスディスインフェクション)】

FMDは短期間で口腔内のクリーニングを行い、同時に抗菌薬の内服を行って口腔内・身体の中の歯周病菌を徹底的に除菌する治療です。

歯周病により状態が悪くなった歯を残しておくと、顎の骨まで影響を及ぼす恐れがあります。

そのため、どのような治療を行なっても改善が見込めない場合は、やむを得ず抜歯が必要になることもあります。

 

まとめ

歯周病は自分自身で治すことはできないため、歯周病になったら歯科医院で治療を受ける必要があります。

歯ぐきの腫れ・痛み・歯のぐらつきなどの症状が出たら、早めに歯科医院で受診するようにしましょう。

また、歯周病予防には、正しいブラッシングや規則正しい生活習慣などを心がけることが大切です。

歯周病は自覚症状がないまま進行する場合もあるため、定期的に歯のクリーニングや検診を受けることも歯周病予防には欠かせません。

自宅でのケアと歯科医院でのケアを行い、歯と歯ぐきを健康な状態に保ちましょう。