口臭(生理的口臭)の主な原因は、舌についた汚れである舌苔(ぜったい)といわれています。
口臭予防として舌磨きは有効ですが、なかには「正しいやり方がわからない」「デメリットが気になる」という人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、舌苔(ぜったい)が口臭の原因になる理由や舌磨きの正しいやり方、注意点、舌磨きをすることで得られる効果を紹介していきます。
口臭の約6割は『舌苔』が原因!
舌苔とは、舌に付着している白〜黄色っぽい苔状のものです。
舌の表面には舌乳頭(ぜつにゅうとう)という突起があり、舌乳頭の隙間に食べかすや、剥がれ落ちた細胞などが溜まると舌苔が形成されます。
口臭にはさまざまな原因がありますが、約6割は舌苔によるものだといわれています。
口の中にいる細菌は、舌苔に含まれる食べかすや剥がれ落ちた細胞をエサにして増殖します。
細菌が増殖する際に、(細菌が食べかすや細胞を分解する)硫化水素やメチルメルカプタンといった悪臭を放つ揮発性硫黄化合物を発生させます。
舌苔が薄くついている程度であれば大きな問題ありませんが、厚くついている場合は細菌の温床となり口臭が発生しやすくなります。
舌の表面に舌苔が溜まる主な原因は、以下のようなものがあります。
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舌苔はうがいで落とすことはできないため、口臭が気になるときは舌苔を取り除く舌磨きを行うのがおすすめです。
口臭を予防する!舌磨きの正しいやり方
ここでは、舌苔を取り除く舌磨きの正しいやり方を紹介します。
STEP1|水や舌専用ジェルで舌を湿らせておく
舌苔が乾燥していると舌にこびりついてしまい、取り除きにくくなります。
無理に取り除こうとすると、舌を傷つける原因にもなるため、舌磨きをする際は舌苔を柔らかくしておくことが大切です。
舌磨きをする前に、水を口に含んで舌を十分に湿らせておきましょう。
STEP2|舌を大きく前に出す
舌苔がついていないところは磨く必要はありません。
鏡で舌の表面についた汚れを確認しながら舌磨きをすると、効率よく舌苔を取り除くことができます。
舌苔は舌の中央〜奥の方に多く付着しやすいので、舌をできるだけ突き出して舌全体の汚れを確認しましょう。
STEP3|舌ブラシを濡らし、舌の奥から手前に向けて磨く
鏡で舌苔がついているところを確認したら、濡らした舌ブラシで舌を磨いていきます。
舌磨きをする際は、舌ブラシを舌の奥に優しく当て、手前に向かって3〜4回程度軽く掻き出すように動かしましょう。
舌ブラシを手前から奥に動かすと細菌が喉の奥に入ってしまう可能性があります。
また、ゴシゴシと往復するように磨くと舌を傷つける恐れがあるので注意しましょう。
舌苔が多くついている場合は、1回の舌磨きですべての舌苔を取り除くのは難しい場合もあります。
舌苔を無理に取り除こうとせず、少しずつ落としましょう。
STEP4|うがいをして、口内に残った汚れを流す
磨き終えたら、最後にうがいをして口の中に残った汚れを洗い流します。
軽くゆすぐ程度だと汚れが残ってしまうため、ブクブクうがいとガラガラうがいを行ってしっかりと口の中をきれいにしましょう。
【うがいの正しい手順】
<ブクブクうがいのやり方>
<ガラガラうがいのやり方>
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舌磨きが終わったら、使い終わった舌ブラシを流水で洗い、清潔なタオルやペーパーでしっかりと水気を拭き取ってから保管しましょう。
間違ったケアは逆効果!舌磨きの適切な頻度・順番・注意点
舌苔を取り除くことは口臭ケアに効果的ですが、舌はデリケートで傷つきやすいため注意が必要です。
ここでは、舌磨きの適切な頻度・順番・注意点を紹介します。
やり過ぎはNG!舌磨きは1日1回が目安
1日に何度も舌磨きをすると舌の表面を傷つけてしまいます。
舌の表面が傷つくと炎症を起こして粘膜が剥がれ落ちたり、細菌のエサが増えて口臭を悪化させたりする場合があります。
舌磨きはやりすぎず、1日1回を目安に行うようにしましょう。
※商品によって推奨している使用回数等が異なる場合があります
舌磨きは起床後、歯磨きの前に行なう
唾液には、口の中の汚れを洗い流す自浄作用や細菌の増殖を抑える作用があります。
眠っているときは唾液の分泌量が低下するため、起床時は、口の中に細菌が最も多い状態です。
水分補給や朝食と一緒に細菌を飲み込まないよう、舌磨きは起床後・歯磨き前に行うのがおすすめです。
味蕾(みらい)を傷つけないよう優しく磨く
舌の表面にある舌乳頭(ぜつにゅうとう)には、味を感じる「味蕾(みらい)」という細胞の集まりがあります。
ゴシゴシと強い力で舌を磨くと、味蕾を傷つけてしまう場合があるので注意しましょう。
味蕾が傷つくと味覚障害になり、味を感じにくくなる可能性があるため、舌磨きをする際は優しく磨くことが大切です。
歯ブラシではなく舌専用ブラシを使う
一般的な歯ブラシは毛先が硬くなっているため、舌磨きとして使用すると舌を傷つけることがあります。
舌への刺激を抑えるために、舌磨きには歯ブラシではなく舌専用ブラシを使うようにしましょう。
ドラッグストアや薬局で販売されている舌ブラシには、大きく分けてブラシタイプ・ヘラタイプ・ステンレスのヘラタイプ・スクレーパータイプがあります。
それぞれの特徴は以下の通りです。
【ブラシタイプ】
ブラシタイプは、ヘッドに植え付けた毛束で舌苔を取り除きます。
舌の凸凹に入り込んだ汚れが掻き出しやすく、歯ブラシのような感覚で使えるので舌ブラシ初心者におすすめです。
硬い毛のものは舌を傷つける可能性があるため、柔らかく高密度の商品を選びましょう。
【ヘラタイプ】
ヘラタイプは、プラスチックやシリコーン素材のものが多く、ヘラ状の突起で舌表面を撫でるようにして舌苔を取り除きます。
ブラシタイプより洗浄力は劣りますが、舌への負担が少なく優しくケアできるのが特徴です。
他にも、使用時にえずきにくい・お手入れがしやすいというメリットがあります。
【ステンレスのヘラタイプ】
ステンレスのヘラタイプは、スプーンのような形状をしており、舌の表面を撫でるようにして舌苔を取り除きます。
ステンレスやチタンといった金属でできているので力加減に注意が必要ですが、衛生的で長く使えるメリットがあります。
すっきりとしたデザインで、舌磨きアイテムに見えないのも特徴です。
【スクレーパータイプ】
スクレーパータイプは、U字にカーブした形状をしており、カーブ部分を舌の表面にあてて撫でるようにして舌苔を除去します。
他のタイプよりも舌に当たる範囲が広いため、効率よく舌苔を取り除けます。
金属製なのでお手入れがしやすく耐久性が高いメリットがありますが、使用する際は力加減に注意が必要です。
また、他のタイプに比べて大きいため、持ち運びや収納に不便さを感じることがあります。
舌ブラシは定期的に新しいものに変える
ブラシタイプは、劣化すると舌苔を取り除きにくくなります。
汚れが付着して衛生的にも良くないため、舌ブラシは定期的に新しいものに変えるようにしましょう。
商品によって使用期間は異なりますが、一般的な舌ブラシは1ヵ月に1回、煮沸消毒可能なものは2〜3ヶ月に1回が交換するのが目安です。
ステンレスタイプは半永久的に使用できますが、都度洗浄し清潔に保つようにしましょう。
口臭対策だけじゃない!舌磨きをすることで得られる効果
舌磨きには、口臭予防以外にも口腔内や全身の健康に関わる良い効果が期待できます。
ここでは、舌磨きをすることで得られる効果を紹介します。
歯磨きの効果を高める
いくら丁寧に歯磨きをしても、舌苔があると細菌や汚れが歯に付着してしまう恐れがあります。
歯磨きと併せて舌磨きをすることで、細菌の増殖を防ぎ、口臭・虫歯・歯周病予防に効果が期待できます。
感染症予防
唾液には「IgA」という成分が含まれており、体内にウイルスや細菌が侵入しないように防御する働きがあります。
口の中が不衛生だとIgAの働きに影響を与え、免疫力が低下して細菌やウイルスに感染しやすくなります。
口の中を清潔に保つことは、風邪やインフルエンザなどの感染症予防にもなるため、歯磨きと併せて舌磨きを行うのがおすすめです。
誤嚥性肺炎の予防
食べ物や唾液などが食道ではなく、気管に入ってしまう誤嚥(ごえん)により、肺に食べ物と一緒に細菌が入り込むことで引き起こる肺炎を『誤嚥性肺炎』といいます。
誤嚥性肺炎は、飲み込む力が低下した高齢者や脳梗塞など病後の人に起こりやすい病気です。
細菌の温床である舌苔を取り除けば、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクを下げることができます。
味覚を正常に保つ
舌の表面にある味蕾(みらい)には、甘味・酸味・苦味・塩味といった味を感じる細胞だけでなく、味を感じる細胞が正常に働けるようにサポートする細胞などがあります。
味蕾がある舌に舌苔が溜まると、味覚が鈍くなり、食事の満足感が得られにくい場合があります。
舌苔を除去することは、口臭予防だけでなく、食べ物をおいしく味わうために大切なのです。
まとめ
舌磨きで舌苔を除去すると口臭予防になる他、口腔内や全身の健康にも良い影響を与えられます。
ただし、間違った方法で舌磨きを行うと舌を傷つける可能性があり、口臭の悪化や味覚障害を招く場合もあるので注意しましょう。
舌苔の主な原因は、「口の中の洗浄不足」や「唾液の分泌量の低下」ですが、病気が関わっている場合もあります。
舌苔をケアしても口臭がなくならない、舌苔が異常に増えた、など気になる症状があるときは口腔外科を受診し医師に相談するようにしましょう。