歯石(しせき)とは?歯石の適切な落とし方や歯石の付着を予防する方法を解説

口腔ケアにおいて歯石の除去は重要な課題のひとつです。
歯石を放置してしまうと、歯周病や歯肉炎といったトラブルの原因となるため、早めにケアすることが大切です。

この記事では、歯石の適切な落とし方や歯石沈着の予防法について解説します。
正しい口腔ケアの知識を身につけていつまでも健康な歯を保ちましょう。

1.歯石(しせき)とは

「歯石」とは、歯垢(プラーク)と唾液に含まれるリン酸やカルシウムが結合し石灰化したものです。
個人差はあるものの、約2週間程度で歯垢(プラーク)は石灰化し、歯石になるといわれています。
出典:歯石 | 厚生労働省e-ヘルスネット

歯石は、付着する場所によって「歯肉縁上歯石」と「歯肉縁下歯石」に分けることができます。

歯肉縁上歯石歯肉縁下歯石
付着する位置歯肉より上の歯の表面歯や歯肉の間の溝に面した歯根面
成分唾液内のリン酸やカルシウムがプラークと結合して固まったもの歯と歯肉の間(歯肉溝)からの浸出液とプラークが結合したもの
白色もしくは黄色褐色や暗褐色
かたさ比較的やわらかいかたい

 

歯石の成分の約80%はリン酸カルシウムですが、その他にもタンパク質や炭水化物、細菌の死骸などが含まれます。
歯石そのものがむし歯の原因ではないですが、歯石の表面に細菌が増殖することで、虫歯や歯周病を引き起こします

歯石はその名のとおり石のように硬いため、通常のブラッシングでは取り除くことはできません。歯石を付着させないためには、そのもととなるプラークを毎日のブラッシングでしっかり取り除くことが大切です。

すでに歯石、とくに「歯肉縁下歯石」が付着している場合、虫歯や歯周病が進行している可能性があります。
適切に歯石を除去しないと、症状がさらに悪化する恐れもあるため、歯科医の指導の元、適切なケアを受ける必要があります。

2.歯石(しせき)と歯垢(プラーク)の違い・見分け方

「歯石」と「歯垢(プラーク)」何が違うの?と思っている人も多いでしょう。

歯垢(プラーク)は口内に存在する細菌の塊で、白っぽい色をしており、ねばつくのが特徴です。
食後8時間ほどでできるといわれており、プラーク1mgのなかには、およそ300種類1億個ものの細菌が存在しています。
出典:プラーク / 歯垢 | 厚生労働省e-ヘルスネット

歯石は、口内の歯垢(プラーク)が唾液に含まれるリン酸やカルシウムなどと結びつき石灰化したもので、歯垢(プラーク)は2週間程度で石灰化し歯石になります。

歯石と歯垢(プラーク)の見分け方は以下の通りです。

歯垢(プラーク)歯石
質感ぬるぬるザラザラ
黄色、黒っぽい
ケアブラッシングで落とせるブラッシングでは落とせない

 

3.歯石ができる原因

歯石は、歯垢(プラーク)が唾液に含まれるリン酸やカルシウムと結合し石灰化したものなので、歯垢(プラーク)の磨き残しが多い人や、唾液中にリン酸やカルシウムが多く含まれる人は歯石が付着しやすいといわれています。

リン酸やカルシウムは歯や骨の形成に必要不可欠な成分であり、体内に元々存在する成分なのでコントロールすることはできませんが、正しい歯磨きにより、歯石をつきにくくすることは可能です。

前述したとおり歯垢(プラーク)が唾液中のリン酸やカルシウムと結合することで歯石が生じるため、唾液が出るところの近くに歯石ができやすい傾向にあります。

中でも、下の前歯の内側や上の奥歯の外側は歯垢(プラーク)が溜まりやすく、また歯ブラシで除去もしづらいため、石灰化しやすいところなのです。

これらの部分を舌で触ってみて、デコボコ、ザラザラした質感があれば、歯石が付着している可能性が高いです。

4.【セルフケア】歯石の沈着を予防する方法

前述した通り、歯石は通常のブラッシングでは取り除くことはできません。
歯石を付着させないためには、そのもととなる歯垢(プラーク)を毎日のブラッシングでしっかり取り除くことが大切です。
ここでは、自分でできる歯石の沈着を予防する方法を紹介していきます。

4-1.毎日の歯磨きで歯垢(プラーク)をしっかり落とす

歯石のできやすい下の前歯の内側や上の奥歯、歯と歯ぐきの境目などは、とくに意識的に磨くようにしましょう。

【正しい歯磨きのやり方】

①.歯と歯ぐきの間にブラシを当て小刻みにブラシを動かす

②.前歯の裏側は、ブラシを縦に当てて歯垢を掻き出すように磨く
③.奥歯の裏側は、45度の角度でブラシを当てて小刻みに磨く

④.噛み合わせ部分は、歯ブラシを小刻みに動かして入念に磨く

⑤.歯と歯の間は、ブラシの毛先が歯の間にとどまるよう、小刻みに動かす

また、歯垢(プラーク)を除去してくれる生きた乳酸菌「WB2000」が配合された歯磨き粉を使うのもおすすめです。
歯垢を除去してくれる清掃剤が配合された歯磨き粉を毎日使用することで、より効率よくケアをすることも可能です。

4-2.歯磨きでは取りきれない歯垢(プラーク)をフロスで落とす

歯と歯の間は、歯ブラシが届きにくいため、歯垢(プラーク)が溜まりやすい部分です。
歯磨きでは取りきれない歯垢(プラーク)は、フロスを使って取り除きましょう。

【正しいフロスの使い方】

  1. フロスを40cm程度の長さにカットし、左右の中指に巻きつける。このときフロスの長さは10cm~15cm程度にしておく
  2. フロスを伸ばした状態で、歯と歯の間に差し込む
  3. 歯の表面に沿わせながら、フロスを前後に動かして歯垢(プラーク)を掻き出す
  4. 汚れたら、フロスを綺麗な部分に替えてケアする

糸巻きタイプに慣れていない人は、ホルダータイプのデンタルフロスでもOKです。
ホルダータイプには主に2種類あり、F字型は下あご前歯に、Y字型は上前歯や奥歯の清掃におすすめです。

ただし、力を入れすぎると歯ぐきを傷つける恐れがあるので、優しく丁寧に使用することを心がけましょう。

4-3.善玉菌を摂取する

歯磨きやフロス以外にも、善玉菌を摂取することで歯垢の付着をケアする方法もあります。善玉菌である乳酸菌には、歯周病や虫歯の原因となりうる悪玉菌の増殖を抑える作用があります。
それにより、悪玉菌によって歯垢が作られるのを抑制したり、歯に歯垢が付着するのをケアしたりする効果があると報告されています。

例えば、下のグラフは、歯垢の原因物質である不溶性グルカンの産生量について、乳酸菌ある・なしで比較したデータを示しています。
「WB21乳酸菌」を虫歯菌と一緒に培養すると、不溶性グルカンの産生量が減少しました。

※わかもと製薬社内資料

4-4.定期的に歯医者でクリーニングを受ける

残念ながら、ホームケアだけで完全に歯垢(プラーク)を除去することはできません。

歯石のない口腔環境を維持するためには、定期的に歯医者でクリーニングを受けることが大切です。
専門医によるケアであれば、歯垢(プラーク)だけでなく、出来てしまった歯石も同時に除去することが可能です。

【歯科医院による歯石除去のやり方】
歯の全体を超音波スケーラーという毎秒25,000〜40,000回の振動をする専用器具で清掃「スケーリング」を行います。
歯のスキマや、細かい部分はハンドスケーラーで取るのが一般的です。

こうした歯石除去やクリーニングは、基本的に保険診療内で受けることができます。
自宅でのケアには限界があるため、数か月に一度は歯科医のもとでこうした専門的なクリーニングを受けるとよいでしょう。

5.歯石についてよくある質問

最後に、「歯石」にまつわるよくある質問にお答えしていきます。

5-1.歯石を自分で取ることはできますか?
歯石を除去する時に使う手動のスケーラーは、通販やドラックストアで入手できますが、自分で歯石を取ることはおすすめできません。
スケーラーは、慣れていない人には使いこなすのは難しく、歯や口の中を傷つけてしまう可能性が高いです。とくに、歯のスキマや境目が黒く見える「歯肉縁下歯石」は、歯周ポケットにもぐりこんでいるため、自力でとることは不可能です。

歯石ができている場合、すでに虫歯や歯周病にかかっている可能性も高いため、そういった意味でも、歯科医院で適切に処置してもらうことをおすすめします。

5-2.歯石は何ヶ月に一回取るのが適切ですか?

歯石除去の適切な間隔には個人差がありますが、だいたい3ヶ月〜6ヵ月のペースが望ましいです。

ただし、人によって歯石の形成速度は異なるため、歯科医に相談するのが良いでしょう。

5-3.歯石があると口臭は強くなりますか?
歯石の元である歯垢(プラーク)は細菌の塊です。
そうした細菌は食べカスなどをエサにして「メチルメルカプタン」や「硫化水素」といったニオイの強いガスを発生させます。ゆえに、歯垢(プラーク)や歯石の溜まっている人の口臭は強くなりやすいのです。
歯石による口臭は、ドブのようなニオイ、あるいは生臭いニオイといわれており、そうした口臭があるなら、歯石のせいかもしれません。

口臭が気になる場合は、歯科医に相談するのがおすすめです。
歯石を除去し適切なケアを行うことで、ある程度口臭の軽減が期待できます。

まとめ

歯磨き中に、どうしてもとれないざらつきや汚れが気になった経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

ブラッシングをしても取れないなら、それは歯垢(プラーク)が石灰化した『歯石』の可能性が高いです。歯石をそのまま放置してしまうと、口臭やむし歯だけでなく、歯周病を引き起こします。
歯石はセルフケアでは除去することができないので、歯科医院で歯石除去の治療を受けるようにしましょう。

歯石がない健康な口腔を保ちたいなら、歯石の元となる歯垢(プラーク)を毎日のブラッシングでしっかり取り除くことが大切です。
今回紹介した、『歯石の沈着を予防する方法』を参考に、日頃から正しい口腔ケアを心がけてくださいね。