外陰膣カンジダ症(正式名称:性器カンジダ症)と聞くと、その原因として性行為を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
しかし実際は、外陰膣カンジダ症は性行為をしていなくても発症することがある病気です。
今回の記事では、外陰膣カンジダ症の症状・原因、日常生活でできる対策を紹介します。
外陰膣カンジダ症とは
まずは、外陰膣カンジダ症とはどのような病気なのか見てみましょう。
カンジダ菌の増殖で発症する病気
外陰膣カンジダ症は、カンジダ菌という真菌が性器で増殖することにより発症します。
カンジダ菌は、健常人の口腔内、腸管内、膣にも常在します。
カンジダ菌が膣内に常在する女性であっても、膣内環境や体調が良好であれば、症状は出ないことも多いです。
健康な膣内にはデーデルライン桿菌とも呼ばれる乳酸菌が常在していて、その乳酸菌の働きによって膣内は酸性に保たれ、雑菌が増殖しにくい環境に保たれています。
デーデルライン桿菌はいわゆる善玉菌と言え、カンジダ菌はいわゆる悪玉菌と言えます。
自己感染する可能性がある
外陰膣カンジダ症は、症状が陰部に現れますが、性行為による感染はそれほど多くありません。
主な感染経路は自己感染です。
女性の中には、もともと膣内にカンジダ菌が常在している人がいます。
そのような人は、普段は無症状でも、何かのきっかけで膣内のカンジダ菌が増殖してしまい、症状が出ることがあります。
外陰膣カンジダ症の症状
ここでは、外陰膣カンジダ症の症状について説明します。
白いおりものが出る
外陰膣カンジダ症の症状として、酒粕状・カッテージチーズ状・ヨーグルト状の白いおりものがあります。
このようなおりものが多く出るようになったら、外陰膣カンジダ症の可能性があります。
外陰部・膣にかゆみがある
外陰部・膣にかゆみがあるのも、外陰膣カンジダ症の症状のひとつです。
夜間に眠れなくなるほど強いかゆみを感じることもあります。
外陰部がヒリヒリする
外陰部にヒリヒリした刺激を感じるのも、外陰膣カンジダ症の症状のひとつです。
排尿時に痛みがある
排尿時に痛みがあるのも、外陰膣カンジダ症の症状のひとつです。
排泄の困難は日常生活に支障をきたすため、かなり厄介な症状といえます。
性交時に痛みがある
性交時に痛みが出るのも、外陰膣カンジダ症の症状のひとつです。
外陰膣カンジダ症である可能性がある場合、パートナーにうつさないためにも性行為は控えた方が良いでしょう。
外陰膣カンジダ症の原因
外陰膣カンジダ症になったという話を人から聞くことはあまりないかもしれませんが、婦人科領域では比較的よく見られる感染症です。
ここでは、外陰膣カンジダ症の原因について見てみましょう。
ストレス
ストレス状態では免疫力が低下します。
免疫力が低下すると、そのすきを狙ってカンジダ菌が増殖し、外陰膣カンジダ症になってしまうことがあります。
睡眠不足や疲労などもストレスの要因となるので、注意しましょう。
生理・妊娠などホルモンバランスの変化
ホルモンバランスの変化によっても、膣内でカンジダ菌が増殖しやすくなります。
妊娠中や生理の前は、外陰膣カンジダ症にかかりやすくなります。
性交渉
外陰膣カンジダ症の主な感染経路は自己感染ですが、オーラルセックスを含む性交渉によって体外からカンジダ菌がもちこまれて感染することもあります。
タオルの共有
外陰膣カンジダ症は、身体的な接触だけでなく、タオルを介してうつることもあります。
感染の可能性が疑われる場合、タオルの共用はやめましょう。
子供であっても感染しますので、家族間でも十分な注意が必要です。
外陰部の蒸れ(高温多湿)
カンジダ菌は高温多湿を好むため、陰部が蒸れた状態になると、陰部でカンジダ菌が増殖しやすくなります。
入浴後は陰部をしっかり乾燥させ、通気性の良い下着を着けましょう。
生理用ナプキン・おりものシートなどの装着も、陰部の蒸れを助長します。
できるだけ通気性の良い素材のものを選ぶようにしましょう。
抗菌薬の服用
抗菌薬は細菌感染治療に役立ちますが、外陰膣カンジダ症の原因となることもあります。
抗菌薬によって膣内の細菌が一掃されてしまうと、膣内でカンジダ菌が異常増殖してしまうことがあります。
これは、カンジダ菌の増殖を抑えていたデーデルライン桿菌(細菌の一種)が抗菌薬により一掃されてしまい、抗菌薬では死なないカンジダ菌(真菌の一種)が、このすきを狙って増殖してしまうためです。
糖尿病
糖尿病になると、免疫力が低下するため外陰膣カンジダ症になりやすくなります。
また、糖尿病になると、糖分を含む尿が出るため、糖分を栄養として、陰部でカンジダ菌が増殖しやすくなり、外陰膣カンジダ症になりやすくなります。
HIV感染
HIV(ヒト免疫不全ウイルス )に感染した場合、徐々に体の免疫力が低下していくため、外陰膣カンジダ症になりやすくなります。
外陰膣カンジダ症の治療・対処法
外陰膣カンジダ症では、おりものの異変やかゆみをはじめ、さまざまな症状に悩まされることになります。
ここでは外陰膣カンジダ症の治療について解説します。
ただし、症状や個人差によって治療方法は異なります。
初めて症状が現れた時には、まず婦人科・産婦人科などの医療機関で受診しましょう。
症状が似ていても外陰膣カンジダ症ではない場合があるので、自己判断せずに受診することが大切です。
洗浄+抗菌薬
外陰膣カンジダ症の治療では、基本的には連日通院し、女性の場合は膣内洗浄と膣坐薬(抗菌薬)挿入を受けます。
連日通院が難しい場合は、週に一回通院し、膣内洗浄と膣坐薬(抗菌薬)挿入を受けます。
抗菌薬を含んだ外用剤(軟膏、クリーム、ゲル、液体など)が処方された場合は、指定の使用方法に従い、外用剤を自分で患部に塗ります。
膣坐薬または外用薬に使用される抗菌薬には、クロトリマゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、イソコナゾール、エコナゾールなどがあります。
【再発の場合】市販薬の使用も可能
再発の場合は、通院以外にも、市販の第1類医薬品(外用薬・膣坐薬など)での治療も選ぶことができます。
初めて外陰膣カンジダ症を発症した疑いのある場合は、まず婦人科・産婦人科を受診しましょう。
病院で検査を受けて、カンジダ菌が原因であることが判明すれば、再発時には市販薬での治療を選ぶこともできます。
外陰膣カンジダ症が治ったサインは?
外陰膣カンジダ症の症状が無くなれば、治ったと考えて良いでしょう。
症状があるうちは性行為を控え、症状が無くなってから再開しましょう。
症状があるうちに性行為をするとパートナーにうつす可能性があります。
外陰膣カンジダ症は自然治癒するの?
外陰膣カンジダ症は、自然治癒することもあります。
しかし、妊婦の場合は、産道を通してカンジダ菌が母子感染することもあるため、受診して治療を受けることをおすすめします。
外陰膣カンジダ症の再発を防ぐ!日常生活でできる対策
外陰膣カンジダ症は、治療しても再発することがあります。
不快な症状に再び見舞われないようにするには、日頃から膣内環境を良好に保つことが大切です。
そこで、外陰膣カンジダ症の再発を防ぐために、日常生活でできる対策を紹介します。
陰部を高温多湿にしない
カンジダ菌は高温多湿な環境を好むため、陰部を高温多湿にしないことが大切です。
ポリエステル・ナイロンなど化学繊維素材のショーツ(パンティ)はデザイン性の高さから多くの女性に好まれていますが、通気性が悪いものもあります。
陰部の蒸れを防ぐには、綿のように通気性の良い繊維を使ったショーツ(パンティ)を選びましょう。
また、ショーツ(パンティ)やパンツ(ズボン)のサイズにも気を付けましょう。
締め付けの強いものを着用するとデリケートゾーンが蒸れやすくなりますので、避けるようにしましょう。
免疫力を保つ
免疫力が低下すると、外陰膣カンジダ症の再発につながることがあります。
免疫力の低下を防ぐため、生活を見直してみましょう。
十分な休養・睡眠、健康的な食事、適度な運動を心がけましょう。
膣内を洗いすぎない
膣内は善玉菌による自浄作用が働いています。
そのため、膣内まで洗う必要はありません。
膣内まで洗えば、膣内フローラが乱れて、外陰膣カンジダ症になりやすくなります。
ウォシュレットの使用時やお風呂で陰部を洗うときは外陰部までにし、膣内フローラを乱さないようにしましょう。
膣で働く乳酸菌を摂取して悪玉菌が増殖しにくい膣内環境を保つ
健康な膣内は、乳酸菌の働きで酸性に保たれ、雑菌が増殖しにくい環境になっています。
良好な膣内環境を維持するために、膣内の善玉菌を減らさないようにするほかにも、乳酸菌を摂取して膣内の善玉菌を増やすことをおすすめします。
一口に乳酸菌といっても種類はたくさんあり、何でも良いわけではありません。
良好な膣内環境を維持するために、特におすすめなのは「乳酸菌UREX(※1)」です。
乳酸菌UREXは、乳酸菌GR-1と乳酸菌RC-14(※2)という2つの乳酸菌の総称です。
乳酸菌UREXの摂取は、悪玉菌が増殖しにくい膣内環境の維持に役立ちます。
※1「UREX」はクリスチャン・ハンセン社の登録商標です
※2 「GR-1」「RC-14」はクリスチャン・ハンセン社の商標です
まとめ
外陰膣カンジダ症と聞くと、その原因として性行為を思い浮かべる方も多いかと思いますが、実際は、性行為をしていなくても発症することがある病気です。
睡眠不足・疲労などのストレスがきっかけで外陰膣カンジダ症になる場合もあるため、普段から健康管理をしっかり行いましょう。
外陰膣カンジダ症になったかもと思ったら、早めに婦人科・産婦人科で受診することをおすすめします。