カンジダ菌の増殖によって発症する性器カンジダ症(女性に症状が現れた場合、外陰膣カンジダ症などとも呼ばれることがあります)。
性器カンジダ症になったときは、いつから性交渉をしてよいのでしょうか。
今回は、性交渉が可能になる時期やパートナーにカンジダ菌がうつる危険など、性器カンジダ症になったときの注意点について詳しく紹介します。
性器カンジダ症になったときの性交渉はいつから?
はじめに、性器カンジダ症になったときの性交渉のタイミングや治療期間について紹介します。
性器カンジダ症になったら性交渉はいつからOK?
性器カンジダ症になったときは、治療が終わるまで性交渉を避けるようにしましょう。
性器カンジダ症が治らないうちに皮膚や粘膜に刺激を与えると、症状を悪化させる恐れがあります。
治療中は、患部を清潔にして安静に保つことが大切です。
性器カンジダ症の治療期間は何日ぐらい?
性器カンジダ症の治療期間の目安は約一週間です。
女性が性器カンジダ症になった場合、以下のような治療が行われるのが一般的です。
- 基本的には連日通院し、女性の場合は膣内洗浄と膣坐薬(抗菌薬)挿入を受ける
- 連日通院が難しい場合は、週に一回通院し、膣内洗浄と膣坐薬(抗菌薬)挿入を受ける
- 抗菌薬を含んだ外用剤(軟膏、クリーム、ゲル、液体など)が処方された場合は、指定の使用方法に従い、外用剤を自分で患部に塗る
ただし、性器カンジダ症の症状は個人差があるため、治療方法や治療期間は人によって異なります。
症状がなくなったら性器カンジダ症が治ったサイン
性器カンジダ症になると、以下のような症状が現れます。
- カッテージチーズ状・ヨーグルト状・酒粕状のような白いおりものが出る
- 外陰部や膣にかゆみがある
- 外陰部にヒリヒリ感がある
- 性交時に痛みがある
- 排尿時に痛みがある
このような症状がなくなったら、性器カンジダ症が治ったサインといえます。
カンジダ菌がパートナーにうつる危険
性器カンジダ症になったとき、性交渉によってパートナーにカンジダ菌がうつることはあるのでしょうか。
ここでは、カンジダ菌がパートナーにうつる危険について紹介します。
性交渉でカンジダ菌がうつる可能性がある
カンジダ菌は膣・口の中・腸内などに存在しています。
そのため、性交渉(オーラルセックスやアナルセックスを含む)によって相手にうつることがあります。
性器カンジダ症の治療中に性交渉を行うと、症状を悪化させる可能性があるだけでなくパートナーにカンジダ菌を感染させる可能性があるため注意が必要です。
男性は性器カンジダ症の発症率が低い
男性は女性と比べ、性器カンジダ症の発症率が低いといわれています。
包茎の人は、亀頭が包皮に覆われているため蒸れたり不衛生になったりしやすいため、性器カンジダ症を発症しやすい傾向があります。
また、男性器を不衛生な状態にしている場合も、発症しやすい傾向があります。
他にも、糖尿病の人、抗菌薬を服用している人、ステロイド剤の投与を受けている人、消耗性疾患を有している人も、性器カンジダ症を発症しやすい傾向があります。
性器カンジダ症は性行為から何日後に発症する?
カンジダ菌の潜伏期(感染成立してから発症するまでの期間)は1週間程度と言われていますが、個人差があり、感染成立後に数年間発症しない場合もあります。
そのため、性行為から発症するまでの期間がはっきりしません。
性器カンジダ症と診断されたら、早めにパートナーに伝えて性交渉を避けるようにしましょう。
なお、男性が性器カンジダ症を発症した場合、亀頭・包皮・尿道に以下のような症状が現れます。
【亀頭や包皮の主な症状】
赤み・かゆみ・痛み・違和感・紅斑・水疱・かさつき・ただれ・白いカスが出るなど
【尿道の主な症状】
違和感・かゆみ・排尿痛・性交痛など
男性が性器カンジダ症になったときは、陰部を清潔に保ち、抗菌薬を含む外用剤を患部に塗って治療を行うのが一般的です。
もし、パートナーにも性器カンジダ症の症状が現れた場合は、泌尿器科・性病科で受診するように促しましょう。
コンドーム(ゴム)をすれば性交渉してもうつらない?
コンドーム(ゴム)は避妊だけでなく、感染症を予防する役割もあります。
正しく着用することで、カンジダ菌が相手にうつる確率を低くすることができるでしょう。
しかし、コンドームを着用していても完全に感染を防ぐことは難しく、カンジダ菌が相手にうつってしまう可能性もあります。
性器カンジダ症の症状があるときは、コンドームの有無に関わらず、性交渉は控えた方がよいでしょう。
性器カンジダ症の治療後は再発に注意しよう
性器カンジダ症は治療しても再発することがあります。
性器カンジダ症の再発を防ぐために、気をつけるべきポイントを確認しておきましょう。
性器カンジダ症は自己感染する
カンジダ菌はもともとヒトの体内にいることがある常在菌で、症状がない健康な人の膣・口の中・腸などにもカンジダ菌が生息していることがあります。
膣内のカンジダ菌保有率は、妊娠していない女性の約15%・妊娠している女性の約30%という報告があります(参考文献★)。
性器カンジダ症は、性交渉よりも自己感染によって発症することが多いです。
カンジダ菌を保有していれば、性交渉をしなくても性器カンジダ症を発症する可能性があります。
治療をしても再びカンジダ菌が増殖すれば、発症することがあるので注意が必要です。
★参考サイト:日性感染症会誌 Vol. 19, No.1 Suppl. 2008 / ガイドライン 2008 性器カンジダ症
カンジダ菌が異常増殖するきっかけ
健康な膣内には「デーデルライン桿菌」と呼ばれることのある乳酸菌が常在しています。
このデーデルライン桿菌などの働きにより、膣内は酸性に保たれ、カンジダ菌や雑菌が増殖しにくい環境に保たれています(自浄作用)。
しかし、何らかのきっかけにより、膣内でカンジダ菌が異常増殖してしまうことがあります。
カンジダ菌が増殖してしまうきっかけには、以下のようなものがあります。
- 抗菌薬の服用
細菌感染治療で使用される抗菌薬は、細菌の増殖抑制作用や殺菌作用がありますが、真菌であるカンジダ菌には効きません。
抗菌薬を使うと、カンジダ菌の増殖を抑えるデーデルライン桿菌(乳酸菌の一種)まで死滅してしまい、その隙にカンジダ菌が異常増殖することがあります。
- ストレス
睡眠不足や疲労などのストレスにさらされ続けると、膣内でカンジダ菌が増殖してしまうことがあります。
また、風邪などで体調不良になっているときも、カンジダ菌が増殖しやすいです。
- 膣内の自己洗浄
ビデやシャワーなどで膣内を自己洗浄すると、膣内環境を乱してしまい、膣内でカンジダ菌が増殖してしまうことがあります。
- 糖質の摂りすぎ
カンジダ菌は、糖質(とくにブドウ糖や果糖などの単糖類)を栄養にして増殖します。
そのため、甘いお菓子や甘い飲料、果物などを食べすぎると、膣内でカンジダ菌が増殖してしまうことがあります。
- 陰部の蒸れ
高温多湿の環境では、カンジダ菌が増殖しやすくなります。
通気性の悪い下着、締め付けの強い衣服、生理用ナプキンやおりものシートの長時間の使用などは、陰部が蒸れて膣内でカンジダ菌が増殖してしまうことがあります。
- 女性ホルモン量の変化
女性ホルモン量が変化すると、膣内環境に影響を与えて膣内でカンジダ菌が増殖してしまうことがあります。
そのため、生理前や妊娠中に性器カンジダ症を再発する人もいます。
- 糖尿病
糖尿病は免疫力を低下させるため、膣内でカンジダ菌が増殖してしまうことがあります。
また、糖尿病の人の尿に含まれる糖分がカンジダ菌の栄養になり、異常増殖を招く場合もあります。
性器カンジダ症の再発予防策
性器カンジダ症の再発を予防するには、カンジダ菌を再び増殖させないことが大切です。
ここでは、性器カンジダ症の再発予防策を紹介します。
- ストレスを溜めない
カンジダ菌の増殖を防ぐためには、ストレスを減らすことが大切です。
まずは、苦手な人に会わない、無理な仕事内容を変更してもらうなど、ストレスにさらされない環境を作ることが第一です。
しかし、日常生活でストレスを完全にゼロにすることは難しいため、リフレッシュする時間を作ってストレスを溜めないように心がけましょう。
ストレスを溜めない方法には、以下のような方法があります。
- ジョギング・ウォーキングなどの軽い運動をする
- 自然の多い場所に行く
- 好きな香りを嗅ぐ
- 音楽・映画・読書などの趣味を楽しむ
- ぬるめの湯船に浸かる
- 糖質を控え、栄養バランスのとれた食事をとる
- 質の良い睡眠をとり、十分休養する
自分がリラックスできること・楽しいと感じることを行うのが大事です。
ただし、夢中になって疲労しすぎないよう、適度に楽しみましょう。
- 陰部を洗いすぎない
カンジダ菌の増殖を防ぐために陰部を清潔に保つことは大切ですが、過度な洗浄は膣内環境を乱します。
外陰部は石鹸で洗うのは避けて、ぬるま湯で優しく洗い流しましょう。
また、膣内まで洗うのは避けましょう。
- 生理用ナプキンはこまめに替える
生理用ナプキンを長時間装着していると、不衛生な環境を作ったり蒸れやすくなったりします。
生理用ナプキンやおりものシートなどはこまめに替えて、カンジダ菌の増殖を防ぎましょう。
- 通気性の良い下着や衣服を着用する
下着や衣服は、通気性の良い素材で締め付けの少ないものを選ぶこともポイントです。
タイツ、ストッキング、ガードルなど、下半身に密着する衣類も避けるようにしましょう。
- 性交渉の際はコンドームを使用する
コンドームには、感染症を予防する重要な役割があります。
カンジダ菌を体外(男性)から持ち込まないようにするために、オーラルセックスを含めて、性交渉の際はコンドームを正しく使用するようにしましょう。
まとめ
性器カンジダ症の主な感染経路は自己感染ですが、性交渉によってうつる可能性もあります。
性器カンジダ症になったら、性交渉を避けて治療に専念しましょう。
また、治療後は再発しないように注意することも大切です。
【性器カンジダ症の再発予防策】
- ストレスを減らす
- 陰部を洗いすぎない
- 生理用ナプキンはこまめに替える
- 通気性の良い下着や衣服を着用する
- 性交渉の際はコンドームを使用する
再発予防のために、 日常生活でできる対策を行っていきましょう。