膣は生理や妊娠、出産などに関わる大事な部位です。
しかし、顔や髪といった他人から見られる部分に比べると、膣を含むデリケートゾーンのケアをきちんと行っている女性は少ないかもしれません。
デリケートゾーンの乾燥やニオイ、かゆみ、膣のゆるみなど、気になる不調がある人は、日頃から膣ケア・膣トレ(膣トレーニング)をすると改善が見込める可能性があります。
今回の記事では、初心者でもできる膣ケア・膣トレのやり方や行うメリット、実施する際のポイントを詳しく紹介します。
※本記事での「デリケートゾーン」とは、膣など女性器周辺の下着で隠れる部分のことを表わします。
女性の不調を改善する膣ケアとは
「膣ケア」は膣を良好な状態に維持するために行うケアのことですが、デリケートゾーン全体のケアを指す場合もあります。(デリケートゾーンのケアをフェミニンケアと呼ぶ場合もあります)
膣ケアを習慣にすることで、女性ならではの不調の予防・改善につながったり、美容面でも良い効果が期待できたりします。
初心者でもできる!方法は主に5つ
膣ケアの主な方法を5つご紹介します。
- 膣内を酸性に保つ
- デリケートゾーンを正しく洗う
- デリケートゾーンを保湿する
- 膣マッサージでほぐす
- 膣トレで骨盤底筋を鍛える
これらの膣ケアを行うことで、膣や膣まわりを含むデリケートゾーンの調子が整いやすくなります。
それぞれの方法について詳しく紹介するので、できることから実践してみましょう。
膣ケアの方法-1. 膣内を酸性に保つ
膣の中は酸性です。
膣内の調子を整えるには、膣内を酸性に保つことが大切です。
そのためには、乳酸菌の働きが重要になります。
デーデルライン桿菌(かんきん)を守る
腸内環境を整えるには、悪玉菌の増殖を抑制する作用を持つ「乳酸菌」など善玉菌の働きが重要だとご存知の方は多いでしょう。
膣内にも同様に善玉菌と悪玉菌が存在し、善玉菌の優勢な状態が保たれていると膣内環境が整います。
膣内に存在する善玉菌である「デーデルライン桿菌」と呼ばれる乳酸菌の一種は、酸をつくりだし、膣内を酸性に保つことにより、その他の細菌の増殖を抑え、膣内環境を良好に保つことに役立っています。
デーデルライン桿菌は膣内環境を整えてくれるので、デーデルライン桿菌を守ることが膣ケアの第一歩といえます。
【ケアのメリット】細菌性膣症、性器カンジダの予防
デーデルライン桿菌によって膣内が酸性に保たれていると、自浄作用が働き、膣内での悪玉菌の増殖を防ぐことができます。
そのため、細菌性膣症や性器カンジダになりにくい膣内環境を維持することが期待できます。
【ケアのポイント1】自律神経を整える
ホルモンバランスが乱れると、デーデルライン桿菌が減少し、悪玉菌の増殖による不調が起きやすくなります。
ホルモンバランスの乱れは、ストレスや不規則な生活による自律神経のバランスの乱れから引き起こされることがあるので、自律神経を整えることが大切です。
自律神経を整えるには、
- 栄養バランスのとれた食事
- 質の良い睡眠
- 適度な運動
- ストレス解消
などの対策が効果的です。
規則正しい生活を心がけて、膣内のデーデルライン桿菌を守るようにしましょう。
【ケアのポイント2】乳酸菌で膣内環境を整える
膣内を酸性に保つには、膣で効果的に働く乳酸菌を摂取するという方法もあります。
デリケートゾーンなど女性のために開発された乳酸菌「UREX※1」は、GR-1とRC-14※2という2種類の乳酸菌を配合したものです。
UREXは生きたまま膣内に届き、長く留まるという特徴を持ちます。
UREXと他乳酸菌の膣内での残存率を比較した試験(各群5名の女性)では、他乳酸菌は試験14日目以降にすべての女性の膣内から検出されなかったのに対し、UREXは試験21日目でも5名中3名の膣内に残っていることがわかりました(※3)。
膣内環境を酸性に整える方法としてUREXを試してみましょう。
※1「UREX」はクリスチャン・ハンセン社の登録商標です
※2 「GR-1、RC-14」はクリスチャン・ハンセン社の商標です
※3:Gardiner et al. Clin. Diagn. Lab. Immunol., 2002; 9: 92-96.
膣ケアの方法②デリケートゾーンを正しく洗う
デリケートゾーンを快適に保つには、デリケートゾーンを正しく洗って清潔にすることが欠かせません。
やさしく、きちんと、洗い過ぎない
デリケートゾーンには尿やおりもの、汗などが混ざった恥垢(ちこう)が溜まりやすく、きちんと汚れを落とさないと雑菌が繁殖しやすくなります。
ただし、皮膚が薄く刺激に弱い部位なので、ごしごし洗うのはNGです。
爪で傷つけないように注意しながら、やさしく指で洗いましょう。
なお、膣の内部まで洗いすぎると、デーデルライン桿菌などの自浄作用にも影響してしまう可能性があります。
膣の中まで洗うのは避けましょう。
同様に、トイレのビデ機能で膣を洗いすぎることも避けましょう。
【ケアのメリット】ニオイの予防
デリケートゾーンは下着や生理用ナプキン、おりものシート、アンダーヘアなど常に何かと接触しています。
下着や衣類に覆われて温まりがちなこともあり、通気性が悪くムレやすい部分です。
ムレが起きている状態は雑菌が繁殖しやすく、雑菌は分泌物を分解し、悪臭を発生させる原因となることもあります。
きちんと洗って雑菌の繁殖を抑えることは、ニオイの予防にもつながります。
【ケアのポイント1】基本はお湯で。使うなら弱酸性ソープを
一般的なボディソープの場合、アルカリ性で洗浄力の強い界面活性剤が使われているものが多いため、デリケートゾーンには刺激が強く、乾燥させてしまい不快感を引き起こす可能性があります。
基本はお湯で洗い、ソープを使うなら弱酸性で肌にやさしいものを選びましょう。
弱酸性のデリケートゾーン専用ソープも市販されています。
お湯の温度が高いと皮膚の乾燥を招きやすいので、ぬるま湯で洗い流しましょう。
【ケアのポイント2】前から後ろへ洗う
デリケートゾーンは複雑な構造になっているので、洗い残しがないように前から後ろに向かってやさしく洗いましょう。
とくに、ひだ状の小陰唇と大陰唇には汚れが溜まりやすいため、丁寧に洗うのがポイントです。
膣ケアの方法③デリケートゾーンを保湿する
デリケートゾーンを正しく洗ったら、保湿して乾燥を防ぐことも大切です。
保湿アイテムで乾燥を防ぐ
デリケートゾーンも顔と同様、クリームやジェルなどの保湿アイテムで乾燥を防ぐことが大切です。
ただしデリケートゾーンは皮膚が薄いので、腕の内側と比べ何十倍も経皮吸収しやすい部位になります。
保湿アイテムの使用が刺激となってトラブルが起こる可能性が高いことに注意が必要です。
そのため、初めて使う保湿アイテムは、まず腕の内側に塗布してみて、赤みやかゆみが出ないことを確認してからデリケートゾーンに使うようにしましょう。
【ケアのメリット】乾燥による痛み・かゆみの予防
「下着に触れるとヒリヒリする」「膣まわりがカサついてかゆい」という場合は、乾燥が原因かもしれません。
- デリケートゾーンが乾燥する原因は、
- ストレスや不規則な生活によるホルモンバランスの乱れ
- 脱毛による刺激
- 下着や生理用ナプキンなどの擦れによる炎症
- ゴシゴシ洗い・洗浄力の強いボディソープによる刺激
などです。
また、更年期を迎えて閉経したり、卵巣摘出したりすることが原因で、膣や膣まわりに乾燥が起きることもあります。
女性ホルモンの一つであるエストロゲンの分泌量が少なくなると、萎縮性膣炎(いしゅくせいちつえん)が起きやすくなります。
萎縮性膣炎では、膣の組織が萎縮(容積が縮小する)したり、膣が薄くなり弾力を失い小さくなったりします。
そうすると、膣や膣まわりの乾燥・かゆみ、性交痛などの症状が現れることがあります。
乾燥する原因をできる限り解消し、その上で毎日しっかりと保湿すれば、乾燥による痛みやかゆみなどのトラブルを予防できるでしょう。
【ケアのポイント1】ワセリンやクリーム・オイルを使う
デリケートゾーンの保湿には、ワセリンやデリケートゾーン専用クリームを使うと良いでしょう。
ワセリンは天然成分の石油を精製した保湿剤で、高純度のワセリンはデリケートな赤ちゃんのスキンケアにも使えます。
赤ちゃんにも使えるワセリンは肌への刺激が少ないとされているので、デリケートゾーンの保湿にも役立ちます。
デリケートゾーン専用の保湿クリームには、ハチミツエキスや植物エキスなどの保湿成分が配合されており、肌に優しい処方の商品が揃っています。
まずは腕の内側の皮膚に塗って、赤みやかゆみがでないことを確認してからデリケートゾーンに使いましょう。
【ケアのポイント2】清潔な指で塗る
デリケートゾーンに保湿剤を塗る際、ティッシュペーパーなどを使うと摩擦刺激を与えてしまうので、清潔な指で塗りましょう。
お風呂上がりは乾燥が進みやすいため、顔よりも前にデリケートゾーンの保湿ケアをすることをおすすめします。
バスタオルで軽く水分を拭き取ったら、大陰唇より内側は避けながら、保湿剤をデリケートゾーン全体に優しく塗りましょう。
また、生理中の使用は避けるようにした方が良いです。
膣ケアの方法④膣マッサージでほぐす
膣ケアをするなら膣美容法として話題になっている「膣マッサージ」も取り入れてみましょう。
まずは外側から、慣れたら膣も
膣マッサージは膣の中と膣まわりを含むデリケートゾーンをオイルマッサージする膣ケア方法で、健康や美容に役立つさまざまな効果が期待されています。
しかし、自分で触れるのは恥ずかしいという思いから、膣の中に自分の指を入れることに抵抗がある人は少なくありません。
まずは膣の外側から始めて、慣れてきたら膣内もマッサージしてみましょう。
【ケアのメリット】血流・膣のゆるみの改善
膣マッサージで膣や膣まわりを普段からほぐしておくと血流が良くなるので、生理時の痛みの軽減につながることもあります(生理中のマッサージはNG)。
また、膣のゆるみの改善や尿漏れ予防効果も期待できます。
萎縮性膣炎の予防にも膣マッサージは効果的です。
膣マッサージすると適度な刺激が潤いをもたらし、オイルによって膣内の保湿ケアも行えます。
【ケアのポイント1】デリケートゾーンはなでるように
膣マッサージは、お風呂上りの清潔な状態で行いましょう。
使用するオイルは肌への刺激が無いものを選んでください。
デリケートゾーン専用オイルも販売されているので活用してみましょう。
デリケートゾーンをマッサージするときは、手のひらでオイルを温めてから利き手の親指・人差し指・中指に塗ってなじませておきます。
デリケートゾーン全体をなでるようにオイルを塗り、大陰唇→小陰唇→膣口(膣の入り口)→会陰の順に、指を使って優しくなでるようにマッサージをしましょう。
【ケアのポイント2】膣は少しずつ指を入れること
膣内のマッサージをするときは、リラックスして少しずつ指を入れるのがポイントです。
膣を傷つけないように、爪は短く切っておくようにしましょう。
【膣マッサージのやり方】
- 人差し指にオイルを塗り、第一関節から第二関節くらいまでゆっくり入れて、お腹側の膣壁を優しく押しながらマッサージをする
- 親指にオイルを塗り、肛門側の膣壁に指の腹が当たるようにして第一関節から第二関節くらいまでゆっくり入れる
- 人差し指を会陰に置き、親指と挟むようにして揉みほぐす
- 肛門側の膣壁も親指で優しく押しながらマッサージする
膣ケアの方法⑤膣トレで骨盤底筋を鍛える
骨盤の底には「骨盤底筋群(骨盤底筋)」という筋肉があり、骨盤の中にある膀胱・子宮・直腸などを支えています。
骨盤底筋群は、外尿道括約筋、肛門括約筋、膣括約筋、肛門挙筋などから構成されています。
骨盤底筋群の筋力低下は膣の緩みにつながるため、膣トレで骨盤底筋群を鍛えておくようにしましょう。
産後や、トイレでいきみがちな人はやるべき
骨盤底筋は臓器を支える他に、膣・尿道口・肛門を緩めたり引き締めたりする役割があります。
出産は骨盤底筋にダメージを与えるため、 産後は筋力が低下して膣が緩みやすくなります。
便秘になることが多くトイレでいきみがちな人も、骨盤底筋にダメージを与えやすいです。
産後や、トイレでいきみがちな人は、膣トレで骨盤底筋を鍛えることをおすすめします。
【ケアのメリット】尿漏れ、頻尿、便漏れの予防・姿勢改善
骨盤底筋には、尿道口や肛門を開閉する働きもあり、排泄をコントロールしています。
骨盤底筋が低下すると尿道口や肛門が緩み、尿漏れや頻尿、便漏れなどのトラブルを招きます。
骨盤底筋を鍛えると尿道口や肛門の締まりも良くなるので、トラブルの予防ができます。
また、インナーマッスルである骨盤底筋を鍛えることで、姿勢改善も期待できるでしょう。
【ケアのポイント1】簡単膣トレを習慣化する
膣トレの基本のやり方は、以下のとおりです。
- 両足を揃えて立ち、手をお腹とお尻に添えて姿勢を正す
- 骨盤底筋を意識して、息を吐きながら膣・尿道・肛門を10秒程度かけて締める
- 次に息を吸いながら、10秒程度かけて緩める
- ゆっくり締める、ゆっくり緩める動作を2〜3回繰り返す
最近では、骨盤底筋を鍛えられる膣ケアグッズもあります。
上手に活用して、膣トレを習慣化しましょう。
【ケアのポイント2】尿止めで膣トレの効果を確認
骨盤底筋が鍛えられると、尿道口の締まりも良くなります。
膣トレの効果を確認したいときは、排尿中に尿を止めてみましょう。
止めることができれば、膣トレによって筋力がついてきているといえるでしょう。
ただし、膣トレがうまくできていない場合や、膣トレだけでは効果が薄い場合は、膣の緩みや尿漏れなどのトラブルが改善されないこともあります。
セルフケアでなかなか症状が改善されない場合には、医療機関を受診するのもひとつの方法です。
膣の引き締めや尿漏れ対策に効果が期待できる「膣HIFU」の施術を受けることができます。
この施術は膣に棒状の治療機器を挿入して、膣壁にHIFUエネルギーを照射する施術です。
膣HIFUでは痛みを少し感じるでしょう。痛みにも個人差があり痛いというより熱いと感じる方もいます。
膣トレの効果が見られないときは、医療機関に相談してみましょう。
まとめ
膣ケアは「酸性に保つ・洗う・保湿する・ほぐす・鍛える」の5つの方法が基本となり、日常的にケア方法を実践することで不調や悩みの解消や健康、美容の維持につながります。
セルフケアに役立つ膣ケアアイテムも多く揃っているので、活用しながらケアを続けてみましょう。
今回の記事で紹介した情報を参考にして、膣ケア・膣トレを始めてみてくださいね。