女性ホルモンの分泌が減る更年期以降に起こりやすい萎縮性膣炎。
萎縮性膣炎になると、おりものの異常やデリケートゾーンの乾燥感、かゆみ、性交痛などさまざまな症状が現れます。
更年期以外の女性でも起こることがある病気なので、原因や対処法を把握しておきましょう。
今回は、萎縮性膣炎の特徴や原因、症状、治療法、対処法について詳しく紹介します。
萎縮性膣炎とは
はじめに、萎縮性膣炎の特徴や原因、発症しやすい人について紹介します。
萎縮性膣炎はこんな病気
萎縮性膣炎は、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの減少によって起こる膣の萎縮性の変化です。
更年期以降に発症しやすい
一般的に、エストロゲンの分泌量は、20代後半から30代前半にピークを迎えます。
ピーク以降は徐々に減少してゆき、更年期(閉経前後5年の約10年間)には急激に減少します。
そして、閉経後のエストロゲン分泌量はとても少なくなります。
萎縮性膣炎はエストロゲンの減少から引き起こされるため、更年期以降の女性に多い病気です。
若い女性が発症することもある
エストロゲンの欠乏が起こると、20代、30代の女性でも萎縮性膣炎になることがあります。
若い女性でエストロゲン分泌量が減る要因は、以下の通りです。
- 早期閉経
- 卵巣摘出
萎縮性膣炎の原因とメカニズム
萎縮性膣炎は、具体的にどのようにして引き起こされるのでしょうか。
ここでは、萎縮性膣炎の原因とメカニズムを、流れに沿って解説します。
①エストロゲン(女性ホルモン)の分泌量が減る
萎縮性膣炎の原因は、エストロゲン(女性ホルモン)分泌量の減少です。
エストロゲンの分泌量が減少する理由には、閉経や卵巣摘出などがあります。
②膣が萎縮・乾燥する
エストロゲンの分泌量が減少すると、性器の血管系が萎縮(縮んで小さくなってしまう)することから、性器組織の萎縮が起こります。
また、組織中のコラーゲンが減ることで、膣は薄くなり弾力を失います。
さらに、膣の粘膜が薄くなったり、膣粘膜の水分量が減ったりすることもあります。
このようなことから、膣や外陰部が萎縮・乾燥するようになり、かゆみや性交痛を感じる場合があります。
また、膣内には乳酸桿菌(乳酸菌の一種)が住みついていて、膣内環境を良好に保つことに役立っています。
エストロゲンが減ることで、膣内の乳酸桿菌が減り、膣内で雑菌が増殖しやすい環境になります。
膣内で雑菌が増殖した場合、おりものから悪臭がするようになります。
③炎症が起こる
膣や外陰部が萎縮したり乾燥したりすると、性交や衣服による摩擦刺激などで傷付きやすい状態になります。
膣や外陰部に傷がつくと、炎症を起こしたり、細菌感染をおこしたりする場合があります。
炎症が起きると、おりものが黄色や茶色になったり、陰部にかゆみ・灼熱感・違和感などを感じたりすることがあります。
萎縮性膣炎の症状
萎縮性膣炎の主な症状は以下の通りです。
- おりものの異常(悪臭がある・黄色や茶色になる)
- 陰部のかゆみ
- 陰部の違和感や不快感・圧迫感
- 陰部の乾燥
- 陰部の灼熱感(しゃくねつかん)
- 性交痛
萎縮性膣炎の治療法
ここでは、萎縮性膣炎の検査・診断方法、治療法、市販の治療薬、自然治癒について紹介します。
検査・診断方法
病院では、月経歴等の問診に加え、膣分泌液や膣細胞の採取・検査などが行われます。
さらに、性器出血がある場合、超音波検査や子宮細胞(頚部・体部)の採取・検査などが行われます。
これらの結果をもとに、医師が診断します。
治療法
萎縮性膣炎の一般的な治療法は、薬物療法です。
エストロゲン分泌量の減少が原因のため、エストロゲンを補うホルモン補充療法を行います。
ホルモンの補充方法には、内服薬による全身投与と、膣座薬を使用する局所投与の2通りあり、症状や体調に合わせて医師が判断します。
また、膣の細菌感染を起こしている場合は抗菌薬を、外陰部に炎症を起こしている場合は抗ヒスタミン薬やステロイド薬を使用することがあります。
医師と相談しながら、適切な治療を受けましょう。
萎縮性膣炎になったら市販の治療薬は使える?
デリケートゾーン(粘膜を除く)のかゆみに効く市販の塗り薬はありますが、かゆみ止めは萎縮性膣炎を根本的に解決するものではありません。
そのため、かゆみ止め(市販薬)を使用してかゆみが治まっても、再び症状が現れることもあります。
また、膣内での細菌増殖に対しては、市販薬はありません。
自分では萎縮性膣炎だと思っていたけれど、受診したら別の病気が隠れていたことがわかった、ということもありますので、まずは婦人科で受診して診断を受けることをおすすめします。
治療しなくても自然に治る?放置しても大丈夫?
萎縮性膣炎は、自然に治ることはありません。
萎縮性膣炎の原因は、加齢や卵巣摘出などによるエストロゲン分泌量の減少です。
萎縮性膣炎を疑うつらい症状やおりものの異常がある場合は、婦人科などで早めに受診しましょう。
つらい症状やおりものの異常を放置すると、症状が悪化したり、症状のある部分の周りの組織にも悪影響が及ぶ場合があります。
また、萎縮性膣炎とは別の病気が隠れている場合もあります。
萎縮性膣炎への対処法
萎縮性膣炎により、膣やその周りが乾燥してつらい場合や性交痛がある場合、症状を一時的に緩和する方法を試してみましょう。
ここでは、日常生活でできる萎縮性膣炎の対処法を紹介します。
クリームなどで保湿する
外陰部の乾燥によりかゆみを感じる場合は、保湿をしてみましょう。
肌のうるおいがなくなると、かゆみを感じやすくなります。
デリケートゾーンの保湿には、ワセリンやデリケートゾーンにも使える保湿クリームを使うのがおすすめです。
【ワセリン】
天然物質である石油の成分を精製してつくった鉱物油です。
ワセリンは医薬品にも使われることのある物質で、肌に塗ると、肌表面に油膜を張り水分蒸発を防ぎます。
また、ワセリンの油膜は肌を刺激から保護します。
デリケートゾーンにワセリンを使用する場合は、白色ワセリンを選ぶことをおすすめします。
白色ワセリンは、精製度が高いワセリンです。
ワセリンは、精製度が高いものほど肌への刺激が少なくなります。
【デリケートゾーン専用クリーム】
セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲンなどの保湿成分を含み、肌への刺激が少ないように配慮されてつくられているものもあります。
ただし、デリケートゾーンは皮膚が薄く刺激を受けやすいため、保湿アイテムが肌トラブルの原因になる場合があります。
使用前に腕の内側の皮膚に塗り、赤みやかゆみなどトラブルが起きないか確認(パッチテスト)してから使うようにしましょう。
また、化粧品のクリームで保湿をする際は、粘膜部分は避けて、外陰部に塗るようにしましょう。
性交時に潤滑ゼリーを活用する
萎縮性膣炎になると、膣の乾燥により性交時に痛みを感じることがあります。
性交痛があるときは、性交時に潤滑ゼリーを活用するのも対処法のひとつです。
潤滑ゼリーの種類としては、さらっとしていて肌なじみの良いウォーターベースのもの、乾きにくいシリコンベースのもの、オイル独特の質感のあるオイルベースのものなどがあります。
ヒアルロン酸、コラーゲンなど保湿成分を配合したものもあるため、自分に合う商品を使ってみましょう。
ただし、オイルベースの潤滑ゼリーはコンドームを溶かすことがあるため、注意しましょう。
また、ジェル付きのコンドームを使用するのもよいでしょう。
まとめ
萎縮性膣炎で陰部が萎縮、乾燥すると、傷付いて炎症が起こったり、性交時に痛みを感じやすくなったりします。
萎縮性膣炎は自然に治ることはありません。
萎縮性膣炎によるつらい症状やおりものの異常を放置すると、症状が悪化したり、症状のある部分の周りの組織にも悪影響が及ぶ場合があります。
また、萎縮性膣炎は更年期以降の女性に起きやすい病気ですが、若い女性でも発症することがあります。
萎縮性膣炎を疑うつらい症状やおりものの異常(黄色・悪臭)がある場合は、婦人科などで早めに受診しましょう。