いつもと比べて、おりものが臭いと感じたとき「もしかして病気?」と不安になりますが、その一方で「思い過ごしかも?」と考えると、病院で受診すべきかわからなくなってしまいます。
ニオイの変化は目に見えないだけに、判断が難しいところがあります。
そこで今回の記事では、おりものが臭くなる原因・対策と病院に行くべきケースについて解説します。
正常なおりものは少し酸っぱいニオイ
おりもののニオイがいつもより臭く感じられると、「周囲に気づかれているのではないか」「不快に思われているのではないか」と不安になってしまう人も少なくないでしょう。
正常なおりものはヨーグルトのような少し酸っぱいニオイがすることが多いです。
おりものにニオイがあるからといって、必ずしも異常であるとは限りません。
※おりもののニオイには個人差があります。ニオイが気になるようであれば婦人科・産婦人科で受診しましょう。
おりものの酸っぱいニオイの正体は乳酸
正常なおりものは少し酸っぱいニオイがしますが、その正体は乳酸です。
健康な膣内には、デーデルライン桿菌とも呼ばれる乳酸桿菌(乳酸菌の一種)が住みついていて、乳酸を作り出しています。
乳酸は膣内を酸性に保つことに役立っていて、膣内がH3.8~4.5の酸性に保たれることによって、雑菌が増殖しにくい環境になっています。
膣内で作られた乳酸がおりものに含まれることで、おりものは少し酸っぱいニオイになります。
このように、気になるおりもののニオイが少し酸っぱいものであれば、それはおりもの本来のニオイと考えられます。
生理前はおりもののニオイがきつくなる
生理前になると、おりものはドロッとした白いものへと変わっていきます。
同時にニオイもきつくなっていきます。
このタイミングでおりもののニオイが気になってくる人もいるでしょう。
生理前におりものの酸っぱいニオイがきつくなる場合、それは生理周期によるものと考えられます。
ニオイが気になる時期が生理前と重なっていないか確認してみましょう。
【要注意】おりものが臭くなる病気
普段は少し酸っぱいニオイのおりものですが、明らかにいつもと違うニオイがするようなら、病気の可能性があります。
ここでは、おりものが臭くなる病気をいくつか紹介します。
ただし、ここで挙げた疾患がすべてではありません。
他にもおりもののニオイに影響を与える病気はありますので、気になる症状がある場合は早めに婦人科・産婦人科を受診しましょう。
【細菌性膣症】生臭い(イカ臭い)
おりもののニオイに生臭さ・イカ臭さを感じるようになったら、細菌性膣症の可能性があります。
細菌性膣症では、次のような症状が現れることがあります。
- さらさらしたおりものが多く出る
- 生魚ような生臭いニオイがする
無症状の場合も多く、気づかないことも珍しくありません。
また、細菌性膣症になって膣内で異常増殖した細菌が、他の組織へ移動し、子宮内膜炎・卵管炎・骨盤腹膜炎を引き起こす可能性があります。
そうなった場合、下腹部痛・不正性器出血などの症状が現れることがあります。
女性の膣内にはさまざまな常在菌がいて、これを「膣内細菌叢(ちつないさいきんそう)」といい、膣内フローラとも呼ばれることもあります。
健康な膣内に住みついているデーデルライン桿菌は、膣内を酸性に保つことで、雑菌(バイ菌)が膣内へ侵入したり、膣内で増殖したりすることを防いでくれています。
しかし、デーデルライン桿菌は睡眠不足・疲労などのストレスによって減ってしまうことがあります。
そうすると、膣内フローラのバランスが乱れて、膣内の酸性度が弱まり、雑菌が繁殖して細菌性膣症になってしまうことがあります。
【膣トリコモナス症】悪臭を伴う泡状おりもの
膣トリコモナス症では、強い悪臭を伴う泡状のおりものが出ます。
また、外陰部・膣に強烈なかゆみが現れる場合もあります。
膣トリコモナス症の原因は、腟トリコモナス原虫という肉眼では見えない微生物です。
膣トリコモナス原虫は女性の膣・子宮頸管など、男性の前立腺・精のうなどに寄生します。
男女ともに感染しますが、男性は無症状・軽症であることが多く、女性も発症するまでに潜伏期間があることから、気づかないまま性行為をして、パートナーにうつしてしまうことがあります。
感染してから半年後に発症することもあります。
主な感染経路は性行為ですが、お風呂・タオルなどが感染源となることもあります。
【萎縮性膣炎】悪臭
萎縮性腟炎を発症すると、おりもののニオイが臭くなります。
また、以下の症状が現れることもあります。
- 黄色・茶色のおりもの
- 陰部の灼熱感
- かゆみ
- 性交痛
萎縮性膣炎の原因は、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌低下です。
加齢・卵巣摘出などにより、エストロゲンが欠乏することで発症する病気で、更年期以降の女性に多く見られます。
膣内を酸性に保ってくれるデーデルライン桿菌は、グリコーゲンを使って乳酸を作っています。
しかし、エストロゲンが減少するとグリコーゲンも少なくなります。
そのため膣内の自浄作用が弱まり、雑菌が増殖しやすくなります。
日常生活でおりものが臭くなる原因・対策
ここでは、日常生活の中でおりものが臭くなる原因と対策について解説します。
ストレスによる免疫力の低下
【原因】
ストレスによる免疫力の低下は、膣内フローラのバランスを崩し、自浄作用を弱らせます。
その結果、雑菌が増殖しておりものが臭くなることがあります。
【対策】
普段から休息・睡眠をしっかり取ったり、趣味・運動などで気分転換したりするように心がけ、ストレス過多にならないよう注意しましょう。
性行為
【原因】
性行為によっておりものが臭くなることがあります。
例えば、性行為で膣トリコモナスに感染したり、性行為がきっかけで細菌性膣症になったりする場合です。
膣トリコモナス症は、性行為によってパートナーと何度もうつし合ってしまうピンポン感染を起こしやすいことで知られています。
また細菌性膣症は、不衛生な性行為・高頻度の性行為・膣内射精によって膣内環境が乱れ、発症することがあります。
【対策】
性感染症が疑われる場合は性行為を控え、体に異変がない場合でもコンドームを使用するようにしましょう。
また、コンドームは、正しい使い方をしなければ効果が落ちます。
コンドームで覆われていない部分(手、口、肛門周辺の皮膚など)から感染することもあり、性感染症を100%防げるものではありませんが、コンドームを正しく使うことで、性感染症になる危険性を大きく減らすことができます。
デリケートゾーンの蒸れ
【原因】
デリケートゾーンはとても蒸れやすい場所です。
デリケートゾーンの蒸れは、膣内フローラを乱す原因となります。
おりものシートを長時間つけたままにしたり、通気性の悪い下着を着用したりすると、雑菌が増殖してニオイの原因になってしまいます。
【対策】
おりもののニオイを防ぐには、通気性を重視した下着選びをしましょう。
化学繊維のポリエステル・アクリル・ポリウレタンでできている下着は、光沢もありデザインも可愛いものが多いため、つい選んでしまいがちですが、通気性が良くないものもあります。
また、デリケートゾーンを清潔に保ってくれるおりものシートは、こまめに替えるように心がけ、下着と同じように通気性の良いものを選ぶことをおすすめします。
膣内の自己洗浄
【原因】
デリケートゾーンは汗・皮脂が溜まりやすい部位だけに、清潔に保つことはとても大切です。
しかし、過剰な洗浄はかえってニオイの原因になってしまうことがあります。
おりもののニオイが気になるからと膣内の自己洗浄を行えば、膣内環境が乱れて膣の自浄作用を弱めてしまい、おりものが臭くなる原因になります。
【対策】
デリケートゾーンを綺麗にするのは悪いことではありませんが、膣内まで洗ってはいけません。
膣内は善玉菌による自浄作用が働いていますから、膣の中まで洗う必要はありません。
おりもののニオイを防ぐためには、膣内フローラのバランスを崩さないように、ビデを使用するときやお風呂のときに、膣内まで洗わないようにしましょう。
洗うのは外陰部までにしましょう。
まとめ
デリケートゾーンが臭うと不安になってしまいます。
「一生懸命洗っているのに、いつまでたっても臭う…」と悩んでいる人もいるかもしれませんが、実はその行為自体がおりもののニオイを作り出している可能性があります。
また、ストレスにより膣内フローラのバランスが崩れて、膣の自浄作用が弱まってしまうことも。
自己判断で対処すれば、悪化する可能性もあります。
気になる症状があれば、まずは婦人科・産婦人科で受診して医師に相談してみましょう。
病気が原因でおりものが臭くなっている可能性もありますから、早めに受診して、早期発見・早期治療につなげましょう。