普段特に気にしていない舌を何かの拍子に見たとき、表面が白くなっていて驚いたという経験はありませんか?
舌が白くなる原因のほとんどは「舌苔(ぜったい)」です。
真っ白になるほど舌苔が溜まっている場合は、口臭などの口腔トラブルを引き起こすリスクがあるので対策が必要です。
今回は、舌苔の特徴や舌苔によって引き起こされるリスク、正しいケア方法をご紹介します。
舌が白いのは舌苔(ぜったい)が原因
痛みや違和感もなく、気づいたら舌が白くなってしまうのは、舌苔が原因であることがほとんどです。
なぜ舌苔がつくのでしょうか。
まずは、舌苔の正体と舌苔がつく理由について解説します。
舌苔は細菌の塊
図のように、舌の奥には分界溝(ぶんかいこう)というV字型の溝があり、その前方を舌体(ぜったい)、後方を舌根(ぜっこん)と呼びます。
そして舌の表面には、「舌乳頭」と呼ばれる突起が並んでいます。
この突起の間に、
- 食べかす
- 口内の皮膚細胞が剥がれ落ちてできた垢
- 唾液成分
- 細菌
などが溜まって苔状になったものが「舌苔」です。
舌苔はいわば細菌の塊なので、溜まり過ぎると口腔内に悪影響を及ぼす可能性があります。
特に舌苔が溜まりやすいのは、舌体でも分界溝に近い部分です。
出典元:米田雅裕. 福岡歯大誌 2012; 38 : 81-96
この画像を見ても、舌の奥の方を中心に舌苔が溜まっているのがわかります。
舌苔が溜まりやすい人の特徴
食べかすや細菌が堆積してできる舌苔ですが、体質や生活習慣によって溜まり具合は異なります。
舌苔が溜まりやすい人の特徴は以下の通りです。
唾液が不足しがちな人
唾液は口の中に残った食べかすや細菌などを洗い流す自浄作用、さらに殺菌作用を持ちます。
そのため、唾液が不足しがちで、口の中が乾きやすい人は舌苔が溜まりやすくなります。
口呼吸をしがちな人
口呼吸は口腔内を乾燥させ、唾液を少なくします。
寝起きはいつも口の中が乾いている、粘ついているという人は、睡眠中の口呼吸で乾燥し、口腔内で細菌が増殖している可能性があります。
鼻炎などで鼻が詰まっていて鼻呼吸がしづらく、常に口呼吸になりがちなら、耳鼻咽喉科の受診も検討しましょう。
ストレスを感じやすい人
焦ったり緊張したりすると口が渇くことがよくあります。
これは唾液の分泌に副交感神経が関係しているためです。
ストレスを感じて交感神経が活発になると、副交感神経が不活性化し、唾液が出にくくなってしまいます。
ストレスが溜まりやすい人は舌苔が溜まりやすい人でもあるのです。
溝状舌(こうじょうぜつ)の人
舌の形状が舌苔の原因になることもあります。
画像のような舌に溝がある溝状舌(こうじょうぜつ)の場合、デコボコした部分に食べかすや細菌が溜まるため、舌苔がつきやすくなります。
舌の位置が低い人
一般的に舌を動かすと上顎に舌が当たり、その際の摩擦で舌に付いた汚れは自然に落ちます。
しかし、受け口などが原因で舌の位置が低くなってしまう「低位舌(ていいぜつ)」の場合、上顎に舌が当たらないため、汚れが取れずに溜まりやすくなります。
舌の掃除が不十分
舌に付いた食べかすや細菌などは、唾液の持つ自浄作用で、ある程度洗い流せます。
ですが、すべてではないので定期的な舌の掃除が必要となります。
唾液が不足しがちな人は特に、掃除が不十分な場合、舌苔が溜まっていきます。
舌が真っ白なら要注意!
舌苔は病気ではありません。
ですが、舌の色が透けないほど真っ白に舌苔が溜まっている場合は、口腔トラブルだけではなく、他の器官にも悪影響を及ぼすリスクがあるので要注意です。
舌苔が増えることで起こりうるリスク
真っ白になるほど舌苔が溜まると、治療が必要となるような口腔トラブルを引き起こす可能性があります。
ここでは、舌苔が増えることで起こりうるリスクについて解説します。
口臭
口臭の原因のほとんどは口腔内にあり、その6割ほどは舌苔によるものだといわれています。
生育に酸素を必要としない「嫌気性菌」が舌苔に潜み、そこに溜まっているタンパク質を分解します。
すると、不快なニオイのする「揮発性硫黄化合物」が発生するのです。
これが口臭の原因となります。
虫歯・歯周病
舌苔は、虫歯や歯周病の原因になるとも考えられています。
古くは1975年に、舌表面の細菌が唾液を介して歯垢や歯周ポケットに細菌を供給する可能性が提唱され、舌清掃を行うことによって歯垢の付着量が減少したことが報告されています※。
※A Gross, G P Barnes, T C Lyon. Effect of tongue brushing on tongue coating and dental plaque scores. J. Dent. Res. 1975; 54(6): 1236.
つまり、舌掃除を行わないと、舌苔中の細菌が元になって、虫歯や歯周病の原因となる歯垢の付着量が上がる危険性があるということです。
歯をきちんと磨いていても、舌苔が残っていると、歯磨きの最中に舌苔の中の細菌が歯に付着してしまうケースもあります。
そうなると、虫歯や歯周病リスクが高まることも考えられるのです。
誤嚥性肺炎
舌苔が誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)の原因になることもあります。
誤嚥性肺炎とは、唾液や食べ物などと共に細菌が誤って気管に入ることで起こる肺の炎症です。
加齢や病気などによって飲み込む力や咳をする力が弱まっている人がよく罹患します。
このような人たちの口腔内で舌苔が喉近くまで広がっている場合、食べかすなどと一緒に舌苔中の細菌まで気管に吸い込まれてしまうリスクが上がります。
このとき咳込んだりむせたりして異物を吐き出せれば問題ありませんが、排出できずに吸い込んでしまうと、肺まで到達してしまい炎症を引き起こしてしまうのです。
味覚障害
舌苔は味覚障害を引き起こす可能性もあります。
舌表面の有郭(ゆうかく)乳頭・葉状(ようじょう)乳頭・茸状(じじょう)乳頭は「味蕾(みらい)」という味の刺激を受容する細胞を持ちます。
それが舌苔で覆われてしまうことで、味覚が鈍ってしまいます。
舌苔の予防対策
以上のように舌苔は溜まり過ぎるとさまざまなリスクを引き起こします。
それを避けるために、以下のような舌苔の予防対策を行いましょう。
舌磨き
もっとも一般的な舌苔の予防対策は舌磨きでしょう。
舌苔が溜まらないように、定期的に行います。
歯の健康のために歯磨きをするように、舌も磨く習慣をつけましょう。
適切に舌磨きをすることで、舌苔から生じる口臭も防ぐことができます。
舌磨きの方法については、後述の4「正しいケア」舌苔の取り方をご確認ください。
水を飲む
唾液は口腔内を洗浄して清潔な状態を保ってくれますが、ストレスや口呼吸などさまざまな原因で唾液の分泌が少なくなることがあります。
そんな時は、水を飲みましょう。
朝の歯磨きの後に200mlの水(コップ約1杯分)を飲むと、唾液の分泌が良くなるのでぜひ試してみてください。
同じ水分でも、お茶はあまりおすすめできません。
お茶に含まれるポリフェノールには唾液の分泌を抑える働きがあり、逆効果になってしまいます。口臭が気になる人は、お茶の代わりに水を飲むようにしましょう。
繊維質の多い食材をよく噛んで食べる
唾液の分泌促進には、繊維質の多い食材をよく噛んで食べるのもおすすめです。
何度も咀嚼することで口の中が刺激され、唾液が出やすくなります。
口の中の唾液を増やす
唾液には、歯だけではなく、舌に付着した食べかすや細菌も洗い流す自浄作用があります。
そのため、唾液が不足すると舌苔が溜まりやすくなります。
唾液不足を予防するには、唾液の量を増やす唾液腺マッサージを行うのがおすすめです。
唾液は主に大唾液腺と呼ばれる以下の3つの腺から分泌されます。
- 耳下腺(じかせん)
- 顎下腺(がっかせん)
- 舌下腺(ぜっかせん)
口の中が乾いていると感じたら、気持ちいいと感じるくらいの強さでマッサージしましょう。
口呼吸改善トレーニングをする
気づくと口が半開きになっている人はいませんか。
その場合、口呼吸をしているはずです。
舌が低い位置にある人も口呼吸になりがちです。
口呼吸は口内が乾燥し、唾液が不足する原因のひとつになります。
口呼吸しがちな人は、唇を閉じるための筋肉である口輪筋が衰えている可能性があります。
口輪筋は、ボタンと糸を使って簡単に鍛えられます。
大きめのボタンに太めの糸をくくりつけます。
糸の長さは20cmくらいにしましょう。
ボタンを唇と前歯の間に入れて口を閉じ、ひもを引っ張ります。
ボタンが飛び出さないように唇周辺に力を入れ、5秒ほどキープします。
引っ張る力は、弱すぎず、きちんと負荷がかかるように調整しましょう。
唇周辺に力を入れているときに、アゴにシワができないようにするのがコツです。
これを5回繰り返します。
実はこのトレーニングで表情筋を鍛えることもできます。
表情筋の衰えは、
- 口角が下がる
- ほうれい線やマリオネットラインが深くなる
- 頬や首がたるむ
といった老化現象の原因になります。
口輪筋だけでなく表情筋まで鍛えられるので一石二鳥です。
よく寝て、規則正しい生活を送る
唾液の分泌は自律神経と深く関係しています。
ストレスや緊張によって交感神経が優位になると、唾液の量が減るだけでなく、粘性の高い唾液が分泌されるようになります。
逆にリラックスしている時には、副交感神経が優位になって唾液の分泌が促される上に、漿液性(しょうえきせい)と呼ばれるサラサラの唾液が分泌されます。
自律神経が整っていれば、交感神経と副交感神経の切り替えはスムーズですが、ストレスを溜め込んでしまうと、交感神経が優位な状態が続いてしまいます。
サラサラ唾液の分泌を促すには、ストレス解消を心がけ、副交感神経を活性化することが大切です。
口内環境のためにもよく寝て、規則正しい生活を送り、自律神経を整えていきましょう。
【正しいケア】舌苔の取り方
口臭の原因のひとつに「舌苔」があり、舌磨きをすることで口臭を抑えることが可能です。
それでは、正しい舌磨きの方法を確認していきましょう。
奥から手前へ!舌磨きブラシを使った磨き方
舌磨きをする際は専用の舌磨きブラシを使いましょう。
歯を磨くついでに、歯ブラシで舌を磨くのはおすすめできません。
歯ブラシを使うと舌を傷つけてしまう可能性があるからです。
舌を磨くときは、必ず奥から手前へやさしくブラシを引きます。
手前から奥に動かしたり往復させたりすると、細菌を喉の奥に送り込んでしまうリスクがあるので注意が必要です。
ブラッシングをしたら、汚れが口の中に残らない様に、口をゆすぎましょう。
舌磨きは舌苔が一番多い朝、歯磨きの後に1日1回を目安に行いましょう。
ガーゼを使った磨き方
舌ブラシがなくても、ガーゼを使えば舌を磨けます。
歯磨きの後に、濡らしたガーゼを巻きつけた人差し指で、舌を優しく拭き取っていきましょう。
拭くときのポイントは、指を前後左右に動かすことです。
舌には突起状の舌乳頭があるため、拭き残しがないよう方向を変えながらやさしく拭いていきましょう。
ガーゼに汚れがついたら、綺麗な部分でもう一度拭き取ります。
ある程度汚れがなくなるまで繰り返しましょう。
磨く強さに注意(ヒリヒリしない程度に)
舌磨きをする際はヒリヒリしない程度に磨くことが重要です。
舌苔をしっかり取り除きたいと思うあまり、つい力を入れてこすりたくなりますが、舌はとてもデリケートです。
強くこすれば傷ついてヒリヒリしたり、味覚障害になったりする可能性もあります。
一気に落とそうとせず、毎朝少しずつ磨くよう心がけましょう。
洗口液を使うのもひとつの方法
外出先で歯磨きができないけれど、口の中をすっきりさせたいというときに、洗口液を使う人もいるでしょう。
洗口液は、抗菌作用があるため、舌苔の予防にも有効です。
ただし、使い過ぎると口内環境を守る善玉菌まで殺菌してしまうので注意が必要です。
また、アルコール配合の洗口液は多用すると口の中が乾燥する原因になるので、選ぶ際はアルコールフリーの商品がおすすめです。
舌苔対策するなら乳酸菌!
ご紹介したような舌苔ケアを実施している人は満足しているのでしょうか。
わかもと製薬のモニターインタビューから確認してみましょう。
※わかもと製薬モニターインタビューより抜粋(2019年6月実施)
このように、舌ブラシなど一般的な舌苔のケアに満足していないという人は多いでしょう。
思うように結果が出ない、むしろ不快でやめてしまった方もいるのではないでしょうか。
リスクがないように見える洗口液も、使い過ぎると善玉菌まで殺菌してしまいます。
対策はしたいけれど、善玉菌まで殺菌してしまうのは避けたいという方は「乳酸菌」を試してみてはいかがでしょうか。
乳酸菌で舌苔の根本原因「悪玉菌」を減らす
以下のグラフをご覧ください。
左側はWB21という乳酸菌を摂取する前と14日間摂取した後のグラフで、右側は乳酸菌を摂取しなかった場合の各舌苔スコア平均値の結果を表したグラフです。
舌苔スコアとは視診による舌苔付着範囲の評価となります。
〈数値参考〉
0:舌苔がほとんど認められない
1:舌苔が舌背の1/3未満を占める
2:舌苔が舌背の1/3以上2/3未満を占める
3:舌苔が舌背の2/3以上を占める
※上記の数値を基に舌苔スコアの平均値を算出
グラフデータ元:(Nao Suzuki, Masahiro Yoneda, Kazunari Tanabe, et al. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol. 2014; 117(4): 462-70. )
対象:23名(女性19名、男性4名)
摂取:1回1錠、1日3回、14日間(ウォッシュアウト14日間)
左の乳酸菌を摂取したグループでは、14日間の摂取後、舌苔スコアの平均値が摂取前と比べて優位に減少しています。
一方、右のWB21乳酸菌を摂取していないグループでは、舌苔スコアの平均値にほとんど変化はありませんでした。
WB21乳酸菌が口内に補給されると、悪玉菌が減少し、舌苔が減ることがおわかり頂けると思います。
※1二重盲検
比較対象となる群のどちらに属しているのか参加者に明かさない「盲検法」に加えて、結果を観察する研究者にもわからないようにする形式
※2クロスオーバー
対象を2つの群に分けて、それぞれの群に異なる治療を実施・評価した後、治療法を交換のうえ、再度評価を行う形式
ケアしても舌の白い部分が取れないなら病院を受診
舌苔をケアしても白い部分が取れない、痛みを伴うといった場合は、下記の病気の可能性もあります。
- 口腔カンジダ症(カンジダ性口内炎)、アフタ性口内炎、白板症などの口腔粘膜疾患
- 胃腸などの消化器疾患
など
口腔カンジダ症は、カンジダ菌が異常繁殖することによって起こります。
免疫力が低下していると発症しやすいです。
こすっても剥がれない白い病変を指す白板症は口腔がんのひとつである「舌がん」の前兆となる場合もあります。
症状に合った正しい治し方を確認するためにも、気になる場合は、病院を受診することをおすすめします。
まとめ
舌が白くなる舌苔は口臭をはじめ、いくつかの病気の発生リスクを高めます。
こまめに舌ケアをして舌苔を除去するよう心がけましょう。
舌磨きは自宅でできる簡単なものが多いので、歯磨きのように毎日の習慣にしていくとよいでしょう。
口の中を清潔に保ってくれる唾液の分泌促進も口腔衛生には重要です。
自律神経が乱れると唾液の分泌が減少したり唾液が粘ついたりしてしまいます。
ストレス解消に努め、規則正しい生活で自律神経を整えていきましょう。
舌苔を増やさず、健康な舌を目指しましょう。