歯槽膿漏(歯周病)とは?原因や歯肉炎との症状の違い・治療方法を解説!

歯ぐきが腫れている・歯がぐらぐらするなどの症状がある場合、歯槽膿漏の可能性が考えられます。
しかし、歯の病気には虫歯や歯肉炎と呼ばれるものもあり、歯槽膿漏がどのような状態を指すのかわからないという方もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、歯槽膿漏の症状や治療方法、自宅でできる予防ケア方法について詳しく紹介します。

1.歯槽膿漏(歯周病)とは?歯肉炎との症状の違い

歯周病菌によって歯ぐきが炎症したり歯を支える歯槽骨が破壊されたりする病気は、一般的に歯周病と呼ばれています。
歯周病は状態によって歯肉炎や歯周炎とも呼ばれ、歯槽膿漏は歯周炎のもっとも症状が重い状態のことを指します。
初期段階の歯肉炎の症状が進むと軽度歯周炎となり、さらに進行すると中等度歯周炎、重度歯周炎(歯槽膿漏)となります。

 

【段階別の主な症状】

歯肉炎歯ぐきが赤く腫れている
歯磨き時に出血する
軽度歯周炎歯ぐきが軽く腫れている
軽い出血がある
歯が疼く
中等度歯周炎歯ぐきが腫れている
出血がある
冷たいものがしみる
歯がぐらつく
口臭が出る
歯ぐきから膿が出る
重度歯周炎(歯槽膿漏)歯がぐらぐらしている
歯ぐきが下がる・長く見える
硬いものが噛みにくくなる
強い口臭が出る
出血する
歯ぐきから膿が出る

 

歯肉炎は歯ぐきに炎症が起きている状態で、この段階できちんと歯の健康を守るケアをすれば症状を改善することが可能です。
しかし、歯周炎になると、歯を支えている歯槽骨や歯根膜(しこんまく)という歯周組織に影響を与えます。

歯槽膿漏まで進行すると症状が重くなり、そのまま放置すると歯が抜け落ちる場合もあります。
歯槽膿漏は悪化すると治療が難しくなることもあるため、症状に気づいたら早めに歯科医院で医師に相談しましょう。

>歯周病の症状について詳しく見る

 

2.歯槽膿漏になってしまう原因は歯垢(プラーク)

歯槽膿漏になってしまう直接的な原因は、歯垢(プラーク)です。
歯垢には悪玉菌である歯周病菌が生息しており、歯の表面や歯と歯ぐきの境目(歯周ポケット)に歯垢が溜まると歯周病菌が増殖します。

この歯周病菌が歯周組織を破壊していき、歯槽膿漏につながるのです。
歯垢は歯と歯の間・奥歯の噛み合わせ部分・抜けた歯の周りなど、ケアしにくいところに溜まりやすい傾向にあります。

また、以下のような口腔環境や生活習慣は、歯垢を溜まりやすくしたり歯ぐきの抵抗力を低下させたりして歯槽膿漏のリスクを高める可能性があります。

【口腔環境】
・歯石が付着している
・歯並びが悪い
・噛み合わせが悪い
・歯ぎしりをする癖がある
・口呼吸をする癖がある
・唾液量が少ない
・不適合な被せもの(クラウン)・入れ歯がある
【生活習慣】
・アルコールの摂取
・喫煙
・不規則な生活
・食生活の乱れ
・ストレス

 

3.歯槽膿漏の治療方法

歯槽膿漏になると、基本的な歯周病治療の他にも外科的な治療法が必要になる場合があります。
歯槽膿漏の基本的な治療法・外科的な治療法について確認してみましょう。

 

3-1.基本的な治療法

歯槽膿漏の基本的な治療の流れは以下の通りです。

【検査・カウンセリング】
はじめに検査とカウンセリングを行い、歯ぐきや歯槽骨の状態・症状・歯周炎を悪化させている要因などを確認します。
【ブラッシング指導】
歯槽膿漏の基本的な治療では、毎日の歯磨きでしっかりと歯垢を除去できるようにブラッシング指導を行います。
正しく歯磨きをすることで、歯ぐきの状態が改善しやすくなります。
【スケーリング・ルートプレーニング】
スケーラーまたは超音波スケーラーという専用の器具を使い、歯の表面に付着している歯垢と歯石の除去(スケーリング)を行います。
続いて、専用の器具を使い、歯周ポケットの深い部分に溜まっている歯石の除去(ルートプレーニング)を行います。
ルートプレーニングは歯根の表面を削りとって滑らかな状態にし、歯垢を溜まりにくくすることも目的のひとつです。

以上が基本的な治療方法ですが、必要な場合は虫歯や噛み合わせの治療を行います。
また、再発を防ぐために、3〜6ヶ月を目安に検診や歯のクリーニングといった定期的なメンテナンスを行います。

3-2.外科的な治療法

基本的な治療法での改善が難しい場合、外科的な治療を行います。
代表的な治療方法はフラップ手術と歯周組織再生療法です。

【フラップ手術】
歯ぐきを切開して歯根を露出させ、専用器具で歯根に付着した歯周病菌や歯石を取り除く治療方法です。
【歯周組織再生療法】
歯槽骨が溶けてしまっている場合に、骨を再生する治療方法です。
歯周組織再生療法には、以下のようなものがあります。
【GTR法】
骨は粘膜よりも再生する時間がかかるため、歯周病菌によって破壊された部分をGTRメンブレンという特殊な膜で覆って歯周組織の再生を促す治療方法です。
【エムドゲイン法】
エムドゲインゲル(スウェーデンの企業が開発した特殊なタンパク質)を歯周病菌によって破壊された部分に塗布し、歯周組織の再生を促す治療方法です。

歯槽膿漏の外科的な治療にはさまざまな種類があり、歯槽膿漏の状態や患者さんの要望などを合わせて統合的に治療方法を判断します。
外科的な治療法での改善が見られない場合は抜歯となり、親知らず以外の歯を失ったときは入れ歯・ブリッジ・インプラントを入れる治療へと移ります。

4.自宅でできる歯槽膿漏の予防ケア方法

歯槽膿漏を予防するには、日頃のデンタルケアや生活習慣に注意を払うことが大切です。
ここでは、自宅でできる歯槽膿漏の予防ケア方法を紹介します。

4-1.歯垢の原因物質の産生が抑制される歯磨き粉を使用する

歯磨き粉には、基本的に効率よく歯垢を取り除く役割があります。
さらに、商品によっては虫歯予防や歯周病予防など目的に合わせた成分が配合されているので、歯槽膿漏対策に合う成分が入っている歯磨き粉を使用することも良いでしょう。

具体的には、「WB2000乳酸菌」のように歯垢除去成分の清掃剤として乳酸菌が配合されている歯磨き粉を使ってみるのもおすすめです。

4-2.口内に適した乳酸菌を取ってみる

乳酸菌の中には歯槽膿漏の原因となる歯垢の原因物質〔不溶性グルカン〕の産生や虫歯菌の増殖を抑制する作用が認められるものもあります。
WB21乳酸菌もそのひとつです。
口内に適した善玉菌であるWB21乳酸菌は、歯垢が付きにくい口内環境のケアを促してくれます。

出典:わかもと製薬株式会社社内資料

 

4-3.歯磨き方法の見直し

きちんと歯磨きができていないと、歯の表面に歯垢が残って歯槽膿漏の原因となります。
歯槽膿漏を予防するなら、正しい歯磨き方法を身につけましょう。
歯垢は歯と歯の隙間や歯と歯ぐきの間などに残りやすいため、歯ブラシだけでなくデンタルフロスや歯間ブラシを使うのもポイントです。

【歯ブラシの持ち方】

歯ブラシは、鉛筆のように握る持ち方(ペングリップ)と手のひら全体で握る持ち方(パームグリップ)があります。
鉛筆のように握る持ち方は余計な力が入らないので歯や歯ぐきを傷めにくく、毛先を歯の表面に当てやすい持ち方です。
お年寄り・お子様・握力が弱い方は、手のひら全体で握るとしっかりと持つことができます。

【歯の磨き方】

歯を磨く力が強いと歯や歯ぐきを傷めてしまうため、歯ブラシの毛先が広がらない程度の力で磨くようにしましょう。
歯槽膿漏対策には、歯と歯ぐきの境目の歯垢を落とすことが重要です。

歯と歯ぐきの境目に45°の角度で歯ブラシの毛先を当てて、2〜3mm 程度小刻みに動かして磨きましょう。
また、歯ブラシを回転させて掻き出すようにすると、歯の根元の歯垢を落としやすくなります。

前歯の裏側や凸凹している部分は、歯ブラシを縦に当てて磨くのがポイントです。
奥歯の噛み合わせ部分や歯と歯の間も歯垢が溜まりやすいので、歯ブラシを小刻みに動かして磨きましょう。

【デンタルフロスの使い方】

デンタルフロスは歯と歯の隙間の歯垢を取り除くときに使う道具です。
歯と歯の間の奥まで優しく差し込み、歯面に当てながら前後に動かして歯垢を掻き出します。

  1. 前後に動かしながらフロスを歯と歯の間に差し入れる(手前の歯と歯肉の中に糸が隠れる程度のところまで)
  2. 手前の歯の表面にフロスを沿わせて、接触点まで歯垢を掻き出す
  3. 奥側の歯の表面にフロスを沿わせて、同じように接触点まで歯垢を掻き出す
  4. 前後に動かしながらフロスを取り出す

 

【歯間ブラシの使い方】

歯間ブラシはホルダーに真っ直ぐにブラシがついた「ストレートタイプ」と、ホルダーにL字型にブラシがついた「L字タイプ」があります。
ストレートタイプは前歯に使いやすく、ホルダーを曲げて角度をつければどの部分にも使いやすくなります。

L字型タイプは奥歯に使いやすい歯間ブラシです。
歯と歯の隙間に優しく差し込み、数回前後に動かして歯垢を掻き出しましょう。
歯や歯ぐきを傷つけないように、歯と歯の隙間より少し小さめのサイズを選ぶのがおすすめです。

4-4.生活習慣の見直し

歯槽膿漏は日々の生活習慣が大きく関わっています。
以下のような対策をして、歯槽膿漏を予防しましょう。

【疲れやストレスを溜め込まない】
免疫力が低下して歯槽膿漏が悪化しやすくなるため、疲れやストレスを溜めないようにしましょう。

【栄養バランスを意識した食事をとる】
歯周病菌への抵抗力を高めるために、栄養バランスを意識した食事をとりましょう。
とくに、抗酸化作用のあるビタミンCや血行促進作用のあるビタミンEを取り入れるのがおすすめです。

ビタミンCを多く含む食べ物
柑橘類(オレンジ、グレープフルーツなど)
ピーマン
キウイフルーツ
ブロッコリー
いちご

出典:厚生労働省eJIMWebページ

ビタミンEを多く含む食べ物
ほうれん草
ブロッコリー
とうもろこし油
ナッツ
ひまわりの種

出典:厚生労働省eJIMWebページ

 

【よく噛んで食べる】
よく噛むことで唾液の分泌を促し、細菌の増殖を抑える効果が期待できます。

【間食を控える】
飲食物に含まれる糖分は口の中にいる細菌のエサになり、歯垢を作る原因になります。
お菓子やジュースなど間食を摂りすぎないようにしましょう。

【禁煙する】
タバコを吸っていると免疫機能が低下して細菌に感染しやすくなったり、歯周組織の修復機能が低下して治療をしても治りにくくなったりします。
また、タバコに含まれるニコチンの血管収縮作用によって歯ぐきが炎症していても腫れや出血といった症状が分かりにくくなり、発見が遅れる場合があります。
喫煙は歯槽膿漏のリスクを高めるので、禁煙するのが望ましいでしょう。

4-5.定期的に歯のクリーニングや検診を受ける

歯槽膿漏を予防するには、自宅でできるケアと合わせて専門的なメンテナンスを受けることが欠かせません。
歯科医院で歯垢を除去したり歯の状態を確認してもらったりすることで、歯槽膿漏のリスクを下げられます。

また、歯科医院ではブラッシング指導や生活習慣のアドバイスを受けられるので、効果的に自宅でのケアを行えるようになります。
3〜6ヶ月に1回を目安に歯科医院に通い、定期的な歯のクリーニングや健診を受けるようにしましょう。

まとめ

歯槽膿漏は重度の歯周炎を起こしており、歯周病の中でもっとも症状が進んでいる状態です。
ほとんど自覚症状がないまま進行する場合もあり、悪化すると歯が抜け落ちたり抜歯が必要になったりすることがあります。

専門的な治療が必要になるため、違和感を覚えたら早めに歯科医院にて医師と相談しましょう。
また、歯槽膿漏の予防ケアでは、日頃の歯磨きや生活習慣、歯科医院での定期的なメンテナンスが重要になってきます。
今回紹介した情報を参考に、健康な歯を守るケアを続けていきましょう。