妊娠中は性器カンジダ症になりやすい?妊婦の性器カンジダ症の治療法と注意点

カンジダ菌が性器で増殖することで発症する性器カンジダ症(女性に症状が現れた場合、外陰膣カンジダ症などと呼ばれることもあります)。

発症すると陰部のかゆみやおりものの異常などの症状が起こることがあります。

妊娠中に性器カンジダ症を発症したとき、赤ちゃんへの影響を心配している女性もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、妊娠中の性器カンジダ症のなりやすさ・赤ちゃんへの影響・治療法・注意点・予防方法について解説します。

 

妊娠中は性器カンジダ症になりやすい

はじめに、女性のカンジダ菌の保有率や、妊婦が性器カンジダ症になりやすい原因について紹介します。

 

妊婦の約30%は膣内にカンジダ菌を保有している

性器カンジダ症は、カンジダ菌という真菌の一種により引き起こされる感染症です。

健康な女性でもカンジダ菌を常在菌として膣に保有していることがあります。

また、性行為によりカンジダ菌が体外から性器に持ち込まれることもあります。

カンジダ菌は膣以外にも口・皮膚・消化管に存在することがあるため、性交だけでなくオーラルセックスなどによってカンジダ菌が性器に感染することがあります。

 

また、自分の腸に存在しているカンジダ菌が、肛門から出て自分の膣に感染することもあります(自己感染)。

膣内のカンジダ菌の保有率は、妊娠していない女性の場合は約15%、妊娠している女性の場合は約30%との調査結果があります。(参考文献★)

カンジダ菌が性器に常在していても、性器カンジダ症の症状が現れるとは限りません。

カンジダ菌が性器に常在している場合、抗菌薬の服用、女性ホルモン量の変化、免疫力低下などがきっかけとなり、膣でカンジダ菌が異常増殖して、性器カンジダ症を発症することがあります。

 

性器カンジダ症の主な症状としては次のものが挙げられます。

【性器カンジダ症の主な症状】

  • 外陰や膣のかゆみ
  • カッテージチーズ状・ヨーグルト状・酒粕状の白色のおりもの

★参考サイト:日性感染症会誌 Vol. 19, No.1 Suppl. 2008 /ガイドライン 2008 性器カンジダ症

 

妊婦が性器カンジダ症になりやすい原因

健康な膣内には、「デーデルライン桿菌」とも呼ばれる乳酸桿菌(乳酸菌の一種)が常在しています。

健康的な膣環境には乳酸桿菌(乳酸菌の一種。デーデルライン桿菌とも呼ばれる)が住みついていて、その働きにより膣でのカンジダ菌や雑菌の増殖が抑えられています。

しかし妊娠により体に様々な変化が起こると、その影響を受け、性器カンジダ症を発症しやすくなります。

妊娠中に性器カンジダ症になりやすい主な原因は、以下のようなものがあります。

 

女性ホルモン量の変化

妊娠による女性ホルモン量の変化の影響を受け、性器カンジダ症を発症しやすくなります。

 

免疫力の低下

妊娠中は、赤ちゃんを異物と判断して攻撃しないように免疫力が低下するため、細菌やウイルスへの抵抗力が弱くなります

これにより性器カンジダ症を発症しやすくなると考えられています。

 

ストレス

妊娠中は体調や環境の変化、出産への不安など、さまざまストレスにさらされやすい時期です。

ストレスにより免疫力が低下すると、膣内でカンジダ菌が増殖して性器カンジダ症を発症しやすくなります

 

妊娠中の性器カンジダ症は赤ちゃんに影響する?

妊娠中に性器カンジダ症になった場合、赤ちゃんに影響するのでしょうか。

ここでは、妊娠初期、妊娠中期・後期(妊娠末期)それぞれの影響について紹介します。

 

妊娠初期

妊娠初期に性器カンジダ症になった場合、出産(経腟分娩)前までに治っていれば、胎内の赤ちゃんへ影響することは稀です。

性器カンジダ症は自然治癒することもありますが、なかなか治らないこともあります。

また、カンジダ菌感染が子宮にまで広がり羊膜絨毛膜炎に至った場合、稀に早産を引き起こす場合があります。

そのため、妊娠初期に性器カンジダ症を疑う症状が現れたら、放置せずに早めに受診し治療を受けましょう。

 

妊娠中期・妊娠後期(妊娠末期)

妊娠中期・妊娠後期(妊娠末期)に性器カンジダ症になった場合、出産(経腟分娩)前までに治っていれば、胎内の赤ちゃんへ影響することは稀です。

カンジダ菌感染が子宮にまで広がり羊膜絨毛膜炎に至った場合、稀に早産を引き起こす場合があります。

また、性器カンジダ症が治らないまま出産(経腟分娩)すると、カンジダ菌が産道を介して母子感染し、赤ちゃんが鵞口瘡(がこうそう)という病気になるおそれがあります

鵞口瘡は、口にカンジダ菌が感染することで発症する感染症で、口腔カンジダ症と呼ばれることもあります。

 

【鵞口瘡の症状】

  • 口の中や舌に、白いかすのようなものが付着しているように見える
  • 通常は、痛みやかゆみはない
  • 稀に母乳・ミルクの飲みが悪くなることがある

ほとんどの場合、鵞口瘡は自然治癒します。

また、性器カンジダ症が治らないまま早産(経腟分娩)した場合、赤ちゃんがカンジダ菌による重篤な全身感染症となるおそれがあります。

そのため、妊娠中期・妊娠後期(妊娠末期)に性器カンジダ症を疑う症状が現れたら、放置せずに早めに受診し治療を受けましょう。

 

妊娠中の性器カンジダ症の治療法

ここでは、妊娠中の性器カンジダ症の一般的な治療法や妊娠中の注意点を紹介します。

 

膣内洗浄+膣坐薬の治療が一般的

性器カンジダ症の治療は、基本的に連日通院して膣内洗浄と膣坐薬(抗菌薬)挿入を受けるのが一般的です。

連日通院が難しい場合は、週に一回通院して膣内洗浄と膣坐薬(抗菌薬)挿入を受けます。

抗菌薬を含んだ外用剤(クリーム)が処方された場合は、指定の使用方法に従い、外用剤を自分で患部に塗ります。

個人差がありますが、性器カンジダ症の治療期間の目安は1〜2週間程度です。

 

【注意】妊娠中は市販薬を使えない

妊娠していない女性が性器カンジダ症を再発した場合、産科・婦人科で受診する以外にも、市販されている第1類医薬品の塗り薬や膣錠などでの対処も可能です。

しかし、妊娠中は「リスクよりもメリットが上回る」という医師の判断が必要になるため、性器カンジダ症の治療に市販薬を使えません。

妊娠中に性器カンジダ症の疑いがあるときは、自己判断で市販薬を使用せず、医師に相談して適切な治療を受けましょう

 

妊娠中に性器カンジダ症にならないために

妊娠中に性器カンジダ症にならないためには、体でカンジダ菌を増殖させない・体に持ち込まない生活習慣を意識することが大切です。

ここでは、性器カンジダ症にならないようにするための生活習慣の一部を紹介します。

 

膣内まで洗わない

陰部を清潔に保つことは大切ですが、膣内まで洗うと膣内環境が乱れてカンジダ菌が増殖するきっかけとなることがあります。

入浴時に陰部を洗うときは外陰部までにして、ぬるま湯で優しく洗うようにしましょう。

また、トイレでビデを使う際も膣内まで洗わないようにして、過度な洗浄は避けましょう。

 

陰部の通気性を良くする

陰部が蒸れるとカンジダ菌が増殖しやすくなるため、通気性を良くすることも大切です。

陰部の通気性を良くするには、以下のような方法があります。

  • 通気性の良いショーツを着用する
  • おりものシートはこまめに取り替える
  • 締め付けの強い服(タイツ・ストッキング・ガードルなど)は着用しない

 

ストレスを減らす

ストレスにさらされ続けると性器でカンジダ菌が増殖してしまうことがあるため、ストレスを減らすように意識しましょう。

妊娠中のストレス対策としては以下のような方法があります。

  • しっかりと睡眠をとる
  • 疲労しすぎないようにする

 

糖質の摂取を控える

カンジダ菌は糖質を栄養にして増殖するため、糖質を摂りすぎるとカンジダ菌が増殖しやすくなります。

とくに、単糖類(ブドウ糖や果糖など)を好むため、果物やハチミツが入った菓子類や飲料などの摂り過ぎには注意しましょう。

 

性行為に気を付ける

カンジダ菌は性行為によりうつることがあるので、妊娠中、性交時はコンドームを使用しましょう。

また、妊娠中はオーラルセックスを控えるようにしましょう。

口の中にカンジダ菌を保有している人からオーラルセックスを受けた場合、カンジダ菌がうつることがあります。

また、性行為前に相手の体をよく観察するなどして、カンジダ菌感染を含む感染症の疑いのある場合は、性行為自体を避けましょう。

なお、自身の性器カンジダ症が治っても、パートナーにカンジダ菌がうつっていた場合、性行為がきっかけで再発する可能性があります(ピンポン感染)

ピンポン感染の可能性がある場合は、パートナーと一緒に早めに病院で受診しましょう。

 

まとめ

妊娠中は性器カンジダ症を発症しやすくなるため、日頃から予防対策を行い発症・再発のきっかけを減らすようにしましょう。

妊娠中に性器カンジダ症になった場合、出産(経腟分娩)までに性器カンジダ症が治っていないと、カンジダ菌が母子感染する場合があるので、妊娠中に性器カンジダ症を疑う症状が現れたときは早めに医師に診てもらいましょう。

妊娠中に性器カンジダ症になっても、早期に適切な治療を受け、出産前までに治っていれば、赤ちゃんへ影響することは稀なので不安になり過ぎないようにしましょう。