デリケートゾーン(陰部)にヒリヒリ・ズキズキとした痛みや腫れなどがあるときは、原因にあわせて適切な対処を行うことが大切です。
今回の記事では、デリケートゾーン(陰部)の痛みの原因について詳しく解説します。
デリケートゾーン(陰部)の痛みに対応している診療科や、市販薬が使える病気についても紹介しますので確認してみましょう。
デリケートゾーン(陰部)の痛みの原因
デリケートゾーン(陰部)の痛みの原因には、どのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、陰部に痛みが現れる病気を紹介します。
それぞれの主な症状・主な原因・一般的な対処法を確認してみましょう。
※ ここで挙げる病気がすべてではありません。
また、痛みの強さや感じ方、症状には個人差があります。
気になる症状があるときは早めに病院で受診するようにしましょう。
萎縮性膣炎
萎縮性膣炎は、女性ホルモンの一種「エストロゲン」が減少することで起こる、膣の萎縮性の変化です。
【主な症状】
萎縮性膣炎の主な症状は以下の通りです。
- おりものの異常(悪臭がある・黄色や茶色になる)
- 陰部のかゆみ
- 陰部の違和感や不快感・圧迫感
- 陰部の乾燥
- 陰部の灼熱感(しゃくねつかん)
- 性交痛
【主な原因】
エストロゲンが減少する主な原因は加齢です。
更年期(閉経前5年間、閉経後5年間をあわせた10年間)にエストロゲンが急激に減少するため、萎縮性膣炎は更年期以降の女性に多く発症します。
早期閉経や卵巣摘出などでエストロゲンの分泌量が減少すると、20代・30代の女性でも萎縮性膣炎になる場合があります。
【一般的な対処法】
萎縮性膣炎は自然に治ることはなく、治療するための市販薬もありません。
外陰部の痛みやかゆみ、性交痛などがある場合は、以下のような方法で一時的に症状を緩和できる場合があります。
- 卵胞ホルモン剤の塗り薬を陰部に塗る
- 外陰部に保湿剤を塗り保湿する
- 性交時に潤滑ゼリーを使用する
病院では、医師により卵胞ホルモン剤の膣錠などを用いて治療が行われます。
性器ヘルペス
性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス1型または2型の感染により発症する感染症です。
【主な症状】
症状が出ない人もいますが初感染では、デリケートゾーン(陰部)に小さな水疱や複数の浅めの潰瘍などができ、強い痛みを伴うことがあります。
発熱・倦怠感・便秘といった症状が現れる人もいます。
再発では、症状が軽いことが多いです。
【主な原因】
単純ヘルペスウイルス1型または2型に感染する原因は、主に性行為(オーラルセックスを含む)です。
疲れや生理中など、免疫力が低下しているときに再発することがあります。
【一般的な対処法】
性器ヘルペスは自然治癒しますが、一度感染するとウイルスが体内に潜伏し、再発を繰り返します。
病院では、医師により抗ウイルス薬の飲み薬などを用いて治療が行われます。
重症な場合、抗ウイルス薬の点滴が用いられることがあります。
症状が無くても感染させることがあるので、性行為の際、パートナーにはコンドーム使用をおすすめします。
しかし、おしりやふともも、肛門などで再発することもあるので、コンドームをしても完全には感染を防止できません。
膣トリコモナス症
膣トリコモナス症は、膣トリコモナス原虫が膣などに感染することによる感染症です。
【主な症状】
膣トリコモナス症の主な症状は以下の通りです。
- 黄緑色から黄色で泡状の悪臭がするおりもの
- おりものの増加
- 膣の痛み
- 膣のかゆみ
- 排尿痛
- 頻尿
- 性交痛
【主な原因】
膣トリコモナス原虫が感染する主な原因は性行為ですが、下着・タオル・便器・浴槽などから感染する場合もあります。
【一般的な対処法】
膣トリコモナス症は自然治癒せず、治療するための市販薬はありません。
病院では、医師により抗原中薬の飲み薬や膣錠(女性の場合)を用いて治療が行われます。
膣トリコモナス原虫の感染が広がり子宮頸管炎になる可能性がありますので、膣トリコモナス症の疑いのある場合は早めに病院で受診しましょう。
また、再発を防ぐために、感染の可能性もあるときは性行為を控え、パートナーと一緒に受診しましょう。
ニキビ
ニキビは、毛包(毛穴)に、皮脂がたまることで起きる慢性皮膚疾患です。
正式名称は、尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)です。
【主な症状】
ニキビは進行度合いによって白ニキビ・黒ニキビ・赤ニキビ・黄ニキビと呼ばれることがあります。
それぞれの状態における主な症状は以下の通りです。
- 白ニキビ
いわゆる白ニキビとは閉塞面皰(へいそくめんぽう)の状態です。
毛穴が閉塞し、毛穴に皮脂がたまることで、皮膚表面が小さく盛り上がった状態です。
炎症は伴っていません。盛り上がりの先端は白色がかって見えることがあります。
- 黒ニキビ
いわゆる黒ニキビとは、解放面皰(かいほうめんぽう)の状態です。
閉塞面皰の状態から更に毛穴が開いた状態です。炎症は伴っていません。
皮脂の酸化やメラニン色素により、毛穴のあたりが黒色がかって見えることがあります。
- 赤ニキビ
いわゆる赤ニキビとは、紅色丘疹 (こうしょくきゅうしん)の状態です。
毛穴でアクネ菌などが増殖したために、炎症が起きている状態で、皮膚の盛り上がりが赤色に見えます。
痛みを伴う場合もあります。
- 黄ニキビ
いわゆる黄ニキビとは、膿疱(のうほう)の状態です。
膿疱は、膿がたまることで皮膚が盛り上がっている状態です。
皮膚の盛り上がりの先端が膿で黄色に見えます。
黄色に見える部分の周りは、炎症のため赤色に見えます。
【主な原因】
古い角質や皮脂が硬くなったものなどで毛穴が詰まることで、ニキビが起こります。
蒸れ、こすれ、不衛生などにより悪化することがあります。
【一般的な対処法】
まずは患部を清潔に保ちましょう。
病院では、一般的に毛穴の閉塞を防ぐ薬(塗り薬)、抗菌薬(塗り薬・飲み薬)、抗炎症薬(塗り薬)などでの治療が行われます。
市販薬には、抗菌薬や抗炎症薬などを含んだ塗り薬があります。
自然治癒する場合もありますが、悪化して治りにくくなったりニキビ跡が残ったりする可能性もあるので注意が必要です。
とくに、ニキビに目立つ膿やひどい腫れ又は痛みがあるときは、早めに病院で受診することをおすすめします。
毛嚢炎(毛包炎)
毛嚢炎(毛包炎)は、毛包(いわゆる「毛穴」)に細菌が感染することにより炎症が起きる皮膚疾患です。
毛嚢炎は、ニキビと症状が似ていますが、ニキビは毛穴のつまりが原因で、毛嚢炎は毛穴への細菌感染が原因です。
【主な症状】
毛嚢炎では、毛穴の箇所に紅色丘疹や膿疱ができます。
毛嚢炎が進行すると「せつ」という病名で呼ばれる状態になります。
せつとは、いわゆる「おでき」です。
せつになると、硬いしこりになり、赤み・痛み・熱感をより強く感じるようになります。
さらに、悪化すると「よう」という病名で呼ばれる状態になります。
ようは、隣り合うせつがつながって、膿が溜まった状態です。
ようになると、赤み・痛み・熱感の局所症状のほかにも、発熱・倦怠感などの全身症状が現れることがあります。
【主な原因】
デリケートゾーン(陰部)の剃毛・皮膚を掻く・衣類による擦れなどによって皮膚が傷ついたり、ステロイド外用薬の使用や糖尿病によって免疫力が下がったりしたときに、毛包(毛穴)に細菌(主に黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌)が感染して発症します。
【一般的な対処法】
まずは患部を清潔に保ちましょう。
病院では、原因や症状に合わせて抗菌薬(塗り薬・飲み薬)、抗真菌薬(塗り薬・飲み薬)などによる治療が行われることが多いです。
「せつ」や「よう」になっている場合は、皮膚を切開して膿を排出する処置を要します。
市販薬には、抗菌薬を含む塗り薬があります。
症状が軽い場合、自然治癒することが多いですが、患部を清潔に保っても症状が治まらないときは早めに病院で受診しましょう。
バルトリン腺嚢胞・膿瘍
膣口の左右には、粘液を分泌するバルトリン腺があります。
このバルトリン腺の開口部が詰まって粘液が溜まり、嚢胞(のうほう)・膿瘍(のうよう)ができる病気です。
【主な症状】
嚢胞は無症状なことが多く、嚢胞が大きくなると膣口付近に腫れが生じたり違和感を覚えたりする場合があります。
嚢胞が感染を起こすと膿瘍と呼ばれ、強い痛み・腫れ・赤み・熱といった症状が現れます。
立ち座りなど、日常的な動作に支障をきたすことがあります。
【原因】
バルトリン腺の開口部が詰まる原因ははっきりとしていません。
【一般的な対処法】
病院では、症状に合わせて、針穿刺(はりせんし)・抗菌薬の経口摂取・カテーテルによる膿の排出・嚢胞の切除といった治療が行われます。
軽症(しこりが小さく痛みがない)場合は、経過観察になることが多いです。
ただし、40歳以上の場合は悪性腫瘍の可能性があるため、必ず病院で受診しましょう。
炎症性粉瘤
粉瘤は、良性の皮下腫瘤(皮膚の下にできるしこり)で、皮膚の下にできた袋状の組織に角質や皮脂が溜まったものです。
粉瘤の中に細菌が侵入し、炎症や化膿を起こしたものを炎症性粉瘤といいます。
【主な症状】
粉瘤では、数mmから数cmの大きさで、中央に黒い開口部がある半球上のしこりができます。
痛みはなく、圧迫するとドロドロとしたものが出てくることがあります。
炎症性粉瘤では、赤く腫れて強い痛みが伴います。
【原因】
粉瘤自体ができる原因ははっきりとわかっていません。
【一般的な対処法】
粉瘤自体は自然治癒せず、日常的なケアや市販薬で治すこともできません。
粉瘤の疑いがあるときは、病院で受診しましょう。
病院では医師により、症状に合わせて飲み薬・膿を排出する切開・袋を除去する手術といった治療が行われます。
ベーチェット病
ベーチェット病は、慢性的に再発する全身性の炎症性疾患で、指定難病に定められています。
【症状】
口腔潰瘍・外陰部潰瘍・皮膚症状・眼症状が主症状とされており、副症状として関節炎や血管病変・消化器病変などがあります。
【原因】
ベーチェット病が発症する原因ははっきりとわかっていません。
【治療法など】
ベーチェット病を完治させる治療法はいまのところ確立されていません。
外陰部潰瘍は数週間で軽快しますが、ベーチェット病の炎症発作は繰り返し起こります。
外陰部潰瘍については、病院では医師により、潰瘍のある場所を洗浄したり、抗菌薬の塗り薬・膣錠、抗炎症薬の塗り薬などを用いて症状を軽減する治療が行われます。
デリケートゾーン(陰部)の痛みは何科で受診する?
ここでは、男女別に、デリケートゾーン(陰部)の痛みがあるときに受診する医療機関、市販薬について紹介します。
【女性の場合】婦人科・産婦人科・皮膚科
婦人科・産婦人科であれば膣内の診察も可能です。
さまざまなデリケートゾーン(陰部)のトラブルに対応できるため、まずは婦人科・産婦人科で受診するとよいでしょう。
【男性の場合】泌尿器科・形成外科・皮膚科
男性の場合、デリケートゾーン(陰部)の痛みがあるときは泌尿器科・形成外科・皮膚科で受診するのが一般的です。
デリケートゾーン(陰部)の痛みに市販薬は使える?
デリケートゾーン(陰部)の痛みがあるときは、抗菌や抗炎症作用のある市販薬を使って対処できる病気もあります。
市販薬が使える病気でも、症状や程度によっては専門的な治療が必要になる場合もあります。
また、自分が思っていたものとは異なる病気の可能性もあるため、デリケートゾーン(陰部)の痛みがあるときは自己判断せずに病院で受診しましょう。
まとめ
デリケートゾーン(陰部)の痛みがあるときは、さまざまな病気の可能性があります。
感染症が原因のときはパートナーにうつす恐れがあり、日常的なケアや市販薬では治らない病気もあるので注意が必要です。
また、似たような症状があらわれる病気があるため、自己判断をすると誤った対処をとってしまう場合もあります。
気になる症状があるときは、一度病院で受診しましょう。