ビタミンB群とは?効果や豊富に含まれる食べ物、不足・過剰で起こること

ビタミンといえば誰もが知る栄養素ですが、そのうち「ビタミンB群」はなぜ「群」がつくのでしょうか?

また、摂取することでどのような効果が期待できるのかも気になるところです。

今回はビタミンB群を摂取できる食べ物や不足・過剰によって起こる可能性のあることをまとめました。

 

目次

ビタミンB群とは

ビタミンB群とは、どのような栄養素なのでしょうか。

まずは概要をご紹介します。

 

エネルギーの生成に必要な栄養素

ビタミンB群は、食べ物からエネルギーを生成するために必要な栄養素です。

私たちは、食べ物に含まれる

  • タンパク質
  • 糖質
  • 脂質

という3つの栄養素から体を動かすためのエネルギーを得ます。

しかし、ただ得るだけではエネルギーとして使うことはできません。

 

そこで必要となるのがビタミンB群のサポートです。

栄養素からエネルギーを生成する「エネルギー代謝」を行う酵素の働きを「補酵素」として助けるのがビタミンB群の役割です。

体内のビタミンB群が減少すると、十分にエネルギーを作り出すことができなくなるので、体が疲れやすくなります。

元気に過ごすためには、ビタミンB群が欠かせないのです。

 

ビタミンB群に限らずビタミンのほとんどは体内で生成することができません

そのため、食品などから摂取する必要があります。

 

ビタミンB群は水溶性ビタミンのうちの8種類の栄養素を指す

ビタミンは大きく2種類に分類されます。

  • 脂溶性ビタミン:油に溶けやすい性質
  • 水溶性ビタミン:水に溶けて体の中を移動する性質

水溶性ビタミンの一つに、ビタミンB群があります。

ビタミンB群は以下の8種類の栄養素で構成されます。

 

【ビタミンB群の栄養素】

  • ビタミンB1
  • ビタミンB2
  • ビタミンB6
  • ビタミンB12
  • ナイアシン(別名:ビタミンB3)
  • パントテン酸(別名:ビタミンB5)
  • ビオチン(別名:ビタミンB7)
  • 葉酸(別名:ビタミンB9)

栄養素同士が協力し合いながら働くため、バランス良く毎日の食事に取り入れることが望ましいです。

 

【ビタミンB群の栄養素別】期待できる効果一覧

ビタミンB群の各栄養素に期待できる効果の一例は以下の通りです。

ビタミンB群の栄養素期待できる効果
ビタミンB1疲労回復
ビタミンB2身体の成長をサポート
ビタミンB6リラックス効果
ビタミンB12貧血を防ぐ
ナイアシン(ビタミンB3)二日酔いの予防
パントテン酸(ビタミンB5)ストレスを和らげる
ビオチン(ビタミンB7)髪や肌を健康に保つ
葉酸(ビタミンB9)動脈硬化の予防

各種、ほかにも様々な効果が期待できます。

異なるビタミンB群の栄養素で効果が重複する場合がありますが、それでも偏らないようにまんべんなく摂取するようにしましょう。

 

サプリメントはいつ飲むといい?

ビタミンB群はサプリメントでも気軽に摂取できるようになりましたが、より効果を得るためには、いつ飲むのが良いのでしょうか。

先ほど触れた通り、水溶性ビタミンは水に溶けて体の中を移動する性質を持ちます。

つまり、朝にまとめて飲んでも、夕方には尿になって排泄されてしまうのです。

そのため、ビタミンB群の不足を防ぐには、摂取するタイミングを「朝・夕方の1日2回」などに分けることがおすすめです。

 

サプリメントの過剰摂取は効果なし!悪影響が出る場合も

体に有益だからといって、サプリメントを必要以上に摂取しても効果が上がるわけではありませんビタミンB群の余剰分は尿として体外に出されるからです。

それだけでなく、一部のビタミンB群に属する栄養素の中には、過剰摂取により体に悪影響が出るケースも報告されています。

詳しくは各栄養素の項目で解説します。

 

サプリメントは、あくまでも栄養素の不足分を補うものです。

1日の目安量を守って摂取することを意識しましょう。

それでは、ビタミンB群の栄養素各種について特徴を見ていきましょう。

 

栄養素「ビタミンB1」の特徴

ビタミンB1は、糖質を代謝して体や脳を動かすために必要なエネルギーを生み出すプロセスで、酵素の働きをサポートしています。

糖質を多く含む白米を主食としている日本人にとって、健康的に過ごすために欠かせない栄養素です。

 

「疲労回復」などの効果が期待できる

ビタミンB1を摂取すると疲労物質である乳酸が溜まりにくくなるため、疲労回復効果が期待できます。

脳に必要なエネルギーをブドウ糖から産生するサポートも行うため、神経機能を正常に保つことにも役立ちます。

また、食事で摂った糖質を効率よくエネルギーに変換することから、ビタミンB1はダイエットに必須の栄養素です。

 

1日あたりの推奨摂取量

ビタミンB1の1日あたりの推奨摂取量は下記です。

ビタミン B1 の食事摂取基準(推奨量:mg/日)

年齢男性女性
1~2歳0.50.5
3~5歳0.70.7
6~7歳0.80.8
8~9歳1.00.9
10~11歳1.21.1
12~14歳1.41.3
15~17歳1.51.2
18~49歳1.41.1
50~74歳1.31.1
75歳以上1.20.9
妊婦/授乳婦(付加量)+0.2

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」をもとに作成

 

1日あたりの平均摂取量

では、実際にはどのくらいビタミンB1を摂取できているのか、性別・年代別の摂取量の平均値を見てみましょう。

ビタミンB1の平均摂取量(mg/日)

年齢男性女性
1~6歳0.680.62
7~14歳1.060.94
15~19歳1.170.98
20~29歳1.070.77
30~39歳1.02 0.83
40~49歳1.090.89
50~59歳1.000.83
60~69歳1.030.93
70~79歳1.050.94
80歳以上0.930.80

厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」をもとに作成

食事摂取基準の推奨量と比べて見ると、ほとんどの年代で推奨量に達していないことがわかります。

 

不足したときの症状

では、ビタミンB1が不足すると、どのような症状が起こる可能性があるのか見てみましょう。

イライラ/疲労感/倦怠感/食欲不振/記憶障害/集中力の低下/運動能力の低下/手足のしびれ/手足のむくみ/動悸/息切れ など

ビタミンB1が不足し、症状が進行すると手足のしびれ、動悸などを引き起こす脚気(かっけ)を発症することもあります。

現代で脚気を発症することはほとんどありませんが、偏った食生活をしている人、お菓子や清涼飲料水を摂取する機会が多い人はリスクが高まるので注意しましょう。

 

摂取量の上限と過剰摂取で起こる可能性のある副作用

ビタミンB1は体内に溜めておくことができず、摂りすぎた分は尿と一緒に排出されるので、摂取量の上限は特にありません

また、ビタミンB1の過剰摂取による悪影響の報告はなく、基本的な食事から摂取するだけでは副作用の心配はありません。

 

ビタミンB1が豊富な食べ物

ビタミンB1は、以下のような食べ物に豊富に含まれています。

豚肉(ヒレ・モモ・ロース・レバー)/生ハム/たらこ/うなぎ/パン酵母/グリーンピース/切り干し大根/そば(乾燥)/玄米/胚芽米/緑茶(玉露・抹茶・煎茶)/ココア など

ビタミンB1は穀物の胚芽に多く含まれているので、お米を食べるなら精白米よりも玄米や胚芽米を食べるのがおすすめです。

摂りたい栄養成分を含む食品を調べるなら以下が役立ちます。

参考:食品成分ランキング|文部科学省

日本食品標準成分表2020年版(八訂)|文部科学省

 

栄養素「ビタミンB2」の特徴

ビタミンB2は、三大栄養素である脂質・糖質・タンパク質の代謝やエネルギー産生をサポートする働きがあります。

「発育のビタミン」「美容のビタミン」と呼ばれており、成長期の子ども、美肌や美髪をキープしたい人には特に重要な栄養素のひとつです。

 

「体の成長のサポート」などの効果が期待できる

ビタミンB2は、脂質を代謝してエネルギーを生み出すほか、細胞の再生や代謝を促す働きがあるため、体の成長をサポートする栄養素として欠かせません。

また、皮膚・粘膜・髪・爪などの細胞の再生に関わっているため、大人にとっても健康を維持するために必要です。

さらに糖質、脂質、タンパク質の代謝を促すことから、糖尿病など生活習慣病の予防やダイエット効果も期待できます。

 

1日あたりの推奨摂取量

ビタミンB2の1日あたりの推奨摂取量は次の通りです。

ビタミン B2の食事摂取基準(推奨量:mg/日)

年齢男性女性
1~2歳0.60.5
3~5歳0.80.8
6~7歳0.90.9
8~9歳1.11.0
10~11歳1.41.3
12~14歳1.61.4
15~17歳1.71.4
18~49歳1.61.2
50~74歳1.51.2
75歳以上1.31.0
妊婦(付加量)+0.3
授乳婦(付加量)+0.6

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」をもとに作成

 

1日あたりの平均摂取量

実際にはどのくらいビタミンB2を摂取できているのか、性別・年代別の摂取量の平均値を見てみましょう。

ビタミンB2の平均摂取量(mg/日)

年齢男性女性
1~6歳0.850.76
7~14歳1.301.18
15~19歳1.321.11
20~29歳1.200.97
30~39歳1.101.00
40~49歳1.161.05
50~59歳1.191.09
60~69歳1.301.21
70~79歳1.391.27
80歳以上1.251.11

厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」をもとに作成

20代で減少傾向になり、60代でまた増えるのが特徴的です。

摂取推奨量に満たない年代が多い傾向にあります。

 

不足したときの症状

ビタミンB2が足りなくなると、以下のような症状が起こりやすくなります。

肌荒れ/口内炎/口角炎/舌炎/脂漏性皮膚炎/角膜炎/眼精疲労/結膜炎/目の充血/髪のトラブル/成長障害(子どもの場合) など

ビタミンB2は脂質の代謝に関わり、皮脂の分泌をコントロールする働きがあります。

そのため、不足すると皮脂の過剰分泌を招き、脂性肌になってニキビやべたつきなど肌トラブルを引き起こす場合もあります。

ビタミンB2は腸内細菌によって作られていますが、脂っこい食事が多い人や妊娠中の人、運動量が多い人は不足しがちです。

また、抗生物質や副腎皮質ホルモン剤、精神安定剤、経口避妊薬(ピル)を多量に服用している人も欠乏しやすいので注意しましょう。

 

摂取量の上限と過剰摂取で起こる可能性のある副作用

ビタミンB2は摂取しすぎても尿と一緒に排出されるため、摂取量の上限は特にありません。

基本的に摂り過ぎが原因で起こる副作用も報告されていません。

 

ビタミンB2が豊富な食べ物

ビタミンB2が豊富な食べ物は以下のようなものです。

レバー(豚・牛・鶏)/乳製品(チーズ・牛乳など)/うなぎ/卵/納豆/モロヘイヤ/わらび/とうがらし/ブロッコリー など

うなぎと卵で作る「う巻き」はビタミンB2が豊富な料理の代表です。

 

栄養素「ビタミンB6」の特徴

ビタミンB6はタンパク質の分解・合成をサポートする作用を持ちます。

他にもタンパク質を分解して作られるアミノ酸を使って、神経伝達物質(ギャバ・セロトニン・ドーパミンなど)の合成を助ける働きもあります。

 

「リラックスできる」などの効果が期待できる

ビタミンB6には神経機能を正常に維持する働きがあり、リラックス効果にもつながります。

これは、脳の興奮を鎮める作用があることで知られるギャバ(GABA)などの神経伝達物質の合成に関わっているからです。

また、脂質の代謝により、脂質が溜まるのを防ぐため、脂肪肝の予防も期待できます。

その他ビタミンB6に期待できる効果は次の通りです。

  • 子供の成長促進
  • 健康的な髪や皮膚、筋肉の維持
  • 花粉症・アレルギー症状の緩和
  • つわりの症状緩和
  • 月経前症候群(PMS)の症状緩和
  • 動脈硬化の予防
  • 眼精疲労の改善

 

1日あたりの推奨摂取量

血しょう中に存在するPLP(ピリドキサール5-リン酸)は、体内のビタミンB6貯蔵量を反映すると言われています。

ビタミンB6欠乏に起因する障害に関する報告では、血しょうPLP濃度を30nmol/Lに維持できれば神経障害などの症状が観察されなくなることがわかっています。

これらの情報をもとに、厚生労働省は、血しょうPLP濃度を30nmol/Lに維持できるビタミンB6摂取量を推定平均必要量として設定しています。

また、ビタミンB6の必要量はアミノ酸(タンパク質を構成する有機化合物)の異化(分解)代謝量に応じて要求される量が高まります。

そのためタンパク質の摂取量当たりでビタミンB6の必要量が算出され、さらにそこから算出された推奨量が以下です。

ビタミンB6の食事摂取基準(推奨量:mg/日)

年齢男性女性
1~2歳0.50.5
3~5歳0.60.6
6~7歳0.80.7
8~9歳0.90.9
10~11歳1.11.1
12~14歳1.41.3
15~17歳1.51.3
18歳以上1.41.1
妊婦(付加量)+0.2
授乳婦(付加量)+0.3

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」をもとに作成

 

1日あたりの平均摂取量

ビタミンB6をどれくらい摂取できているのか、性別・年代別の摂取量の平均値を確認してみましょう。

ビタミンB6の平均摂取量(mg/日)

年齢男性女性
1~6歳0.770.69
7~14歳1.121.03
15~19歳1.311.09
20~29歳1.120.91
30~39歳1.130.96
40~49歳1.251.01
50~59歳1.231.05
60~69歳1.361.23
70~79歳1.461.30
80歳以上1.311.09

厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」をもとに作成

男女ともに20歳から減少傾向になり、男性は40歳から、女性は60歳から増加傾向に転じるのが特徴的です。

 

不足したときの症状

ビタミンB6が不足すると、以下のような症状が出やすくなります。

皮膚炎/口内炎/口角症/舌炎/貧血/結膜炎/手足のしびれ/食欲不振/不眠症/情緒不安定 など

腸内細菌がビタミンB6を生成することができるので不足しにくい栄養素ではあります。

ただし、長期的に抗生物質を服用している人や妊娠中の人は欠乏しやすくなるので注意しましょう。

 

摂取量の上限と過剰摂取で起こる可能性のある副作用

ビタミンB6を余分に摂取した分は尿として排出されますが、サプリメントなどでの過剰摂取によって、感覚が鈍化する「感覚性ニューロパチー」が発症する恐れがあります。

そのため、成人では1日当たりの耐容上限量が下記の通り定められています。

【成人男女(18歳以上)の耐容上限量(mg/日)】

年齢男性女性
18~29歳55 45
30~49歳6045
50~64歳5545
65~74歳5040
75歳以上5040

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」をもとに作成

栄養機能食品やビタミンB群サプリ・マルチビタミンサプリなどの健康食品を活用する場合は、商品のビタミンB6含有量を確認し、過剰にならないよう注意しましょう。

 

ビタミンB6が豊富な食べ物

ビタミンB6を豊富に含むのは、以下のような食べ物です。

にんにく/かつお/まぐろ/抹茶/アボカド/ブロッコリー/バナナ/牛レバー/豚ヒレ肉/ささみ/玄米/ピスタチオ など

多くの魚や肉系の食品に含まれているのが特徴です。

 

栄養素「ビタミンB12」の特徴

コバルトを含む化合物で補酵素として働くビタミンB12。

赤血球を生成する過程をサポートする働きがあるため、「造血のビタミン」と呼ばれています。

ほかDNAの合成にも関わります。

 

「貧血を防ぐ」などの効果が期待できる

赤血球の生成に関わり、摂取すると貧血を防ぐ効果が期待できるビタミンB12。

脂肪酸やアミノ酸の代謝、細胞の遺伝物質である核酸(DNA・RNA)やタンパク質の生合成にも関わり、末梢神経を正常に保つ働きもあります。

ビタミンB12の血中量が少ない認知症患者がビタミンB12を摂取したところ、集中力が高まった、神経過敏が軽減したといった報告があり、認知症治療の分野でも注目を集めています。

 

1日あたりの推奨摂取量

健康な人ではビタミンB12の体内における必要量の算定ができないため、悪性貧血の患者にビタミンB12を筋肉内注射し、貧血の治療に費やした量を元に算定されています。

ビタミン B12 の食事摂取基準(推奨量:μg/日)

年齢男性女性
1~2歳0.90.9
3~5歳1.11.1
6~7歳1.31.3
8~9歳1.61.6
10~11歳1.91.9
12歳以上2.42.4
妊婦(付加量)+0.4
授乳婦(付加量)+0.8

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」をもとに作成

 

1日あたりの平均摂取量

ビタミンB12をどれくらい摂れているのか、性別・年代別の摂取量の平均値を確認してみましょう。

ビタミンB12の平均摂取量(μg/日)

年齢男性女性
1~6歳4.42.7
7~14歳5.95.8
15~19歳4.94.4
20~29歳6.54.3
30~39歳5.35.0
40~49歳5.94.5
50~59歳6.35.4
60~69歳8.26.5
70~79歳8.87.5
80歳以上7.76.2

厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」をもとに作成

どの年代も十分に推奨量を満たしていることがわかります。

 

不足したときの症状

ビタミンB12が不足したときは、以下のような症状が起こりやすくなります。

貧血(筋力低下・疲労・蒼白・息切れなど)/神経障害(手足のチクチクとした痛み・しびれ・感覚消失・集中力の低下など)

ビタミンB12は腸内細菌によっても作られ、必要量もわずかなので不足することはほとんどありません

ただし、胃を切除している人や小腸に吸収不全のある人などは不足する場合があります。

 

摂取量の上限と過剰摂取で起こる可能性のある副作用

ビタミンB12は過剰摂取しても、胃から分泌される内因子の調整によって、余剰分が吸収されることはありません。

そのため、摂取量の上限は定められておらず、過剰摂取で起こる可能性のある副作用の報告もありません。

 

ビタミンB12が豊富な食べ物

ビタミンB12を豊富に含むのは以下のような食べ物です。

しじみ/あさり/かき/イワシ/海苔/レバー(牛・豚・鶏)/チーズ など

ビタミンB12は基本的に動物性食品に含まれます。

植物性食品を中心とした食事をしている人は不足しがちなので、サプリメントなどを活用するのがおすすめです。

 

栄養素「ナイアシン」の特徴

ナイアシンはニコチン酸アミドとニコチン酸の総称で、体内では必須アミノ酸のトリプトファンから合成されています。

脂質・糖質・タンパク質の代謝に関わり、エネルギーの産生を補酵素としてサポートする働きがあります。

 

「二日酔いの予防」などの効果が期待できる

ナイアシンはアルコールの分解に関わる成分なので、摂取することで二日酔いの予防につながります。

よくお酒を飲む人は意識的に摂りましょう。

また、補酵素としてエネルギーの産生をサポートするほか、細胞の生まれ変わりを助ける働きにより、皮膚や粘膜を健康に保つ効果も期待できます。

毛細血管を広げる働きもあるので、血行促進にも貢献します。

 

1日あたりの推奨摂取量

肝臓でトリプトファンからナイアシンが生合成される際、重量比で60mgのトリプトファンから1mgのニコチンアミドが生成されるものとして、推奨量が算出されています。

ナイアシンの食事摂取基準(推奨量:mgNE/日)

年齢男性女性
1~2歳65
3~5歳87
6~7歳98
8~9歳1110
10~11歳1310
12~14歳1514
15~17歳1713
18~29歳1511
30~49歳1512
50~74歳1411
75歳以上1310
妊婦(付加量)+0
授乳婦(付加量)+3

※ナイアシン当量(NE)=ナイアシン+1/60トリプトファンで提示

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」をもとに作成

 

1日あたりの平均摂取量

ナイアシン当量をどれくらい摂取できているのか、性別・年代別の摂取量の平均値を確認してみましょう。

ナイアシン当量の平均摂取量(mg/日)

年齢男性女性
1~6歳18.616.9
7~14歳29.827.4
15~19歳36.830.1
20~29歳33.625.6
30~39歳33.026.6
40~49歳35.428.6
50~59歳33.927.9
60~69歳35.630.3
70~79歳35.430.5
80歳以上31.026.0

厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」をもとに作成

どの年代も問題なく推奨量に達していることがわかります。

 

不足したときの症状

ナイアシンの不足によって、以下のような症状が起こりやすくなります。

口内炎/食欲不振/消化不良/下痢/不安感/倦怠感 など

ナイアシンが欠乏すると、皮膚炎・下痢・うつなどの疾患を引き起こす「ペラグラ」の原因になることでも知られています。

ただ、「ぺラグラ」は、通常トウモロコシ(インディアンコーン)を主食とする地域に起こるとされています。

 

摂取量の上限と過剰摂取で起こる可能性のある副作用

ナイアシンは、食事で摂取している場合には過剰摂取になりにくい栄養素です。

ただし、サプリメントなどで大量に摂取した場合は、皮膚にかゆみや赤みが起こることがあります。

他にも、過剰摂取すると副作用として消化器系や肝臓に障害が起こる可能性があります

そのため、下記の通り耐容上限量が設けられています。

【成人男女(18~75歳以上)の耐容上限量(mgNE/日)】

年齢男性女性
18~29歳300(80)250(65)
30~64歳350(85)250(65)
65~74歳300(80) 250(65)
75歳以上300(75)250(60)

※耐容上限量はニコチンアミドの量、( )内はニコチン酸の量です。

参考:厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020 年版) 

 

ナイアシンが豊富な食べ物

ナイアシンを豊富に含むのは以下のような食べ物です。

たらこ/かつお/まぐろ/鶏胸肉/ささみ/ピーナッツ/レバー(牛・豚)/まいたけ/インスタントコーヒー など

ナイアシンと一緒にトリプトファンも意識的に摂取すると、体内のナイアシンの合成を促すことができます。​

​ナイアシンを作り出すトリプトファンは、レバー(牛・豚・鶏)やチーズ・牛乳などの乳製品、大豆製品、かつお、まぐろ、バナナなどに多く含まれています。

 

栄養素「パントテン酸」の特徴

パントテン酸はコエンザイムAという補酵素の構成成分で、脂質・糖質・タンパク質の代謝を助ける働きがあります。

免疫抗体の合成や血中の善玉(HDL)コレステロールの合成促進などにも関わっている栄養素です。

 

「ストレスを和らげる」などの効果が期待できる

パントテン酸は「抗ストレスホルモン」とも呼ばれており、摂取するとストレスを和らげる効果が期待できます。

また、善玉(HDL)コレステロールの合成を促すことで動脈硬化の予防にも役立ちます。

タンパク質の合成に必要なビタミンCの働きもサポートするので、健康的な肌や髪の毛を保つためにも欠かせません。

免疫抗体の合成も担う、心身の健康に関わっている栄養素です。

 

1日あたりの目安量

パントテン酸は、欠乏症を実験的に再現できないことから摂取推奨量を算出できません。

そのため、日本人の食事摂取基準(2020 年版)では、欠乏が出たとの報告がない平成28年国民健康・栄養調査におけるパントテン酸摂取量の中央値を目安量として設定しています。

以下がその目安量です。

パントテン酸の目安量(mg/日)

年齢男性女性
1~2歳34
3~5歳44
6~7歳55
8~9歳65
10~11歳66
12~17歳76
18~49歳55
50歳以上65
妊婦5
授乳婦6

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」をもとに作成

 

1日あたりの平均摂取量

パントテン酸をどれくらい摂取できているのか、性別・年代別の摂取量の平均値を確認してみましょう。

パントテン酸の平均摂取量(mg/日)

年齢男性女性
1~6歳4.263.83
7~14歳6.405.83
15~19歳6.855.60
20~29歳5.924.65
30~39歳5.544.87
40~49歳5.915.06
50~59歳5.835.12
60~69歳6.215.68
70~79歳6.485.79
80歳以上5.925.02

厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」をもとに作成

前述の通り、目標量は実際の摂取量をもとに提示されており、数値に大きな差はありません。

 

不足したときの症状

パントテン酸が不足すると、以下のような症状が起こりやすくなります。

疲労感/食欲不振/しびれ/頭痛/不眠/便秘/動悸/めまい/手足の知覚の異常/灼熱感 など

パントテン酸は腸内細菌によって作られており、多様な食材に含まれているので通常の食生活で不足することはほとんどありません。

ただし、カフェインやアルコールにはパントテン酸の吸収を阻害する働きがあります

コーヒーや緑茶などカフェインが多い飲み物や、お酒を摂取する機会が多い人は注意しましょう。

 

摂取量の上限と過剰摂取で起こる可能性のある副作用

パントテン酸は余分に摂取した分は体外に排出されるので、摂取量の上限は特段設けられていません。

過剰摂取によるリスクは低いですが、サプリメントなどで過剰摂取すると吐き気や食欲不振などが起こる恐れがあります。

 

パントテン酸が豊富な食べ物

パントテン酸は以下のような食べ物に豊富に含まれています。

レバー(鶏・豚・牛)/ささみ/干ししいたけ/ひらたけ/納豆/緑茶(玉露・抹茶)/たらこ/卵黄/ピーナッツ など

パントテン酸は熱に弱いので、生で食べられるものはそのまま摂取するようにしましょう。

 

栄養素「ビオチン」の特徴

ビオチンは、糖質やアミノ酸、脂肪酸の分解に関係する酵素の働きをサポートします。

また、皮膚炎の改善効果も期待できます。

 

「髪や肌を健康に保つ」などの効果が期待できる

ビオチンは、糖質やアミノ酸、脂肪酸の分解をサポートすることにより、エネルギーの生成を助けます。

髪や肌の新陳代謝をサポートする働きもあるため、健康的な髪や肌の維持にも役立つでしょう。

また、ビオチンには皮膚の炎症やかゆみの原因となるヒスタミンが作られるのを抑える作用があるため、皮膚炎の改善も期待できます。

 

1日あたりの目安量

ビオチンは欠乏症を実験的に再現することが不可能で、摂取推奨量を設定できないことから、成人の場合はトータルダイエット法による値を用いて、摂取目安量が設けられています。

ビオチンの目安量(μg/日)

年齢男性女性
1~5歳2020
6~9歳3030
10~11歳4040
12歳以上5050
妊婦/授乳婦50

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」をもとに作成

 

1日あたりの平均摂取量

ビオチンの平均摂取量は、厚生労働省による「令和元年国民健康・栄養調査報告」の調査報告の項目にないため詳細はわかりません。

しかし、45.1 µg/日※1や 60.7 µg/日※2という報告があります。

※1 齋東由紀,牛尾房雄.トータルダイエット調査による東京都民のビオチン,ビタミン B6,ナイアシンの一日摂取量の推定.栄養学雑誌 2004: 62; 165─9.

※2 渡邊敏明,谷口歩美.トータルダイエット調査によるビオチン摂取量の推定についての検討.日本臨床栄養学会雑誌 2006; 27: 304-12.

 

不足したときの症状

ビオチン不足は、以下のような症状を引き起こしやすくなります。

抜け毛/結膜炎/食欲不振/吐き気/舌炎/知覚過敏/うつ症状/緊張低下 など

しかしながら、普通に食事を摂っていれば問題なく、腸内でも乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌によって生成されるため、不足することはないでしょう。

 

摂取量の上限と過剰摂取で起こる可能性のある副作用

ビオチンは摂り過ぎても尿として体外に排出されます。

健康な人の過剰摂取による副作用の報告もないため、摂取量の上限は設定されていません。

 

ビオチンが豊富な食べ物

ビオチンを豊富に含む食べ物は以下の通りです。

かれい/レバー(鶏・牛・豚)/パン酵母(乾燥)/まいたけ/しいたけ(乾燥)落花生/ひまわりの種/アーモンド/黄大豆/卵 など

ビオチンは加熱しても分解されにくいため、食材を調理して食べても、きちんと摂取できます。

 

栄養素「葉酸」の特徴

ほうれん草から発見されたことが「葉酸」という名の由来。

葉酸は赤血球を作るため、ビタミンB12と共に「造血のビタミン」とも呼ばれています。

正常な核酸(DNA・RNA)を合成するサポート、代謝を促す酵素のサポートなども行います。

 

「動脈効果の予防」などの効果が期待できる

葉酸は高齢者に多い「動脈硬化」の予防については多くの研究がされています。

動脈硬化の原因となるのが、血液中のアミノ酸「ホモシステイン」です。

ホモシステインの血中濃度が高くなると、健康な血管の維持が難しくなって動脈硬化につながるケースがあります。

このホモシステインの濃度を下げる効果が期待できるのが葉酸です。

したがって、動脈硬化によってリスクが上がる、心筋梗塞や狭心症といった循環器系の疾患の予防に役立つと期待されています。


【妊婦に葉酸が必要な理由や与える影響】

・妊婦には葉酸が大切?

また、葉酸を妊娠時に必要な栄養素として把握している方は多いでしょう。

妊娠時に葉酸が必要なのは、胎児の成長に伴う細胞分裂を正常な核酸(DNA・RNA)作りに関わることでサポートするからです。

妊娠中だけではなく、妊娠前や授乳期についても積極的な摂取が推奨されています。

 

・葉酸は便秘の原因になる?

妊娠時に葉酸の影響で便秘になりやすくなったという話を聞いたことがある方もいるでしょう。

しかし、もともと妊娠時は便秘になりやすい傾向があり、そのタイミングで葉酸をサプリメントなどで意識的に摂取するようになるためと考えられます。

葉酸は赤血球を作る働きにより、むしろ便通改善に貢献する可能性もあるのです。

赤血球が作られると血行が促進されて、酸素が十分に体内にいきわたるため、臓器の働きが良くなります。

すると、腸の動きも改善して便秘の解消につながると考えられるからです。

 

とはいえ、改善するとしても、かなり遠回りな便秘の改善方法になります。

便秘で悩んでいる場合は、市販の整腸薬に頼ることも有効かもしれません。

整腸作用を持つ乳酸菌に加え、消化を促す麹の酵素、ビタミンB群や酵母も配合した「強力わかもと」のような胃腸薬であれば、

  • 便秘や腹部膨満感
  • 胃もたれや肉体疲労

など、妊娠中に起こりやすい体の不調に効果が得られるでしょう。

産前産後の栄養補給にも役立ちます。

ただし妊娠中に服用する場合は、体調により薬の効果が強く現れる場合もあります。

服用する前には、念のため医師や薬剤師に相談してください。


 

1日あたりの推奨摂取量

推奨量はサプリメントではなく、通常の食品から摂取される葉酸(食事性葉酸)を想定して算出されています。

妊娠時、授乳時は通常よりかなり多く摂ることを推奨されています。

葉酸の食事摂取基準(推奨量:μg/日)

年齢男性女性
1~2歳9090
3~5歳110110
6~7歳140140
8~9歳160160
10~11歳190190
12歳以上240240
妊婦(付加量)+240
授乳婦(付加量)+100

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」をもとに作成

 

1日あたりの平均摂取量

葉酸をどれくらい摂取できているのか、性別・年代別の摂取量の平均値を確認してみましょう。

葉酸の平均摂取量(μg/日)

年齢男性女性
1~6歳159148
7~14歳237230
15~19歳260245
20~29歳237226
30~39歳253233
40~49歳275247
50~59歳297284
60~69歳335328
70~79歳359348
80歳以上335311

厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」をもとに作成

20~30代の女性で推奨量を満たしていませんが、妊娠中の人にとっては大切な栄養素なので、十分に摂取することをおすすめします。

 

不足したときの症状

葉酸が不足すると、以下のような症状が起こりやすくなります。

貧血/疲労/動悸・息切れ/頭痛/脱力感/集中力の低下 など

葉酸と、同じく赤血球を作るビタミンB12の不足は、正常な赤血球が作れずに起こる「悪性貧血」の原因となります。

また、妊娠中に不足すると、胎児の細胞分裂に支障が出て、発育が順調にいかなくなり、神経管閉鎖障害や下半身障害、流産・死産などの原因になることもあります。

妊娠中である、抗がん剤投与を受けている、透析を受けているといった人は葉酸が不足しがちなので、医師と相談しながら適切に摂取しましょう。

 

摂取量の上限と過剰摂取で起こる可能性のある副作用

サプリメントで葉酸を摂取する場合は、上限量に気をつけなければなりません。

ビタミンB12の摂取量が足りない状態で葉酸を過剰摂取すると、ビタミンB12の欠乏によって引き起こされている悪性貧血の発症が判明しづらくなるためです。

普通の食事で過剰摂取になることはまずないですが、サプリメントなどで摂取する場合は摂り過ぎに気をつけましょう。

葉酸の耐容上限量は以下の通りです。

【成人男女(18~75歳以上)の耐容上限量(μg/日)】

年齢男性女性
18~29歳900900
30~64歳10001000
65歳以上900900

※通常の食品以外の食品に含まれる葉酸(狭義の葉酸)に適用

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」をもとに作成

 

葉酸が豊富な食べ物

葉酸は以下のような食べ物に豊富に含まれています。

パン酵母(乾燥)/レバー(鶏・牛・豚)/ひよこ豆・枝豆/モロヘイヤ/ほうれん草/ブロッコリー/アスパラ/うなぎ(肝)/生うに/えび など

エビとブロッコリーのサラダは比較的簡単にできて、葉酸も摂りやすいのでおすすめです。

 

まとめ

ビタミンB群を構成する栄養素は、どれも私たちの体に欠かせないものです。

バランスの摂れた食事をしていれば、基本的に不足することはありません

しかし、葉酸なら妊娠中の方は不足しやすいなど、栄養素によって特徴があるので、推奨量を確認して不足しないようにしましょう。

また、ビタミンBサプリメントを利用している方は、過剰摂取によって健康に悪影響をもたらす場合もあるので、摂り過ぎに注意することも大切です。

元気な毎日を過ごすためにビタミンB群の効果を十分に理解して、健康維持に役立てましょう。