乳酸菌とは?効果や種類、乳酸菌を含む食品について医師が解説!

乳酸菌と聞くと、なんとなく体にいいイメージが湧く人も多いのではないでしょうか?

とはいえ、実際乳酸菌とはどのような菌で私たちにどういった効果をもたらしてくれるのか詳しく説明できる人は少ないはずです。

今回は乳酸菌とは一体どのような菌なのか内科医である田尻医師に教えていただきました。

効果や種類、乳酸菌を含む食品などを詳しくお話しいただきましたので、参考にしてみてください。

 

お話を伺った医師

▶️錦糸町皮膚科内科クリニック

乳酸菌について教えてください

Q:乳酸菌とはどのような菌なのでしょうか?

人の腸には約1000種類100兆個の細菌が存在しており、腸内細菌叢とも言われています。

その中でも腸内の細菌は「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」に分けられ、理想的なバランスは2:1:7とされています。

この腸内細菌叢のバランスが崩れないように働いているのが善玉菌となっており、代表的なものが乳酸菌やビフィズス菌と呼ばれるものです。

乳酸菌やビフィズス菌は、便秘予防やビタミン産生などを促す効果が期待できます。また、腸のぜん動運動を促して便秘を予防する整腸作用もございます。

さらに、体内でのビタミン産生に関わったり消化吸収の促進、免疫機能の調整にも関係しているため、感染症や炎症を抑制することがわかっています。

 

Q:1日に必要な乳酸菌の量はどのくらいになりますか?

1日約100億個程度の摂取が必要です。

ちなみに市販の乳製品乳酸菌飲料は無脂乳固形分を3%以上含み、乳酸菌または酵母の数が1mlあたり1000万個以上存在するものと規定されており、乳酸菌飲料は1ml当たり100万個以上とされています。

これらは1日だけでなく、毎日摂取する必要があります。

 

Q:乳酸菌とビフィズス菌の違いを教えてください

乳酸菌とビフィズス菌はどちらも善玉菌に該当する腸内細菌です。

乳酸菌は酵素がある環境でもない環境でも生息可能な菌で、特に小腸下部から大腸に存在しています。

一方でビフィズス菌は酸素のある環境が苦手な菌ですので、酸素濃度の低い大腸に存在しています。

また、腸の中で乳酸菌は乳酸を産生してビフィズス菌は乳酸と酢酸を産生するという違いもあります。

大腸内での菌数も乳酸菌は1億〜1000億個存在するのに対し、ビフィズス菌が約1兆〜100兆個とその数にも違いがあります。

 

乳酸菌の種類

Q:代表的な乳酸菌の種類を教えてください

代表的な乳酸菌 は、サーモフィルス菌、ラクトコッカス菌、アシドフィルス菌、カゼイ菌、ヘルベティカス菌です。

ひとつずつ詳しく説明していきます。

 

【サーモフィルス菌】

サーモフィルス菌は、粘質物を形成するので、ヨーグルトを作る際の硬さを出してくれたり、離水を防いでくれたりする効果があります。

通性嫌気性なので培養しやすく、風味やテクスチャーの良い発酵乳ができるのが特徴。

日本で市販されている乳製品の多くに使用されている乳酸菌のひとつです。

 

【ラクトコッカス菌】

ラクトコッカス菌は昔から乳製品を製造する過程で使用されている乳酸菌です。

主に凝乳作用をサポートするので、チーズやサワークリーム、バターなどを作る際に使用されることが多いです。

また、チーズの熟成過程においては、乳成分を分解してくれ、チーズ特有の匂いや風味をつけてくれる効果があります。

近年、ラクトコッカス菌には肌の水分量減少を抑制してくれる効果もあるという研究結果もあります。

 

【アシドフィルス菌】

アシドフィルス菌は、人の体内に元々存在する乳酸菌です。

熱や酸に強いという特性を持つので、直接腸内に働きかけることができます。

 

【カゼイ菌】

カゼイ菌は主に乳酸菌飲料に含まれる乳酸菌です。

善玉菌である乳酸菌を補ってくれ、腸内の悪玉菌を追い出してくれる効果が期待できます。

その結果、下痢や便秘を改善に導いてくれる効果を期待できます。

 

【ヘルベティカス菌】

ヘルべティカス菌はチーズの製造などに使われる乳酸菌です。

睡眠の質や生活の質を改善してくれたり、皮膚の水分量を増加させたりといった効果が期待できます。

 

乳酸菌を含む食品

Q:乳酸菌を含む代表的な食品を教えてください

穀物加工食品納豆、味噌、
魚類加工食品塩辛
野菜加工食品漬物(ぬか漬け)、キムチ
酪農加工品乳酸菌飲料、ヨーグルト、チーズ
酒類日本酒

 

代表的なものですと、納豆、味噌、塩辛、漬物(ぬか漬け)、キムチ、乳酸菌飲料、ヨーグルト、チーズ、日本酒となります。

 

【納豆】

本来納豆には乳酸菌を加えるという作業はなく、発酵時に空気中の乳酸菌が混ざることにより増殖します。

乳酸菌の量は納豆の製造方法によっても異なりますが、製造過程で乳酸菌を加えた「乳酸菌納豆」といったものであれば、1g中に数十億個の乳酸菌が含まれています。

 

【味噌】

味噌も納豆と同じで、乳酸菌を添加しなくても自然に含まれている食品です。

味噌も製造方法によって乳酸菌の量が異なりますが、日本人とっては積極的に摂りやすい食材のひとつではないでしょうか。

 

【漬物】

漬物にも発酵の段階で多くの乳酸菌を含んでいます。

中でも漬物には胃酸耐性があるだけでなく植物性乳酸菌(動物性乳酸菌に比べ様々な環境で生育しやすい菌)であるため腸まで生きた乳酸菌が届きます。

前述した味噌や納豆も植物性乳酸菌を含みます。

これらは作りたての段階で、1g中に100万個程度乳酸菌が含まれており、熟成することにより10億個以上に増えると言われています。

 

【乳酸菌飲料】

乳酸菌飲料は牛乳などを発酵させてから、甘味料や香料、果汁などを加えた飲み物で「乳製品乳酸菌飲料」と「乳酸菌飲料」があります。

 

乳製品乳酸菌飲料乳酸菌飲料
  • 牛乳から乳脂肪分と水分を除いた成分(無脂乳固形分)を3.0%以上
  • 乳酸菌数または酵母数が1000万/ml以上のもの
  • 無脂乳固形分が3.0%未満
  • 乳酸菌数または酵母数が100万/ml以上のもの

 

【ヨーグルト】

乳酸菌といえば、ヨーグルトが思い浮かぶ人も多いかと思います。

ヨーグルトの100gあたりに含まれる乳酸菌の数は約10億個です。

ヨーグルトは日本の場合、厚生労働省により乳酸菌の含有量の基準が定められています。

主にヨーグルトには、乳酸菌やビフィズス菌、ガセリ菌などが含まれます。

日々の食事の中に一品として取り入れやすいのもヨーグルトの魅力でしょう。

 

【チーズ】

チーズも、乳酸菌を多く含む代表的な食品です。

乳酸菌の含有量は1gに1000万個以上、つまり100g中に10億個になります。

ただし、チーズの製造方法によって含まれる乳酸菌数が変わるので注意が必要です。

発酵させることで作られる「ナチュラルチーズ」には乳酸菌が豊富に含まれます。

その一方で、生成中に加熱処理が入る「プロセスチーズ」では乳酸菌が死滅してしまいます。

乳酸菌をしっかりと摂りたい方は、「ナチュラルチーズ」を選ぶ方がよいでしょう

 

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Q:これらの乳酸菌を効率よく摂取するためにはどのようにすれば良いでしょうか?

胃酸が一番出ていない時間帯に摂取することがおすすめです。

朝昼晩であれば夕食時がもっとも胃酸が出ていないですし、食前と食後であれば食後の方が胃酸が出ていません。

乳酸菌の効果的な摂取方法としては、オリゴ糖や食物繊維と一緒に摂ることが推奨されています。

オリゴ糖や食物繊維というのは乳酸菌の栄養つまりエサとして活用される役割があるので、腸内で悪玉菌が発生しやすい状況を防いだり食物繊維自体は便秘を改善したりという効果が期待できます。

具体的には、野菜や果物、大豆製品、きのこや穀物を摂取するのが良いでしょう。

食べ物で吸収することが難しい場合は、サプリメントや医薬品、医薬部外品も適宜服用するのもおすすめです。

 

Q&A

Q:乳酸菌を摂り過ぎると副作用はありますか?

乳酸菌を摂りすぎることによっての副作用は少ないと思われます。

ただ、乳製品に含まれているものは善玉菌以外にも脂質や糖質などございますので、それらの過剰摂取によって高血圧や糖尿病のリスクが上がってしまうことがあります。

摂取時は、必要量を十分把握することをおすすめいたします。

 

Q:食材以外で乳酸菌を摂取したい場合、乳酸菌が配合されたサプリや整腸薬、胃腸薬を取り入れるのは有効ですか?

食べ物から善玉菌を摂取することが理想ですが、継続することは大変です。

会食や飲み会などが続く場合は、バランスのとれた食生活を維持することは難しいでしょう。

そのような時は乳酸菌が配合されたサプリや整腸薬、胃腸薬を取り入れることがおすすめです。

乳酸菌のような善玉菌配合のものと、食物繊維が配合されたものを上手に組み合わせて取り入れてみてください。

 

Q:乳酸菌配合のサプリや胃腸薬を選ぶ際のポイントを教えてください

善玉菌の一種である乳酸菌は、胃酸に弱く、生きたまま腸内に届けられないものがあります。

そのため、サプリや胃腸薬を選ぶ際は、生きたまま腸に届くかどうかというのがポイントです。

生きた乳酸菌が腸内に届くと、腸内で乳酸をつくって腸内環境を整えてくれます。

 

Q:乳酸菌を2種類以上同時に摂取しても大丈夫ですか?

乳酸菌を1種類ではなく、2種類以上同時に摂取しても問題はありません。

乳酸菌は、種類によって体内で活動する場所が異なり、効果も異なります。

そのため、さまざまな種類の乳酸菌を摂取すると良いでしょう。

乳酸菌は、体質によっても合う合わないがあり、効果も異なります。

さまざまな乳酸菌を摂取し、自分自身に合った乳酸菌を継続して摂取すると良いでしょう。

 

まとめ

今回は錦糸町皮膚科内科クリニックの田尻医師に乳酸菌の効果や種類、乳酸菌を含む食品について解説していただきました。

乳酸菌とひと言で言っても多くの種類があり、それぞれの菌で働きが異なります。

1日当たり100億個程度の乳酸菌を摂取することが必要とされていますので、食品や乳酸菌飲料から効率よく摂取しましょう。

食品などで乳酸菌を摂取するのが難しい場合は、乳酸菌が配合されたサプリメントや胃腸薬もおすすめです。