乳酸菌に整腸作用があることは広く知られていますが、他にもさまざまな健康効果が期待できることがわかってきています。
乳酸菌を健康維持に役立てるには、乳酸菌の特徴を把握して効果を発揮する摂り方をすることが大切です。
今回の記事では、乳酸菌の特徴や期待できる効果、乳酸菌を含む食品など、乳酸菌に関する情報を詳しく紹介します。
乳酸菌とは
乳酸菌は自然界のさまざまな場所に存在する細菌です。
英語では「lactic acid bacteria(lactic bacteria)」といいます。
乳酸菌とはどのようなものなのか、具体的な特徴からチェックしてみましょう。
乳酸を作り出す菌の総称
乳酸菌の定義は以下のように説明されています。
発酵によって糖から乳酸をつくる嫌気性の微生物の総称。腸内で悪玉菌の繁殖を抑え、腸内環境を整える。
発酵によって糖類から乳酸を作り出す性質を持つ微生物のことを指します。
乳酸菌は特定の細菌の名称ではなく、土の中や植物、動物の腸の中、海洋環境などあらゆるところに存在します。
私たち人間の腸の中に棲みついている乳酸菌もいます。
乳酸菌全体では、約400種類も存在すると考えられています。
乳酸菌は形態の違いによって、乳酸球菌(球状をした乳酸菌)や乳酸桿菌(棒状をした乳酸菌)といった分類がなされます。
乳酸菌は善玉菌の一種
腸内には細菌がおよそ1000種類、100兆個も生息していることが知られています。
出典:腸内細菌と健康 | e-ヘルスネット(厚生労働省)清水 純
腸内細菌はその役割によって「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌(ひよりみきん)」の3種類に分けられ、乳酸菌は善玉菌の一種です。
【善玉菌】
- 悪玉菌の繁殖を抑える
- 腸の働きを促す
主な菌種:乳酸菌(フェーカリス菌・アシドフィルス菌)、ビフィズス菌など |
【悪玉菌】
- 腸内のタンパク質を腐敗させる
- 有害物質を作り出し、増殖すると腸内環境を悪化させる
主な菌種:ウェルシュ菌、黄色ブドウ球菌など |
【日和見菌】
- 腸内のバランスがよい状態では無害。悪玉菌が増えると悪玉菌に加勢する
主な菌種:バクテロイデス、連鎖球菌など |
腸内細菌はそれぞれの菌種ごとにまとまって腸の壁に生息しています。
その様子は「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼ばれ、善玉菌より悪玉菌が優勢な状態になるとさまざまな不調が起きやすくなります。
腸内フローラのバランスは、加齢や食事などの影響で変化します。
善玉菌を増やすような生活習慣を意識して、腸内環境を整えることが大切です。
善玉菌の代表「乳酸菌」に期待できる効果
善玉菌の代表である乳酸菌には多様な種類があり、摂取することで乳酸菌それぞれが持つ健康的な効果が期待できます。
乳酸菌の機能性を見ていきましょう。
腸内環境を整える
乳酸菌は糖を分解して乳酸を作り、腸内を弱酸性に保つ働きがあります。
腸内が酸性になり悪玉菌が増殖しにくくなるのも、乳酸菌による整腸作用の一つです。
腸内環境が整うと、便秘や下痢の予防・改善、肌荒れやニキビを防ぐ美容効果などが期待できます。
免疫のバランスを整える
私たちの体は、外部から侵入するウイルスや病原菌から守る免疫機能を持っており、腸内には約70%の免疫細胞が集まっています。
悪玉菌が増えて腸内フローラのバランスが崩れると、免疫の働きが低下して感染症などを引き起こすリスクが高まります。
乳酸菌のバランスは、腸内環境を整えて免疫細胞の働きを活性化させるためにも非常に重要なのです。
コレステロール値を下げる
コレステロールは、細胞膜やホルモン、胆汁酸を作るために必要な脂質です。
食事から摂取したり肝臓などで合成されたりしたものが血液中を流れています。
コレステロール値が高いと、血流が悪くなって動脈硬化を引き起こし、血管が詰まると心筋梗塞、脳梗塞などの原因になります。
一部の乳酸菌にはコレステロール値を低下させる働きが期待できるものもあるので、コレステロール値が気になる方にもおすすめです。
花粉アレルギーの改善
花粉症は、体内に入ってきた花粉に対する免疫反応が過剰になり、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみなどのアレルギー症状が起きている状態です。
乳酸菌で花粉症の症状が改善したという研究結果も複数報告されています。
死滅した乳酸菌は効果なし?
乳酸菌には、生きた乳酸菌(生菌)と死滅した乳酸菌(死菌)があります。
生きて腸まで届いた乳酸菌の多くは、腸内環境のバランスを整える整腸作用を有します。
一方、腸に届く前に死滅してしまった乳酸菌であっても、善玉菌が退治した悪玉菌を吸着し、体の外へ出すといった働きが報告されています。
さらに、死菌として摂取した乳酸菌の一部については、生きた乳酸菌や常在する腸内細菌といった善玉菌のエサになったり、免疫機能を調整したりする役割が注目されています。
つまり、死菌として摂取した乳酸菌にも、腸内フローラのバランス改善や免疫機能のバランス改善といったプラスの効果が期待できるのです。
仮に酸に強いとされている乳酸菌であっても、整腸作用の効果を最大限に生かすためには、胃の中のpHが中性付近まで上がる、食後に摂取することが推奨されています。
一方、死菌は胃酸や腸液の影響をほとんど受けないので、生菌よりも効果が安定しているという特徴もあります。
乳酸菌は毎日摂ることが大切
生きた乳酸菌は腸内をゆっくり通過しながら、乳酸を産生して腸内環境を整えます。
そのため、乳酸菌を摂取したからといってすぐに腸内環境が変わるわけではなく、日々の習慣として摂取して、乳酸菌を腸に送り込み続けることが大切です。
人によって腸内細菌の数や種類は異なるので、腸内環境に合う乳酸菌の種類も違います。
乳酸菌を摂取するときは2週間程度継続してみて、体調や便の状態が好転したかなどを判断基準に、自分に合うかチェックしてみましょう。
いろいろな乳酸菌を組み合わせて摂取するのもおすすめです。
善玉菌を増やす!乳酸菌がとれる食品
腸内環境を整えるなら、善玉菌を含む食品を摂取するのがおすすめです。
善玉菌を含む食品を摂取すると、腸内の善玉菌を増やすことにつながります。
善玉菌のひとつである乳酸菌が摂れるのは発酵食品です。
ここでは、乳酸菌が摂れる代表的な発酵食品と、手軽に摂取する方法、さらに摂取する際の注意点を紹介します。
ヨーグルト
ヨーグルトは発酵乳とも呼ばれ、乳酸菌が原料乳の中にある糖を分解して乳酸を作る「乳酸発酵」によってできる発酵食品です。
乳酸菌にはヨーグルトを酸性にして、腐敗菌や病原菌の増殖を防ぎ、保存性を高める働きがあります。
ヨーグルトのさっぱりとした酸味も乳酸菌によるものです。
商品によって乳酸菌の種類は異なり、ブルガリア菌、サーモフィルス菌、ガセリ菌などの乳酸菌を摂ることができます。
チーズ
チーズにはナチュラルチーズとプロセスチーズがありますが、ナチュラルチーズは加熱していないので生きたままの乳酸菌を摂取できます。
プロセスチーズはナチュラルチーズを加熱して溶かし固めたものなので、生きた乳酸菌はいません。
生きた乳酸菌を摂るためには、ナチュラルチーズを選びましょう。
ぬか漬け
ぬか床は米ぬかに塩と水を混ぜて乳酸発酵させたもので、さまざまな植物性乳酸菌が含まれています。
ぬかはビタミンB1やカリウムなど栄養が豊富で、漬けた野菜を食べることで乳酸菌や様々な栄養成分が摂取できます。
野菜に付着している乳酸菌によって作られる発酵漬物(しば漬け・すんき漬け・野沢菜漬け・千枚漬け・ザワークラウトなど)でも、乳酸菌は摂取可能です。
キムチ
キムチも発酵漬物のひとつで、乳酸菌がたくさん含まれています。
生きたまま乳酸菌を摂りたいときは、加熱せずにそのまま食べるのがおすすめです。
ただし、市販されているキムチには、調味液に漬けただけで発酵させず製造されたものもあります。
キムチを買う際は「乳酸発酵」「熟成発酵」「発酵キムチ」などの記載があるものを選ぶと多くの乳酸菌を摂取できます。
乳酸菌飲料
乳酸菌を摂取したいときは、乳酸菌飲料を活用しましょう。
乳酸菌飲料はさまざまな飲料メーカーから販売されており、含まれている乳酸菌の種類や数はそれぞれ違います。
選ぶ際のポイントは、
- 自分に合う乳酸菌が含まれている
- 好みの味で飲みやすい
- 続けやすい価格
などです。
なお、乳酸菌飲料は以下の2種類に分けられます。
- 乳製品乳酸菌飲料:無脂乳固形分3.0%以上/乳酸菌数or酵母数1,000万/mL以上
- 乳酸菌飲料:無脂乳固形分が3.0%未満/乳酸菌数or酵母数が100万/mL以上
※食品衛生法にもとづく「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」より
継続的に飲める商品を選んで、効率よく乳酸菌を摂取しましょう。
乳酸菌の摂り過ぎは体に悪い?
乳酸菌は摂取量の上限に明確な決まりがなく、もともと人の腸内に生息していることから、乳酸菌の摂り過ぎによる体への悪影響はないといわれています。
しかし、一度に大量摂取すれば効果が高まるというわけでもありません。
乳酸菌で腸内環境を整えるには、毎日欠かさずに摂取して、継続的に腸内に届けることが大切です。
乳酸菌飲料を飲むとお腹がゴロゴロするのは、腸の働きの活性化によるものとも考えられます。
ですが、漬物やチーズなど乳酸菌が摂取できる食品や乳酸菌ドリンクの摂り過ぎは、それぞれが含む塩分や脂質、糖質の過剰摂取につながり、体に悪影響を与えるので避けましょう。
以上のことに気をつけて、栄養バランスのとれた食事を意識しながら効果的な腸活を心がけましょう。
ビフィズス菌と乳酸菌の違い
腸内環境を整える善玉菌として「ビフィズス菌」も有名です。
ビフィズス菌と乳酸菌にはどのような違いがあるのかチェックしてみましょう。
ビフィズス菌は大腸、乳酸菌は小腸の善玉菌
ビフィズス菌はB. longumなど30種類以上あり、ヒトの腸内には10種類程度いるといわれています。
ビフィズス菌と乳酸菌はどちらも腸内にいる善玉菌ですが、ビフィズス菌は主に大腸、乳酸菌は主に小腸に存在します。
大腸にいる善玉菌の約99.9%がビフィズス菌なので、大腸の調子を整えるにはビフィズス菌が欠かせません。
そのため、小腸・大腸それぞれの場所で活躍する乳酸菌とビフィズス菌を両方摂取するのがおすすめです。
ビフィズス菌は酢酸も作り出す
乳酸菌は乳酸を作りますが、ビフィズス菌は乳酸と酢酸を作り出します。
酢酸は強い殺菌力で、悪玉菌の増殖を抑えます。
そのため、ビフィズス菌がいると、より腸内環境が整う効果が期待できます。
ビフィズス菌を含む食品は少ない
ビフィズス菌は、主に動物やヒトの腸内にいます。
乳酸菌を含む食品は多いですが、それに比較するとビフィズス菌を含む食品は少ないです。
ヨーグルトだとビフィズス菌入りの商品もあるので、表示を確認して選びましょう。
乳酸菌・ビフィズス菌の働きをサポートする食べ物
一緒に摂ると、乳酸菌・ビフィズス菌の作用を活性化させる食べ物があります。
乳酸菌・ビフィズス菌の働きをサポートする食べ物をチェックしてみましょう。
オリゴ糖を多く含む食べ物
オリゴ糖は、消化酵素で分解されることはほとんどなく、消化吸収されずに大腸に届きます。
善玉菌はオリゴ糖をエサにして増えるので、乳酸菌やビフィズス菌を含む食品、サプリと一緒にオリゴ糖を含む食品も摂取してみましょう。
食物繊維を多く含む食べ物
食物繊維は腸内で分解されて、善玉菌のエサになります。
腸内の悪玉菌や有害物質を減らす作用もあるため、一緒に摂取してみましょう。
さらに食物繊維には便を柔らかくしたり、水分や老廃物を吸着し便の量を増やしたりすることで腸の運動を整え、お通じを良くする効果も期待できます。
また、納豆は食物繊維が豊富な上に、納豆菌の他に乳酸菌も含まれています。
納豆菌自体も善玉菌なので、特に腸内への良い影響が期待できます。
積極的に摂取するのがおすすめです。
ほかにもある!腸内細菌を整える善玉菌
腸内細菌を整える善玉菌には、乳酸菌やビフィズス菌の他にもさまざまな種類があります。
代表的な善玉菌として、麹菌、酵母菌、酢酸菌の特徴を紹介します。
【麹菌】
甘酒や味噌などに含まれている麹菌は、必須アミノ酸やビタミンB群を多く含んでいます。
腸内環境の改善効果のほか、血行促進、代謝アップ効果が期待できます。
【酵母菌】
酵母菌はパンや味噌、ビールなどを作るときに使われる細菌で、糖質をアルコールと炭酸ガスに分解する働きがあります。
腸内環境の改善、免疫力アップのほか、疲労回復や糖質の吸収を抑える効果が期待できます。
【酢酸菌】
酢酸菌はアルコールからお酢の成分である酢酸を作る菌です。
酢酸菌の中には便秘解消や食欲増進の他、アレルギーの改善などの効果があるといわれているものもあります。
健康維持のために、これらの善玉菌が含まれる発酵食品やサプリなども活用してみましょう。
乳酸菌は食品以外からでも摂れる!
乳酸菌は食品以外からでも摂取できます。
たとえば、ドラッグストアや薬局で販売されている胃腸薬や整腸薬、乳酸菌サプリなどにも乳酸菌は配合されています。
ただし、一口に乳酸菌配合といっても、複数の乳酸菌を配合した製品や食物繊維も摂れる乳酸菌培養末を配合した製品、乳酸菌のほかにビタミン、ミネラルを含む製品など実に様々です。
乳酸菌には腸内環境を整える作用がありますが、そのメリットをできる限り得るためには、生きた乳酸菌を腸まで届けることが大切です。
そのため、胃酸や胆汁酸などの酸に強い乳酸菌を取り入れる必要があります。
生きた乳酸菌が米や麦の胚芽に直接植え付けられて培養された「乳酸菌培養末」なら、胚芽に含まれる食物繊維も一緒に摂取できます。
食物繊維は便の量を増やし、腸内環境を整える効果が期待できます。
乳酸菌と食物繊維を一緒に摂取することで、より腸内環境が改善することが期待できます。
まとめ
乳酸菌は、私たちにさまざまなメリットをもたらす善玉菌です。
特に腸内環境を整えるには、乳酸菌が欠かせません。
毎日摂り入れてこそ、その効果が期待できるので、食品やサプリを通して摂取していきましょう。
食品やサプリで、腸内フローラの改善による免疫機能の調節といったプラスの効果に満足できないときは、「乳酸菌培養末」を含むような整腸剤を試すことも一つの方法です。
また、腸を整えるには、乳酸菌を摂るだけでなく、腸に繋がる胃の調子や、胃腸の機能を維持する栄養のバランスを整えることも大切です。
そのような胃の働きの改善や栄養効能を持つ、一種の善玉菌として扱われる菌も存在します。
腸の不調は我慢せず、乳酸菌をはじめとした善玉菌の力を借りましょう。