消化不良は、胃もたれや胃のむかつき、吐き気といった胃の不調を引き起こします。
軽度であれば日常的なケアで対処できる場合もありますが、なかには病気が関わっている可能性もあります。
この記事では、消化不良の特徴や症状、原因、改善方法、病院で受診するべき症状、予防法について詳しく解説します。
消化不良とは?消化不良の症状
消化不良とは、胃腸の働きの低下によりさまざまな不快な症状が現れる状態のことです。
<消化不良の主な症状>
- 上腹部の痛みや不快感
- 胃もたれ
- 胃のむかつき
- 膨満感
- 食欲不振
- 吐き気
- 便秘
- 下痢
- 鼓腸(腸にガスがたまった状態)
- ゲップ
消化不良の多くは一時的なものであり、時間とともに改善することがほとんどです。
しかし、繰り返し消化不良を引き起こす場合や、発汗や息切れなどを伴う場合は、重大な病気が隠れている可能性があるので注意が必要です。
消化不良になるのはなぜ?3つの原因を解説!
消化不良が起こる主な原因は、食べ過ぎ、体調不良(過労やストレス)、病気や疾患です。
それぞれ詳しく確認してみましょう。
食べ過ぎ
食べ過ぎにより胃の許容量を超えてしまうと、消化が追いつかなくなり消化不良が起こることがあります。
とくに、以下のような食べ物の摂りすぎは胃酸や消化酵素の分泌を乱すため、消化不良につながりやすくなります。
- 脂肪の多い食べ物
- 香辛料や刺激物の多い食べ物
- アルコールや炭酸飲料
また、早食いは噛む回数が少ないことから消化に時間がかかり、胃に負担をかけます。
その結果、消化不良を引き起こしやすくなります。
体調不良(過労・ストレス)
体調不良により、胃腸の働き(ぜんどう運動)が弱まったり、胃酸や消化酵素などの消化液が不足したりすると、食べたものがうまく消化できないため、消化不良を起こしやすくなります。
また、過労やストレスによって自律神経が乱れることも消化不良の原因です。
胃の働きは自律神経によってコントロールされています。
自律神経とは、心臓や呼吸、消化器などの働きを調整する神経です。
過労やストレスにより自律神経が乱れると、胃のぜんどう運動が低下し、食べ物が十分に消化されず、消化不良を起こすことがあります。
とくに夏場は、暑い屋外とクーラーの効いた屋内との寒暖差の影響で自律神経が乱れやすくなります。
また、夏は冷たい飲食物を摂取する機会が多くなりがちです。
冷たいものを食べ過ぎると、胃腸が冷えて胃の働きが低下し、消化不良を招く場合もあります。
病気や疾患
消化不良が病気や疾患の症状として現れている場合もあります。
消化不良を引き起こす病気は以下の通りです。
【胃食道逆流症】
胃食道逆流症は、胃と食道の境目にある下部食道括約筋が緩むのが原因とされています。
加齢による筋力低下や肥満、妊娠、姿勢の悪さ、衣服の締め付けなどから引き起こされることがあります。
また、脂肪の多い食事の過剰摂取やアルコールの過剰摂取、喫煙習慣、暴飲暴食、早食い、ストレス過多といった生活習慣が発症リスクを高めるといわれています。
胃食道逆流症の主な症状は以下の通りです。
<胃食道逆流症の主な症状>
胸焼け・吐き気・胸痛・酸っぱいものが上がってくる感じ(呑酸)・喉の痛みや違和感、つまり感・飲み込みにくさ咳・声のかすれ・下痢など |
【胃炎】
胃炎は胃の粘膜に炎症が起きている状態で、急性胃炎と慢性胃炎があります。
急性胃炎は食べ過ぎや飲み過ぎ、ストレス過多、喫煙習慣、薬の副作用など、慢性胃炎はピロリ菌感染が主な原因とされています。
ピロリ菌感染による慢性胃炎の場合、放置すると胃・十二指腸潰瘍や胃がんを引き起こすことがあるので注意が必要です。
胃炎は無症状の場合もありますが、発症すると以下のような症状が現れます。
<急性胃炎の主な症状>
胃痛・みぞおちのあたりの痛み・胸焼け・胃の不快感・膨満感・お腹の不快感・嘔吐・吐血・下血など |
<慢性胃炎の主な原因>
胸焼け・吐き気・胃痛・胃もたれ・胃のむかつき・胃の不快感・食欲不振・お腹の張りなど |
【食道アカラシア】
食道のぜん動運動が失われ、下部食道括約筋の機能に障害が起きることで飲食物が通過しにくくなる病気です。
食道アカラシアは30〜50代で発症することの多い病気ですが、明確な原因はわかっていません。
食道アカラシアの主な症状は以下の通りです。
<食道アカラシアの主な症状>
胸焼け・飲み込みにくさ(嚥下障害)・食後の胸のつかえ感や痛み・吐き気・嘔吐・胸や背中の痛み・体重減少など |
【吸収不良症候群】
胃、小腸、大腸、膵臓、肝臓、胆道など食べ物の消化吸収に関わる臓器に異常が起こり、小腸で栄養素が十分に吸収されなくなる病気です。
消化や栄養素の吸収を妨げる病気や感染症、手術による臓器の切除などが主な原因となります。
吸収不良症候群は自覚症状が少ない場合がありますが、栄養不足により、以下のような症状が現れることがあります。
<吸収不良症候群の主な症状>
胸焼け・食欲不振・体重減少・倦怠感・貧血・むくみ・口角炎・慢性下痢・腹部膨満感・鼓腸など |
【機能性ディスペプシア】
検査で明らかな異常がないのに、慢性的なみぞおちあたりの痛みや胃もたれといった症状が現れる病気です。
機能性ディスペプシアの明確な原因はわかっていませんが、胃・十二指腸の運動異常や知覚過敏、胃酸による刺激、心理的なストレス、遺伝、生活習慣の乱れなどが関わっていると考えられています。
機能性ディスペプシアでは、以下のような症状が現れることがあります。
<機能性ディスペプシアの主な症状>
みぞおち辺りの痛みや灼熱感・食後の胃もたれ・胸焼け・吐き気・ゲップ・早期飽満感(少し食べただけでお腹が一杯になったと感じる)など |
【胃がん】
胃の内側にある粘膜に発生するがんです。
主な原因は、喫煙習慣、塩分の過剰摂取、アルコールの過剰摂取、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)などといわれています。
胃がんでは以下のような症状が現れます。
<胃がんの主な症状>
胃の不快感・食後の膨満感・食欲低下・胸焼け・血便・嘔吐・胃痛・体重減少・飲み込みにくさ(嚥下困難)・黄疸など |
【食道がん】
食道の内側の粘膜に発生するがんです。
主な原因はアルコールの過剰摂取や喫煙習慣と考えられており、熱い飲食物や逆流性食道炎による刺激も発症リスクを高めると考えられています。
食道がんは初期には自覚症状がないことが多く、進行すると以下のような症状が現れます。
<食道がんの主な症状>
胸焼け・胃の違和感・食欲不振・食事のつかえ感・飲み込みにくさ・咳・声のかすれ・胸や背中の痛み・体重減少など |
消化不良が続いたり繰り返したりするときは、病気・疾患の可能性が高いです。
思い当たる症状がある人は、早めに病院を受診しましょう。
消化不良になったときの改善方法
ここでは、消化不良になったときの対処法、改善方法について解説します。
胃を休ませる
消化不良になったときは、胃を休ませるのが効果的です。
胃で食べ物が消化される時間は平均2〜3時間で、脂肪分の多いものだと4〜5時間程度かかるといわれています。
常に食べ物が胃にある状態だと、消化活動に追われて胃は休む間がありません。
食べすぎが原因で消化不良になっているときは、12時間〜16時間食事をせずに胃を休ませると胃の働きが回復します。
断食12時間と聞くと長く感じますが、睡眠時間を活用すると無理なく実践することができます。
胃に優しい食事をとる
胃の調子が悪いときは、アルコールや脂肪分の多いもの、香辛料などの刺激の強いもの、冷たいものといった胃に負担をかける飲食物は控え、胃に優しい食事をとるようにしましょう。
胃に優しい食品 | 胃に優しくない食品 | |
主食 |
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主菜 |
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副菜 |
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果物 |
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その他 |
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また、温かいものや加熱してやわらかくしたものは消化しやすいので、胃の調子が悪いときは調理方法も工夫してみるとよいでしょう。
胃腸の調子を整えるツボを押す
胃の不調を整えたいときは、胃腸の調子を整えるツボを押すのも効果的です。
胃腸の調子を整えるツボには、以下のようなものがあります。
【太白(たいはく)】
足の親指の付け根の出っ張った骨の下にあります。
消化吸収の働きを促す働きがあり、胃もたれ、食欲不振、下痢、嘔吐、腹部膨満感など消化器症状によく効くといわれています。
【梁丘(りょうきゅう)】
ひざの皿の外側にある骨の出っ張った部分から、指3本分上の位置にあります。
胃痛、胃もたれ、下痢といった症状に効くといわれています。
【中脘(ちゅうかん)】
お腹のみぞおちとおへそを結んだ線の中間点にあるツボです。
食欲不振、胃痛、吐き気、食あたりなど、さまざまな胃腸の不調に効くといわれています。
また、夏バテや肩こり、むくみ、めまいといった身体の不調への効果も期待できます。
【労宮(ろうきゅう)】
手のひらにあるツボで、人差し指と中指の間から指1本分程度下がったところにあります。
自律神経の乱れを整える効果があるといわれており、食欲不振や吐き気など胃腸の不調への効果が期待できます。
他にも、精神的な疲れや手のほてり、胸のつかえ、動悸、吐き気、肩こりなどがあるときにも効果的です。
【足三里(あしさんり)】
膝の皿の下の外側のくぼみから指4本分下にあります。
腹痛や下痢、嘔吐など胃腸の調子を整えるほか、足の疲れや歯の痛みなどにも効果があるといわれています。
ツボは左右にあるので、気持ち良いと感じる程度の力で押しましょう。
押すときは「15秒押して10秒離す」を10回繰り返すとよいでしょう。
消化を助ける胃腸薬を服用する
食べ過ぎや体調不良による消化不良は、時間の経過とともに解消することがほとんどですが、早く治したい時には胃腸薬を使用することもひとつの方法です。
胃腸薬には主に下記の種類があります。
成分 | 効能 |
消化酵素 | 食べ物の消化を助ける |
胃粘膜修復成分 | 胃粘膜を修復する |
制酸成分 | 出すぎてしまった胃酸を中和する |
鎮痛鎮痙成分 | 自律神経の乱れによる胃痙攣を抑える |
食べ過ぎにより消化不良の症状がある場合には、消化を助ける働きがある『消化酵素』が入った胃腸薬がおすすめです。
また、食べ過ぎてないのによく消化不良を起こす方は栄養が十分に行きわたっていない可能性があるので、栄養補給もできる胃腸薬を選ぶと良いでしょう。
病院を受診する
消化不良を引き起こしている原因が病気の場合、日常的なケアでは改善することは難しいです。
以下のような症状があるときは、早めに病院を受診しましょう。
- 消化不良が長期的に続いている
- 消化不良を繰り返している
- 腹痛や下痢が長期的に続いている
- 消化不良の発生に伴い、息切れや発汗、心拍数の増加がある
- 吐き気、嘔吐がある
- 食欲がない、適切な量が食べられない
- 体重が減少している
- 血便が出ている
- 飲み込みづらさや飲み込むときに痛みを感じる
消化不良に陥らないための対策・予防法
食べ過ぎや体調不良による消化不良を防ぐには、日頃の生活で対策をとることが重要です。
ここでは、消化不良に陥らないための対策・予防法を解説します。
食べ過ぎ・飲み過ぎを控える
暴飲暴食は胃に負担をかけるため、食べ過ぎ・飲み過ぎを控えることが消化不良の予防につながります。
早食いの人は満腹感を感じる前に多くの食べ物を摂取しやすいため、よく噛んでゆっくりと食べるようにすると食べ過ぎを抑えることができます。
また、強いストレスにさらされている人は、やけ食いをしたりアルコールを飲み過ぎたりしてしまうことが少なくありません。
日頃からストレスを減らすように心がけると、暴飲暴食を抑えやすくなるでしょう。
<おすすめのストレス解消方法>
- 睡眠をしっかりとる
- 適度な運動をする
- 家族や友人に話を聞いてもらう
- 頭のもやもやを紙に書き出す
- 趣味に没頭する
空腹でアルコールを摂取しない
空腹状態のときにアルコールを摂取すると、胃の粘膜にダメージを与えて胃の働きを低下させてしまいます。
とくに、冷たいものは胃の働きを悪くするため、お腹が空いているときに冷たいビールなどを飲むのは避けましょう。
アルコールを飲む前にタンパク質や脂質を含んだ食べ物を食べると、アルコールと胃の粘膜の接触が緩和され、胃腸障害を予防することができます。
食後に休息をとる
胃腸で食べ物を消化するには大量の血液が必要です。
食後すぐに体を動かしたり、入浴したりすると、血液が分散して消化不良を起こしやすくなります。
食後30分〜1時間はソファや椅子に座りゆっくりと休むようにすると、消化不良の予防につながります。
ただし、眠ってしまうと胃腸の働きが低下してしまうので注意しましょう。
生活リズムを整える(疲れを溜めない)
心身の疲れや、不規則な生活リズムにより自律神経が乱れると、胃腸の働きが悪くなって消化不良を招きやすくなります。
生活リズムを整えるには、以下の3つのポイントを押さえましょう。
<規則正しい睡眠をとる>
睡眠の質は、自律神経に影響を与えます。
できるだけ決まった時間に就寝し、決まった時間に起床するようにしましょう。
朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びると自律神経が整いやすくなります。
また、就寝前は部屋を暗くしてリラックスできる環境を整えることも大切です。
<適度な運動をする>
軽い運動は、自律神経を整え、疲労回復を促す効果があります。
ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で行うようにしましょう。
<ストレスを溜めない>
疲れやストレスは、自律神経の乱れにつながります。
趣味や好きなことをして気分転換をしたり、適度に休息をとったりして、ストレスを溜めないようにしましょう。
まとめ
消化不良は胃の働きの低下により、食欲不振や吐き気、胃もたれなど、さまざまな症状が現れることがあります。
消化不良の症状を改善したいときは、胃に不調が起きている原因を把握して、自分にあった方法で対策をとってみましょう。
ただし、消化不良は深刻な病気が関わっている場合もあります。
対策をとっても胃の調子が戻らない・他にも症状がある場合は早めに病院を受診することが大切です。