食あたりの可能性があるものを食べたときやすでに食あたりの症状が出ているとき、いつからいつまで症状が続くのか把握したいという人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、食あたりと食中毒の違い、食あたりの原因別の主な症状・発症までの期間・治るまでの期間、病院に行くべき症状、自宅での対処法を詳しく解説します。
食あたりとは?食中毒との違いも解説
食あたりは、細菌やウイルスなどの有毒な物質などを摂取することで、下痢や吐き気、発熱などの症状が現れることを言います。
「食あたり」と似た言葉に「食中毒」がありますが、どちらも同じ意味で使われることが多いです。
「食あたり」は一般人向けの用語であり、「食中毒」は医学用語として使われています。
食あたり(食中毒)が起きる原因は大きく「細菌性」「ウイルス性」「自然毒」「化学毒」「寄生虫」に分けられ、原因ごとに潜伏期間や症状も異なります。
参考:農林水産省Webサイト
【原因別】食あたりの症状と治るまでの期間
食あたりの原因別に、主な症状と発症までの期間・治るまでの期間の目安を紹介します。
食あたりの原因となる物質の摂取量や基礎疾患の有無などによっても上記の期間は異なってきますので、参考程度に参照いただければと思います。
【細菌性の食あたり】下痢・腹痛・発熱・呼吸困難など
細菌性の食あたりは、食べ物や飲み物を口にすることで起こる、下痢や軟便などの中毒症の総称です。
細菌性の食あたりは大きく分けると、食べ物や飲みものと一緒に摂取した細菌が腸管内で増えて発症する「感染型」と食べ物や飲み物の中で増殖した細菌や細菌の毒素を摂取することで起こる「食物内毒素型」、原因菌が食品中に増殖するのではなく、腸管内で増殖するときに毒素を産生し、その毒素が原因となり発症する「生体内毒素型」の3つに分けられます。
感染型 | 食物内毒素型 | 生体内毒素型 |
【代表的な細菌の種類】
| 【代表的な細菌の種類】
| 【代表的な細菌の種類】
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高温多湿の環境は食あたりの原因となる細菌が育ちやすくなるため、梅雨や夏に多く発生します。
細菌性の食あたりの主な症状は下痢・腹痛・発熱・嘔吐などで、呼吸困難を引き起こす場合もあります。
ここでは、細菌性の食あたりの原因となる代表的な細菌の特徴を5つ紹介します。
【カンピロバクター】
出典:農林水産省Webサイト
カンピロバクターは牛・豚・鶏などの腸内にいる細菌です。
生肉を食すときには必ず生食用の物を選択するようにしましょう。
また、加熱調理するときも、中まで十分火を通し、生肉を扱う箸と食べる箸を別々にするなど注意が必要です。
その他、井戸水や湧き水も動物の糞便で汚染されていることがあります。
安全性が確保されている水を飲むように心がけたり、飲む前に煮沸消毒をしたりする方法も効果的です。
主な症状 | 下痢・嘔吐・腹痛・発熱・筋肉痛・悪寒・血便など |
発症までの目安 | 平均2日~5日 |
治るまでの目安 | 平均3日〜6日程度 |
【腸管出血性大腸菌(O157、O111、O26など)】
出典:農林水産省Webサイト
牛の腸内にいる細菌で、牛肉の加熱不足や生のレバーやユッケを摂取することが原因となります。
他にも、カンピロバクター同様、動物の糞尿によって汚染された井戸水や汚染された農業用水、堆肥を介して育った野菜を摂取することも原因のひとつです。
また、腸管出血性大腸菌(O157、O111、O26など)の感染は食品のみならず、感染者の便に含まれる大腸菌を直接または間接的に摂取することによっても感染することがあります。
出典:厚生労働省webサイト
出典:農林水産省webサイト
【サルモネラ属菌】
出典:農林水産省Webサイト
サルモネラ属菌は自然界に広く生息する細菌で、鶏卵(加工品含む)・食肉(加工品含む)などが原因になりやすい食品となります。
動物の糞尿で汚染された水やサルモネラ属菌に感染した動物、人から人へと感染することもあります。
主な症状 | 下痢・嘔吐・発熱・腹痛など |
発症までの目安 | 平均6時間〜72時間 ※菌の種類によって異なります。 |
治るまでの目安 | 平均2〜7日程度 |
【黄色ブドウ球菌】
出典:農林水産省Webサイト
黄色ブドウ球菌はヒトがもつ常在菌の一種ですが、食品の中で増殖する際に産生する毒素(エンテロトキシン)を摂取することで中毒症状を起こします。
また、食品加工をする際、食品が作業者の手指や家畜の皮膚を介して黄色ブドウ球菌に汚染されるというケースもあります。
おにぎりやサンドイッチなど料理する人が食品を素手で触る必要があるものは特に注意が必要です。
さらに、食品が汚染されると、汚染食品を扱った包丁やまな板などの調理器具を介して食あたりを引き起こす場合もあります。
主な症状 | 吐き気・嘔吐・腹痛・下痢など |
発症までの目安 | 30分〜6時間(平均3時間) |
治るまでの目安 | 通常は24時間以内 |
出典:東京都福祉保健局
【ボツリヌス菌】
出典:農林水産省Webサイト
ボツリヌス菌による食あたりは、ボツリヌス菌が食品内で増殖する際に産生するボツリヌス毒素を摂取することで起こります。
ボツリヌス菌は酸素のない環境で増殖する性質があり、缶詰・瓶詰・真空パック食品などから感染する場合があります。
主な症状 | 吐き気・嘔吐・便秘・めまい・脱力感・筋力低下・視力障害・呼吸困難・言語障害など |
発症までの目安 | 平均12時間~36時間 |
感染時における注意 | 早期の診断と適正かつ速やかな治療を行われなければ、死亡する割合が高い。また、この疾患での患者の致死率は5%から10%である |
【ウイルス性の食あたり】下痢・発熱・嘔吐など
ウイルス性の食あたりは、ウイルスが寄生した食品や感染者を介して引き起こされます。
一般的な症状は下痢・発熱・嘔吐などで、ウイルスは気温が低く乾燥した環境で長く生きることから冬になると多く発生します。
食あたりの原因となるウイルスはロタウイルス・アデノウイルスなどがありますが、ノロウイルスによる食あたりがもっとも多いです。
【ノロウイルス】
出典:農林水産省Webサイト
ノロウイルスは牡蠣やはまぐりなどの二枚貝、感染者の糞便や嘔吐物、感染者が調理して汚染された食品などが感染源になります。
感染した人の腸管で増殖し、食あたりの症状を起こします。
主な症状 | 吐き気・嘔吐・下痢・腹痛・頭痛など |
発症までの目安 | 平均24時間〜48時間 |
治るまでの目安 | 平均1〜2日程度 |
【自然毒による食あたり】下痢・嘔吐・呼吸困難・幻覚など
自然毒による食あたりは、毒を持つ動物や植物を食べることで起こります。
自然毒による食あたりの一般的な症状は、下痢・嘔吐・呼吸困難・幻覚などです。
食あたりになる自然毒には、大きく分けて動物性自然毒と植物性自然毒があります。
【動物性自然毒】
天然の魚介類が主な原因食品です。
動物性自然毒による食あたりは、フグ毒が原因となるケースが多くあります。
動物性自然毒の主な種類 | 注意事項 |
フグ毒:フグ類 |
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麻痺性貝毒・下痢性貝毒:二枚貝(ホタテガイ・アサリなど) |
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シガテラ毒:ドクウツボ・オニカマスなど |
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過剰なビタミンA:イシナギ |
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胆のう毒:コイ類 |
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【植物性自然毒】
毒キノコや毒成分を含む植物が主な原因食品です。
知識不足や不注意から食用と間違えて食べてしまい、食あたりになるケースが多くあります。
植物性自然毒の主な種類 | 注意事項 |
きのこ毒:カエンダケ |
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きのこ毒:ツキヨタケ |
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きのこ毒:クサウラベニタケ |
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植物毒:じゃがいも |
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植物毒:トリカブト |
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植物毒:イヌサフラン |
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ここでは、自然毒の食あたりの原因となる代表的な魚類・植物・毒キノコの特徴を紹介します。
【フグ】
フグにはトラフグやマフグ、コモンフグ、ヒガンフグなどの種類があります。
肝臓・卵巣・皮などにフグ毒(テトロドトキシン)を持っており、少量の毒で食あたりの症状が現れて死に至る場合もあります。
釣ったり譲り受けたりしたフグを専門的な知識や技術がない人が調理して食べることで、食あたりを起こすケースが多いです。
主な症状 | 嘔吐・しびれ・麻痺・呼吸困難など ※重症の場合は死亡事例も |
発症までの目安 | 平均20分〜3時間程度 |
感染時における注意 |
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出典:東京都福祉保健局
【トリカブト】
トリカブトは、アコニチン・アコニンなどの毒成分を含む植物です。
平地や高山に生えており、食用のニリンソウやモミジガサなどと似ていることから誤食されるケースがあります。
主な症状 | しびれ・嘔吐・腹痛・下痢・血圧低下・不整脈・呼吸不全など |
発症までの目安 | 平均食後10~20分程度 |
感染時における注意 |
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出典:食品安全委員会
【ツキヨタケ】
ツキヨタケは夏〜秋にかけて発生するキノコで、イルジンS・ネオイルジンなどの毒成分を含んでいます。
ブナなどの枯れ木に重なるように生えるのが特徴で、食用のシイタケやムキタケ、ヒラタケなどと似ていることから誤食して食あたりになるケースが多いです。
主な症状 |
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発症までの目安 | 平均30分~1時間 |
治るまでの目安 | 平均1日〜10日程度 |
【化学毒による食あたり】嘔吐・下痢・呼吸困難・麻痺など
化学毒による食あたりは、化学物質に含まれた有毒成分が原因となっています。
化学毒の中毒症状で多くみられる原因物質は「ヒスタミン」です。
また、洗剤や消毒液、漂白剤などを間違えて食品に混ぜてしまい食あたりが起こるケースや食品添加物によって食あたりが起こるケース、農薬によって食あたりが起こるケース、魚介類に含まれる水銀によって食あたりが起こるケースも発生しています。
化学毒による食あたりの一般的な症状は、嘔吐・下痢・呼吸困難・麻痺などです。
【ヒスタミン】
ヒスタミンによる食あたりは、マグロ・カジキ・カツオ・サバ・アジなどの魚(加工品を含む)が主な原因食品です。
これらの食品を常温で放置したり温度管理を適切に行わなかったりすると、ヒスタミンが産生・蓄積されて食あたりの症状を起こすことがあります。
主な症状 | 顔面(とくに口のまわりや耳たぶ)の紅潮・舌や口唇のピリピリ感・発熱・頭痛・嘔吐・下痢・呼吸困難など |
発症までの目安 | 平均数分~1時間 |
治るまでの目安 | 平均6時間〜10時間程度(長い場合でも1日) |
出典:中野区ホームページ
【寄生虫による食あたり】嘔吐・下痢・腹膜炎症状など
魚介類や肉類、野菜や水などには、さまざまな寄生虫が寄生していることがあります。
それらの寄生虫がついた飲食物を摂取すると、嘔吐・下痢・腹膜炎などの症状が起こります。
食あたりの原因となる寄生虫は、魚介類に寄生するアニサキスやクドア、肉類に寄生するトキソプラズマ・サルコシスティスなどです。
とくに日本では、アニサキスでの食あたりがもっとも多く発生しています。
【アニサキス】
アニサキスは半透明白色・体長2〜4cm程度の太い糸状の寄生虫で、サバ・アジ・サンマ・サケ・イカなどの魚介類に寄生しています。
アニサキスは適切な加熱や冷凍をすることで死滅します。
しかし、寄生した魚介類を生や不十分な処理をした状態で食べると、胃壁や腸壁に刺さって食あたりの症状を引き起こします。
主な症状 | ■急性胃アニサキス症 みぞおちの激しい痛み、悪心、嘔吐 ■急性腸アニサキス症 激しい下腹部痛、腹膜炎症状 |
発症までの目安 | ■急性胃アニサキス症 食後数時間〜数十時間後 ■急性腸アニサキス症 食後十数時間〜数日後 |
治るまでの目安 | 平均1週間程度 |
このような症状があれば早めに病院へ
食あたりの症状によっては、早急に病院での検査や治療が必要になるケースもあります。
ここでは、早めに病院へ行くべき症状を紹介します。
水分が十分にとれない
食あたりによる症状で水分が十分に摂れない場合、脱水症を引き起こす可能性があります。
脱水症になると口の渇き・体のだるさ・立ちくらみなどの症状が起こります。
口からの水分補給が難しい場合は、点滴による水分補給が必要となるケースがあるので、早めに医師に相談しましょう。
激しい腹痛や熱、嘔吐を伴う下痢
下痢症状は、暴飲暴食や自律神経の乱れなどによって腸のはたらきが低下して起こるケースもあります。
しかし、激しい腹痛や熱、嘔吐を伴う下痢がある場合は、食あたりの可能性が高いです。
サルモネラ属菌やノロウイルスのような細菌やウイルスに感染していると、最悪の場合は死に至る可能性があるので早めに医師に相談しましょう。
意識が朦朧としている
意識が朦朧としている場合は、脱水症や意識障害を引き起こしている可能性があります。
意思疎通がとれない・動けないなどの症状があって危険な状態の場合は、「救急安心センター事業(♯7119)」への相談や救急車の要請が必要となります。
呼吸障害
食あたりの原因によって、重症化すると呼吸障害が起こることもあります。
細菌性の食あたりでは、ボツリヌス菌による食あたりは神経系に影響を与えて呼吸麻痺を起こします。
またヒスタミン、トリカブト、フグによる食あたりなども呼吸困難を引き起こす恐れがあり、非常に危険です。
早期の診断と治療を行わないと死亡率が高くなるので注意しましょう。
その他重篤な症状と思われるもの
毒キノコを食べたときには、幻覚や精神錯乱などの症状が起こることもあります。
食あたりの症状はさまざまなものがあるため、体調に異変を感じる・なかなか症状が改善されないという場合は早めに医師へ相談しましょう。
自宅でできる食あたりの対処法
軽い吐き気や下痢など軽症の場合は、休養をとることが大切です。
最後に、自宅でできる食あたりの対処法を紹介します。
食事は無理をしない
吐き気や下痢があるときは胃腸のはたらきが低下しているため、無理をして食事をしないようにしましょう。
症状が落ち着いてきたら、消化が良く栄養価の高い食べ物を少しずつ摂取しましょう。
おかゆ・野菜スープ・雑炊・煮込みうどん・バナナなど |
水分を摂る
吐き気や下痢などの症状があるときは、脱水症を防ぐためにこまめに水分補給をしましょう。
胃腸に刺激を与えないように冷たい飲み物は避けて、常温〜ぬるめの温度で摂取するのがポイントです。
吐き気がある場合は少量(スプーン一杯程度)の白湯から飲み、治ってきたら経口飲料水・スポーツドリンクなどで水分を補いましょう。
二次感染を防ぐ
ウイルス性の食あたりの可能性がある場合は、家族にうつさないように対処する必要があります。
【二次感染を防ぐ対処法】
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寝るときは横向きになる
吐き気や嘔吐がある場合、嘔吐物の誤嚥や窒息を防ぐため、横向きになるようにしましょう。
症状が続く場合は、クッションのようなもので、できるだけ症状が刺激されず安楽と感じる体位がとれるように工夫してください。
自己判断でむやみに下痢止め薬を飲まない
食あたりになったときは、原因となるものを排出することが大切です。
下痢止めを飲んでしまうと排出が進まずに回復が遅くなる可能性があります。
下痢が続いているときは医師に相談するようにして、自己判断でむやみに下痢止め薬を飲まないようにしましょう。
まとめ
食あたりは原因によって腹痛や下痢、嘔吐などの症状が現れやすく、しびれや呼吸困難など重篤な症状が起こる場合もあります。
紹介した食あたりの主な症状や発症までの期間、治るまでの期間はあくまでも目安になり、摂取した飲食物の量や現れている症状、処置によって異なります。
重篤な症状である場合や緊急性が高いと判断した場合は早めに医師に相談するようにしましょう。
また、軽い症状の場合は「自宅でできる食あたりの対処法」を実践することで回復に向かうケースもあります。その場合、下痢や嘔吐、腹痛などの症状が落ち着いたあと、腸内環境を整えてくれたり栄養補給効果のある胃腸薬を取り入れるのもひとつの方法ですので試してみてもいいかもしれません。
食あたりは日頃から意識することである程度予防が可能です。こまめに手を洗う、調理器具や食器は清潔な物を使う、食中毒が発生する可能性のある食材は正しい方法で保管、調理するなどできることから始めてみてはいかがでしょうか。