食物繊維は、整腸作用や便通改善の他、さまざまな生活習慣病の予防にも効果が期待できる優れた栄養素です。
しかし、現代の日本人の食生活は食物繊維の摂取量が減少傾向にあります。
この記事では、食物繊維が多く含まれる食品一覧、食物繊維の働きや種類、摂取目標量、賢く摂取するポイントについて詳しく紹介します。
身体の健康維持のために、ぜひ最後までご覧ください。
食物繊維が多く含まれる食品一覧
食物繊維は肉類や魚介類などの動物性食品よりも、野菜類・きのこ類・海藻類・穀類・豆類・種子類・果物といった植物性食品に多く含まれています。
食品群ごとに、食物繊維が多く含まれる食品を紹介します。
食物繊維が多く含まれる野菜類
※()内:可食部100g当たりの食物繊維総量
出典:日本食品標準成分表2020年版[八訂]
切り干し大根は生の大根よりも栄養価が高く、とくに不溶性食物繊維が多く摂取できます。
野菜類は食物繊維の他にもビタミンやミネラルなどの栄養素が摂取できるので、積極的に摂取するようにしましょう。
食物繊維が多く含まれるきのこ類
※()内:可食部100g当たりの食物繊維総量
出典:日本食品標準成分表2020年版[八訂]
きのこ類は不溶性食物繊維を多く含んでおり、低カロリーでビタミン・ミネラルが豊富です。
香りや旨味成分があるため、和え物や炒め物、汁ものなど、さまざまな料理にアレンジしやすいのが特徴です。
食物繊維が多く含まれる海藻類
※水溶性食物繊維と不溶性食物繊維は分別していない
出典:日本食品標準成分表2020年版[八訂]
海藻類は、食物繊維以外にも鉄やカルシウムなどのミネラルが多く含まれています。
ちなみにわかめは、生わかめよりも乾燥わかめの方が、栄養価が高いのでおすすめです。
味噌汁やサラダなどにも使いやすく、かつ保存がきくので、ぜひ毎日の食卓に取り入れてみてください。
食物繊維が多く含まれる穀類
※()内:可食部100g当たりの食物繊維総量
出典:日本食品標準成分表2020年版[八訂]
少し意外かもしれませんが、食物繊維はご飯やパン、麺などの穀類にも多く含まれています。とくに精製度の低い穀物に豊富に含まれているので、主食を工夫し、食物繊維をうまく摂取しましょう。
【食物繊維の含有量順】
- 米類: 精白米 < 胚芽精米 < 玄米 < 大麦
- パン類: 食パン < 全粒粉パン < ライ麦パン
食物繊維が多く含まれる豆類
※()内:可食部100g当たりの食物繊維総量
出典:日本食品標準成分表2020年版[八訂]
豆類は不溶性食物繊維が多く含まれています。
蒸し豆にすると栄養や旨味を損ないにくく、サラダやスープなどに加えるだけで手軽に食物繊維が摂取できるのでおすすめです。
食物繊維が多く含まれる種子類
※()内:可食部100g当たりの食物繊維総量
出典:日本食品標準成分表2020年版[八訂]
種子類は食物繊維だけでなく、たんぱく質やビタミン、ミネラル、不飽和脂肪酸などの栄養素も摂取できます。
栄養を補うために、料理のトッピングや間食に上手く取り入れましょう。
食物繊維が多く含まれる果物
※()内:可食部100g当たりの食物繊維総量
出典:日本食品標準成分表2020年版[八訂]
果物の中では、干しがきや干しいちじくなどのドライフルーツに食物繊維が多く含まれています。
手間がかからず手軽に食べられるので、食物繊維を摂取したいときはおやつにドライフルーツを選ぶのがおすすめです。
ただしドライフルーツは糖分が高いので、食べ過ぎには注意が必要です。
食物繊維とはそもそもなに?
ここからは、食物繊維の定義や種類、働きなどについて詳しく紹介します。
食物繊維の定義
食物繊維は「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義されています(出典:食物繊維 | e-ヘルスネット(厚生労働省))。
通常、口から摂取した食べものは消化管内の消化酵素によって分解され、主に小腸で栄養が吸収されますが、食物繊維は消化吸収されずに直接大腸まで届きます。
食物繊維は、体内には吸収されませんが、健康な身体を維持する重要な働きをしているので、第六の栄養素として注目されています。
食物繊維の種類と働き
食物繊維は、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分けられます。
それぞれの特徴・種類・働きを確認してみましょう。
【水溶性食物繊維】
特徴 | 水に溶けやすく、ゲル状になる |
種類 | ペクチン アルギン酸 グルコマンナン 難消化性デキストリン |
主な働き | 腸内細菌(善玉菌)のエサとなり、腸内環境を整える 糖質の吸収スピードを緩やかにして、食後の血糖値の急激な上昇を抑える コレステロールを吸着して体外に排出し、血中コレステロール値を低下させる ナトリウムを排出して高血圧を予防する |
多く含む食品 | 海藻類 果物類 |
【不溶性食物繊維】
特徴 | 水に溶けにくく、水分を吸収して膨らむ |
種類 | セルロース ヘミセルロース キチン リグニン |
主な働き | 腸内細菌(善玉菌)のエサとなり、腸内環境を整える 便の容積を増やし、大腸のぜん動運動を促して排便をスムーズにする 有害物質を吸着して体外に排出する |
多く含む食品 | 豆類 穀類 繊維のある野菜 |
水溶性食物繊維は、主に糖尿病・脂質異常症・高血圧・動脈硬化などの生活習慣病の予防、不溶性食物繊維は主に便秘解消や大腸がんのリスクを低下させる効果が期待できます。
また、どちらの食物繊維も腸内細菌である善玉菌のエサとなり、腸内環境の改善に役立ちます。
食物繊維が不足するとどうなる?
食物繊維が不足することで起こりうる主な症状は以下の通りです。
【便秘・下痢・身体の不調】
食物繊維が不足すると、腸内の悪玉菌が増殖し腸内環境が悪化します。
その結果、便秘や下痢などのお腹の不調の他、肌荒れや疲労感、イライラ、食欲低下など全身の不調が起こる可能性があります。
【肥満】
食物繊維の多い食品は、低カロリーな上に満腹感があるため、エネルギーの過剰摂取を防ぐ効果が期待できます。
そのため食物繊維が不足すると、肥満リスクが高まる可能性があります。
【生活習慣病】
食物繊維には、食後血糖値の上昇を抑える働きや、胆汁酸の分泌を促し、血中コレステロールの上昇を抑制する働きがあります。
食物繊維が不足すると、糖尿病や高血圧、動脈硬化などの生活習慣病のリスクが高まる可能性があるので注意が必要です。
食物繊維の1日の摂取基準
食物繊維の摂取基準は年代や性別によって異なります。
厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、1日あたりの食物繊維の摂取目標量は以下のように設定されています。
【1日あたりの食物繊維摂取目標量】
年齢 | 男性 | 女性 |
〜2歳 | – | – |
3〜5歳 | 8g以上 | 8g以上 |
6〜7歳 | 10g以上 | 10g以上 |
8〜9歳 | 11g以上 | 11g以上 |
10〜11歳 | 13g以上 | 13g以上 |
12〜14歳 | 17g以上 | 17g以上 |
15〜17歳 | 19g以上 | 18g以上 |
18〜29歳 | 21g以上 | 18g以上 |
30〜49歳 | 21g以上 | 18g以上 |
50〜64歳 | 21g以上 | 18g以上 |
65〜74歳 | 20g以上 | 17g以上 |
75歳以上 | 20g以上 | 17g以上 |
妊娠中の女性 | 18g以上 |
授乳中の女性 | 18g以上 |
成人の食物繊維の1日あたりの摂取量は、男性は21g以上、女性は18g以上が目安です。
しかし、現代の日本人は食生活が欧米化したことによって、食物繊維が豊富に含まれるお米や大麦などの穀類、豆類、イモ類などの摂取が減少し、食物繊維の摂取量が不足傾向にあります。
厚生労働省の令和元年国民健康・栄養調査報告によると、性別・年代別の1日の食物繊維の摂取は以下のような結果となっています。
【1日あたりの食物繊維摂取量(平均値)】
年齢 | 男性 | 女性 |
1〜6歳 | 11.5g | 10.6g |
7〜14歳 | 18.1g | 16.0g |
15〜19歳 | 20.0g | 17.0g |
20〜29歳 | 17.5g | 14.6g |
30〜39歳 | 18.3g | 15.9g |
40〜49歳 | 18.3g | 16.0g |
50〜59歳 | 19.4g | 16.8g |
60〜69歳 | 20.6g | 19.8g |
70〜79歳 | 21.9g | 20.5g |
80歳以上 | 20.3g | 18.0g |
妊娠中の女性 | 15.3g |
授乳中の女性 | 16.1g |
実際の摂取量を見ると、20代〜50代では男性・女性ともに食物繊維が不足していることがわかります。
食物繊維は、ファストフードやインスタント食品にはほとんど含まれないため、外食が多く自炊しない人は、どうしても食物繊維の摂取量が不足してしまいます。
ただし、食物繊維が含まれる食品を知り、賢く摂取する方法を理解すれば、1日の目標量をクリアするのはそれほど難しくありません。
次の章で詳しく解説していくので、ぜひ参考にしてください。
食物繊維を賢く摂取するポイント
ここからは、食物繊維を賢く摂取するポイントを紹介します。
水溶性・不溶性食物繊維をバランスよく摂取する
食物繊維は、種類(水溶性/不溶性)によって得られる健康効果が異なるため、両方を含む食品をバランスよく摂取するのがおすすめです。
しかし、普段の食生活ではとくに水溶性食物繊維の摂取量が不足しがちです。
水溶性食物繊維はおもに「ネバネバ」した食感の食品に多く含まれており、海藻やオクラ、里芋、モロヘイヤなどに含まれています。
普段から「ネバネバ」した食感を意識して食材を選ぶと、バランス良く食物繊維を摂取することができるでしょう。
ただし、食物繊維はさまざまな食品に含まれているので、ひとつの食品だけで補おうとせずに、いろいろな食品からバランスよく摂取するようにしましょう。
なかでも、お米を主食とした植物性食品を組み合わせた和食は、食物繊維を摂るのに最適です。
和食の基本とされる「まごわやさしい」を意識すると、自然と食物繊維を摂取できるので、献立を考える時には意識してみてください。
【まごわやさしい】
- ま(まめ):豆類
- ご(ごま): 種子類
- わ(わかめ):海藻類
- や(やさい):野菜類
- さ(さかな) :魚類
- し(しいたけ):きのこ類
- い(いも):いも類
野菜は調理してかさを減らす
野菜は生のまま食べるよりも、茹でる・炒める・煮るなど、加熱してかさを減らすと食物繊維の摂取量を増やすことができます。
手軽に食物繊維を摂取するには、一度にたくさんの野菜を食べることができるお味噌汁がおすすめです。
ビタミンCやビタミンB群といった水溶性ビタミンは、水に溶ける性質がありますが、お味噌汁にすれば流出した野菜の栄養もしっかりと摂取することができます。
主食の穀類を見直す
主食の穀類は、白米や白いパンよりも玄米や押麦を加えた麦ご飯、または、全粒粉やライ麦粉を使ったパンを選ぶと良いでしょう。
米や小麦は、発芽のための栄養を貯蔵した「胚乳」と、種子の皮にあたる「外皮(表皮)」、やがて成長して芽になる「胚芽」の3つの部分に分けられます。
このうち、食物繊維が多く含まれている部分が「胚芽」部分です。
【米・小麦の構造】
「胚芽」は、やがて芽が出て成長する生命力の源であるため、食物繊維はもちろん、タンパク質や脂質、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ミネラルなどの有用な栄養素が豊富に含まれています。
白米や小麦粉は、外皮や胚芽を取り除き、胚乳部分だけを残したものです。
一方、玄米や全粒粉などは、胚乳部分だけでなく、外皮や胚芽を残しているので、米や麦そのものが持つ栄養素を、残すことなく摂取することができます。
水溶性食物繊維 | 不溶性食物繊維 | 総量(可食部100g当たり) | |
精白米 | 0g | 0.3g | 0.3g |
玄米 | 0.2g | 1.2g | 1.4g |
押麦 | 4.3g | 3.6g | 7.9g |
ライ麦パン | 2.0g | 3.6g | 5.6g |
乳酸菌やビフィズス菌と一緒に摂取する
食物繊維を摂るときは、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌と一緒に摂取するのがおすすめです。
腸内フローラを整えて、健康に良い影響を与える善玉菌のことを「プロバイオティクス」といい、自らが善玉菌のエサとなり善玉菌を育て、腸内環境を整える働きをする食物繊維をはじめとした食品成分のことを「プレバイオティクス」といいます。
「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」が含まれる食品を一緒に摂ることを「シンバイオティクス」といい、両方の食品を組み合わせて摂取することで、腸内環境の改善により高い効果が期待できます。
【シンバイオティクスに良いおすすめの献立】
・バナナとはちみつ入りヨーグルト
・プロバイオティクス:ヨーグルト(乳酸菌やビフィズス菌)
・プレバイオティクス:バナナ、はちみつ(食物繊維・オリゴ糖)・なめことわかめの味噌汁
・プロバイオティクス:味噌(麹菌)
・プレバイオティクス:なめこ、わかめ(食物繊維)
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腸内環境を整える方法については、次の記事で詳しく解説しています。気になる方はぜひチェックしてみてください。
食物繊維にまつわるQ&A
ここからは、食物繊維についてよくある質問をまとめて紹介します。
食物繊維を手軽に摂れるコンビニ食品は?
仕事が忙しく、自炊をするのがなかなか難しい人もいるでしょう。
そんな人におすすめなのが、コンビニを活用して食物繊維を手軽に摂取する方法です。
コンビニで買える食物繊維を豊富に含む食品には、以下のようなものがあります。
- 海藻サラダ
- 全粒粉パン
- きんぴらゴボウ
- 切り干し大根
- もち麦入りおにぎり
- ざるそば
- ゆで枝豆
- 大豆ミート食品
- バナナ
このように、コンビニ食でも食物繊維を手軽に摂取することができます。
忙しくて自炊できない時や、献立に一品プラスしたいときなどにぜひコンビニを活用してみましょう。
食物繊維は取り過ぎても問題ないですか?
通常の食事では、食物繊維の過剰摂取の心配はほとんどありません。
しかし、サプリメントなどの健康食品を利用する際は、下記のような症状を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
【栄養素の吸収を妨げる】
水溶性食物繊維には、小腸での栄養吸収スピードを緩やかにする作用があります。
過剰摂取すると、ビタミンやミネラルなどの栄養素の吸収を妨げる恐れがあります。
【下痢を起こしやすくなる】
水溶性食物繊維は水に溶けてゲル状になるため、便の排出をスムーズにするメリットがあります。
しかし、過剰摂取すると便の水分が多くなりすぎて、下痢を起こす恐れがあります。
【便秘が起こりやすくなる】
不溶性食物繊維には、水分を吸収して便の容積を増やし排出を促す働きがあります。
しかし、不溶性食物繊維を過剰摂取しすぎると、便の容積が増えすぎて排出しにくくなり、便秘を起こす恐れがあります。
とくに、腸のぜん動運動が活発になって排便しにくくなる「痙攣性便秘」が起きている場合、不溶性食物繊維が腸に刺激を与えて、さらに便秘が悪化する恐れがあります。
「痙攣性便秘」はおもにストレスによる自律神経の乱れが原因となり、コロコロとした固い便が出たり、便秘と下痢を繰り返したりするのが特徴です。
「痙攣性便秘」の疑いがあるときは、不溶性食物繊維は控えるようにしましょう。
まとめ
食物繊維は、整腸作用や便通改善の他、さまざまな生活習慣病の予防にも効果が期待できる栄養素です。
しかし、現代の食生活では食物繊維の摂取量が低下しています。
とくにお肉や乳製品などの動物性食品中心の食生活を送っている人は、食物繊維が不足しがちなので、今回紹介した「食物繊維を賢く摂取するポイント」を参考に、調理方法の工夫や主食の見直しなど、出来るところから取り入れてみてください。
また、食物繊維は乳酸菌やビフィズス菌と一緒に摂取することで、シンバイオティクスとして腸内環境の改善により高い効果が期待できます。
便秘やお腹の不調などの症状がある人は、日頃からシンバイオティクスを意識した食事を心がけると良いでしょう。
食物繊維を賢く摂取して、いつまでも健康な身体を維持しましょう。