多くの日本人が一度は悩んだことのある便秘。
実際に便秘とはどのような原因で起き、どういった症状が現れるのでしょうか。
今回は便秘の原因・理由、種類、便秘を改善に導く方法などを「くぼたクリニック松戸五香」の窪田院長に教えてもらいました。
医師でないとわからない情報などを詳しくお話しいただきましたので、悩まれている方は参考にしてみてください。
<お話を伺った医師>
便秘の原因・理由とは
Q:便秘になってしまう原因や理由とはどういったものなのでしょうか?
便秘というのは便が滞ってるような状態を指します。
便秘に悩まされる方は女性や高齢者の方が非常に多いです。詳しく説明していきます。
食生活の偏り
普段の食事の中に食物繊維が少ないことで、便秘になりやすくなります。
食物繊維は便のかさを増やす効果があるだけでなく、大腸内の腸内細菌に利用され、便秘予防や腸の働きを正常に導きます。
また、スナック菓子や甘いものなどをたくさん食べてしまったりすることにより、必要な栄養素を摂取できず腸内環境が乱れてしまうこともあります。
運動不足
運動不足によって、腸の動き(ぜん動運動)が悪くなり、便を排出する力が弱くなることで便秘になりやすくなります。
また、排便時は腹筋も大きく関わってきます。運動不足で腹筋が衰えると便を押し出す力も弱まり、便秘に繋がる可能性もあります。
水分不足
大腸では水分を吸収しながら便を作っていきます。
水分が十分に摂れていれば、腸内を移動しやすい適度に水分を含んだ便の形成に繋がります。
一方水分が不足している場合は、不足分を便から補わなければならないため、硬くなり、腸内をスムーズに移動できなくなります。
これが、便秘へと繋がっていくのです。
ストレス
現代はストレス社会なので、どうしても自律神経が乱れやすくなります。
通常排便時は副交感神経が優位になりますが、ストレスを受けることにより交感神経が優位となり、排便が難しくなってしまうのです。
薬の服用
一部の降圧剤や精神疾患の薬、頻尿を治す薬の影響で便秘になってしまうことがあるので、ご自身が服用している薬の中で、最近初めて飲んだという薬がある場合は医師に相談するようにしてください。
便秘の種類(タイプ)とその症状
Q:便秘にはどういった種類があるのでしょうか?またその症状はどういったものなのでしょうか?
便秘の種類は大きく「機能性便秘」と「器質性便秘」に分けられます。
それぞれ解説していきます!
機能性便秘
一般的に皆さんがイメージしている便秘というのは機能性便秘に分類されます。
病気以外の原因によって、大腸の機能不全を起こしてしまうものを指します。
前述した、食生活の偏りや運動不足、水分不足、ストレスといったことが原因で起こります。
器質性便秘
器質性便秘は何かしらの病気が隠されている便秘のことを指します。
胃や小腸、大腸、肛門などこの辺りに何かしら便秘となる原因が隠されています。
実際に、ただの便秘かと思ったら大腸がんであったということもありますので、この後説明する危険な便秘症状に当てはまるようであれば、医療機関を受診した方が良いと思います。
Q:器質性便秘の場合は自分で改善していくのは難しいのでしょうか?
そこに何かの病気が隠されていたりしたら原因を取り除かなければなりません。
例えば、大腸ポリープが原因であれば大腸ポリープを取り除かないと根本的には改善していきません。
ただ整腸剤などの薬を飲むといったことでの改善は難しくなってきます。
しっかり病院で受診し、胃カメラや大腸カメラを用いた検査をするというのも非常に大事になってきます。
危険な便秘症状
Q:便秘症状の中でも危険な症状について教えてください
浣腸や便秘薬を使っても便が出ない
刺激を与えたとしても便が出ないということであれば器質的な原因が隠されている可能性がありますので、速やかに病院で検査をしましょう。
便秘だけでなく便秘と下痢を繰り返す
腸内環境の乱れやIBSと言われている過敏性腸症候群の方は下痢型と便秘型が混在している可能性があります。
こちらの場合もしっかり医療機関へ受診し、調べてもらう必要があります。
血便が出る
便秘の場合、硬い便をいきんで出すことによって切れ痔やいぼ痔になりやすくなります。
それにより、排便時に出血して血便が出ることがあります。
また、硬い便は肛門も傷つけてしまうことがあり、肛門付近の細菌によって炎症を起こしてしまうこともあります。
便秘を改善に導くための方法
Q:便秘を改善に導くための方法があれば教えてください
食生活の改善
食事に関しては意識的に食物繊維を摂っていただくのが大事です。
食物繊維の中でもその性質によって水に溶ける「水溶性食物繊維」と水に溶けない「不溶性食物繊維」があります。
水溶性食物繊維は便を柔らかくする効果が期待でき、不溶性食物繊維は便のかさを増やしてくれる効果が期待できます。
ただし、不溶性食物繊維はIBS(過敏性腸症候群)の方の場合、返って症状を悪化させる恐れがあるため、自分にあった食物繊維を摂取することが大切です。
また、水分量が少ないと便秘になりやすいので、意識的にしっかり水分を摂っていただくことも重要です。
生活の中に運動を取り入れる
具体的には中〜高強度のウォーキングやジョギングをすることがおすすめです。
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ストレスを発散させる
家の中でリラックスできる空間を作ることが非常に大事です。
例えば、ヨガや瞑想をしてみたり、アロマを炊いてみたり、ストレッチをしてみたりといったリラックスできる空間や時間を作り自律神経を整えることが大切です。
身体を温める
身体を温めることにより、腸のぜん動運動が促進され、慢性的な便秘にも効果があります。
具体的な方法としては、ぬるま湯(38度前後)に20分〜30分半身浴をすることがおすすめです。
また、湯たんぽや温熱シート、蒸しタオルなどでも身体を温められます。
腸内環境を整えてくれるサプリを取り入れる
会食や飲み会でなかなかバランスの取れた食事ができなかったり、食物繊維を摂り入れることが難しいという方は腸内環境を整えてくれるサプリメントもおすすめです。
具体的には悪玉菌の増殖を抑え、腸内環境を整える作用のある「善玉菌(乳酸菌、ビフィズス菌など)」や「食物繊維」の両方が配合されたものが良いでしょう。
Q&A
Q.何日出ないと便秘と判断すれば良いですか?
個人差がありますので何日とは一概に言えません。
便秘は本人にとって辛かったり痛かったりといった症状があるなど、度合いによって判断しています。
例えば、3〜4日便が出なくても不快感がなく、昔から同じ状態で健康に問題がないのであれば、そのまま生活していただいています。
毎日出ていたのに急に4〜5日出なくなるなど便の間隔が急に変わった状態になった場合などは何かのサインの可能性がありますから、医療機関を受診するシグナルとなります。
Q.便が出口で詰まるのですが、良い改善方法はありますか?
便が出口付近で詰まってしまう場合は、浣腸や刺激性のある下剤の投与により改善することが考えられます。
ただし、浣腸の回数が多くなると血圧が下がるリスクがあるため、特に高齢者は注意が必要です。
医療機関を受診して詰まりの原因をカメラで調べたり、摘便や浣腸を行うことで改善される場合があります。
Q.便が大腸に止まり続けたら最終的にどうなりますか?
完全に止まってしまったら、腸管穿孔になり便が大腸から出てしまうという可能性があります。
その場合はかなり強い痛みを伴いますし、お腹の中に便が溜まってしまうので緊急手術になる可能性があります。
本当に便が詰まって苦しい場合は、一刻も早く病院へ行ってください。
Q.便秘が続くと大腸がんになる可能性はありますか?
便秘というのは、便が長期的に腸に留まるような状態になるので、そうなると腸内の有害物質が腸内に滞留してしまう可能性があります。
便秘は慢性的に腸の中が炎症を起こしているような状態になり、長期的に便秘の方は大腸がんになる可能性も高くなってきますので注意が必要です。
まとめ
今回はくぼたクリニック松戸五香の窪田院長に便秘の原因・理由、種類、便秘を改善に導く方法などについて解説していただきました。
便秘の種類は大きく分けると「機能性便秘」と「器質性便秘」に分けられ、器質性便秘は病気が関係しているもの、機能性便秘はそれ以外のもので食生活の偏りや運動不足、水分不足、ストレス、薬によるものなどが原因となっています。
普段の生活を見直すことにより改善に導けるものもありますが、症状によっては危険なものもありますので、自己判断せず病院を受診することをおすすめします。