お腹の張り(腹部膨張感)はとても辛いものです。
お腹の違和感や痛みだけでなく、人前でおならが出たらどうしようと、日々不安を感じている方は多いのではないでしょうか
今回は、気になるお腹の張りの原因や予防・解消法について解説します。
お腹の張りをなくしてスッキリ元気な毎日を過ごしましょう。
お腹の張りでツライ「腹部膨満感」とは
※わかもと製薬アンケート調査(対象:30代~50代女性159人(複数回答可))
こちらは、わかもと製薬が30代〜50代の女性を対象に実施した「気になる胃腸症状」についてのアンケート結果です。
腸に関連する症状を赤いグラフで示していますが、便秘に次いで腹部膨満感が多くなっています。
腹部膨満感とはお腹の張りを表す医学用語で、一般的に2つのタイプに分かれます。
①消化管にガスが溜まってお腹が重く感じたりゴロゴロしたりするタイプ
②胃の運動機能が低下することで胃に重苦しさや不快感があるタイプ(これを胃部膨満感といいます)
この記事では、①のタイプの「腹部膨満感」について詳しく解説していきます。
ガスが溜まって下腹部が張る!痛い!原因は?
消化管の運動機能が低下すると、腸内のガスが排泄されずに過剰に溜まり、下腹部が張って、時には痛くもなる「腹部膨満感」を引き起こします。
ここからは、「腹部膨張感」が生じる主な原因について詳しく見ていきましょう。
悪玉菌の増殖による腸内環境の乱れ
腹部膨満感の原因のひとつには、悪玉菌の増殖による腸内環境の乱れがあります。
腸内には、
- 体に良い働きをする善玉菌
- 体に悪い働きをする悪玉菌
- 善玉菌とも悪玉菌とも言えない日和見菌
この大きく分けて3つのグループの腸内細菌がバランスを取り合いながら腸内フローラを形成しています。
健康な成人の腸内環境は、「善玉菌2割・悪玉菌1割・日和見菌7割」のバランスが適当とされ、このバランスが崩れると腸内環境が乱れ、お腹の張りや便秘はもちろん、免疫力の低下にもつながります。
腸内に悪玉菌が増えると、どのようにして腹部膨満感が起きるのか見ていきましょう。
また、腸内細菌の中で1番割合が多い日和見菌には、善玉菌が多い場合は大人しくしているものの、悪玉菌の割合が多くなると、悪玉菌と同様に体に悪い働きをするという特性があります。
そのため、悪玉菌が増殖すると腸内環境が一気に乱れてしまうのです。
腸内環境を良好に保つには、いかに悪玉菌を増やさないかが重要になります。
悪玉菌が産生する有害ガスは悪臭がするので、おならが臭い場合は悪玉菌が増えている証拠です。
【悪玉菌を増やす悪習慣】
- 悪玉菌のエサになる動物性タンパク質の多い食事
- 脂質が多い欧米型の食事
- 添加物の多い食事
- ストレスが多い生活
これらの習慣は、悪玉菌を増やし腸内環境も悪化させてしまいます。
特に、外食が多く、菓子や清涼飲料水が好きな人は注意が必要です。
保存料や乳化剤、人工甘味料などの食品添加物は、腸内細菌に直接影響を与え、腸内環境を乱します。
腸内環境を整え、お腹の張りを解消してくれる食べ物については、この後4-1にて紹介します。
便秘による腸の詰まり
多くの女性を悩ませる便秘ですが、便秘により腸が詰まるとガスが排出されずにお腹の張りの原因になることもあります。
また、腸内の悪玉菌は溜まった便もエサにして有害ガスを発生させるため、さらにお腹が張る場合もあるのです。
便やガスが溜まり過ぎると、お腹の張りだけでなく、お腹の痛みを感じ、時には冷や汗をかくほど痛みがひどくなることもあります。
ガスの排出機能低下
ガスの排出機能低下によってお腹が張ることもあります。
便秘やストレス、胃腸炎などが原因で腸が正常に機能しないと、お腹に溜まったガスをおならとして体外に排出できなくなってしまいます。
行き場を失ったガスは、腸内に溜まり、お腹を膨張させて腹部膨満感を引き起こします。
ストレスによる「過敏性腸症候群」
過敏性腸症候群(IBS)がお腹の張りの原因になることもあります。
過敏性腸症候群は、ストレスなどをきっかけに腸の収縮運動が過剰になったり、けいれん状態になったりすることで、
- 便秘
- 下痢
- 便秘と下痢を交互に繰り返す
- お腹が張る
といった症状のいずれかが腹痛を伴って起こる疾患です。
症状が数か月続き、度々腹痛や下痢に襲われるため、電車に乗ることもままならないなど、日常生活に支障をきたしている場合は、消化器内科などで診察を受けましょう。
早食いによる「呑気症」
早食いなどが原因の呑気症(どんきしょう)でお腹が張っている可能性もあります。
食事や話をする際、誰でも少なからず空気を飲み込みます。
この時に、意図せずたくさんの空気を飲み込んだことが原因で腹部膨満感を起こすのが呑気症です。
お腹の張りだけでなく、吐き気やゲップなどが生じることもあります。
月経前の腸の運動低下
月経前の腸の運動低下もガスが溜まる原因のひとつです。
月経前は、月経前症候群(PMS)の症状のひとつで、女性ホルモンの変動が原因でお腹が張りやすくなります。
また、日本人には腸がねじれていたり下垂していたりする人が多いといわれていますが、こうしたねじれ腸や腸下垂はガスが溜まりやすく、お腹の張りの原因になることもあります。
特に女性は男性よりも腸が長く筋肉量が少ない傾向にあり、そのうえ骨盤も広いため、腸のねじれや下垂が起こりやすいのです。
お腹の張りの予防・解消法
お腹が張る「腹部膨満感」は、どのようにすれば防げるのでしょうか。
ここからは、お腹の張りの予防法と解消法について解説していきます。
張りを解消する食べ物・飲み物を摂る
お腹の張りを解消してくれる食べ物や飲み物を積極的に摂取するのは有効な手段です。
お腹の張りを解消するおすすめの食品は以下の通りです。
【①ヨーグルト・乳酸菌飲料】
ヨーグルトや乳酸菌飲料には、腸内環境を整えてくれる善玉菌が多く含まれています。
腸内環境が整うことで、お腹に溜まったガスや便が排出されるので、お腹の張り解消の効果が期待できます。
ヨーグルトの他にも、キムチや漬物、納豆などの発酵食品にも善玉菌が多く含まれています。
【②生姜】
生姜には、消化不良による膨満感を和らげてくれる働きがあります。
生姜に含まれる成分のジンゲロールやショウガオールは、腸内のガスの排出を助け、お腹の張りを解消してくれます。
生姜には他にも、からだを温める効果や代謝を促す効果もあるためおすすめです。
【③バナナ・アボガド】
主に食塩として摂取されるナトリウムは、細胞内に水分を引き込む作用があるため、摂取しすぎると、お腹の張りの原因となります。
バナナやアボガドには、過剰なナトリウムを排出し、体内の水分バランスを適切に保ってくれるカリウムが豊富に含まれています。
カリウムが多い食べ物には他にもジャガイモやホウレンソウ、ニンジン、ブロッコリーなどがあります。
いずれも合わせやすい食材なので、毎日の献立に取り入れていきましょう。
せっかくお腹の張りを解消してくれる食べ物を積極的に摂取しても、早食いをしては吞気症を引き起こす原因になってしまいます。
食事の際は、きちんと味わえるくらいの余裕を持って食べるようにしましょう。
食物繊維を摂りすぎない
食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があります。
種類 | 特徴 | 働き | 含まれる食品群 |
水溶性食物繊維 | 水に溶ける |
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不溶性食物繊維 | 水に溶けない |
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食物繊維はお通じを良くしてくれますが、摂りすぎるとかえってお腹の調子が悪くなることがあります。
水溶性食物繊維を過剰摂取すると、便の水分量が多くなって下痢になります。
また不溶性食物繊維を多く摂り過ぎると、便の量が増えて腸内を圧迫し、お腹の張りの原因となります。
通常の食事で、食物繊維を過剰摂取することはまずないと思いますが、ダイエット中の方や便秘に悩む女性は、サプリメントの服用で過剰摂取になりやすいので注意しましょう。
食物繊維の目標摂取量は成人の場合、1日17〜21gが目安です。
お腹の張りが気になる方は、食物繊維の摂取量を見直してみてください。
ストレスを解消する
意外かもしれませんが、ストレスを解消することもお腹の張りの改善に効果的です。
ストレスはガスの排出機能を低下させるため、お腹にガスが溜まる原因となります。
忙しくても週に1度は趣味を楽しむ時間を設けたり体を動かしたりして、ストレスのケアに努めましょう。
音楽を聴いたりカラオケで思いっきり歌ったりするのもおすすめです。
イライラした時は腹式で深呼吸すれば、リラックス効果が期待できます。
ガス抜きのポーズをする
ガスが溜まってお腹が張っているのなら、ヨガのガス抜きのポーズがおすすめです。
【ガス抜きのポーズ】
①床に横たわり、仰向けになる
➁両腕で両ひざを抱え込む
③息を吐きながらひざを胸に引き寄せて、上体を起こす
④太ももで下腹部を圧迫し、お尻をやや持ち上げた状態でキープする
⑤ゆっくりと5回呼吸をして、身体を1.の状態に戻す
ガス抜きのポーズにはリラックス効果もあるため、就寝前のストレッチとしてもおすすめです。
お腹の張りが気になる方は、ぜひ毎日の習慣に取り入れてみてください。
ガス抜きのツボを押す
ガスを抜くには腸の活動を活発にすることが大切です。
腸のぜん動運動を促すツボには以下の3つがあります。
【大腸兪(だいちょうゆ)】
大腸兪(だいちょうゆ)は背中にあるツボです。
ウエストから指4本分ほど下あたり、骨盤の上にあり、背骨から左右に指2本分のところに位置しています。
両手を親指が背中に当たるように腰に当て、親指で押しながら揉みましょう。
親指が大腸兪の位置に来るよう若干胸をそらすのがポイントです。
【関元(かんげん)】
関元(かんげん)は腹部にあり、おへそから指4本分ほど下にあります。
息を吐きながらゆっくりと押していきましょう。
腹部は内臓が収まっている大事な部位なので、押しすぎは禁物です。
内臓を傷めないよう、ゆっくりと行いましょう。
【湧泉(ゆうせん)】
湧泉(ゆうせん)は足の指をぎゅっと曲げると一番凹むところにあります。
親指でやや強めに3秒ほど押し上げていきます。
3〜5回ほど繰り返せばOKです。
少し痛いけれど気持ちがいい程度の力で押すのがコツです。
うつぶせ寝
お腹の張りの解消にはうつぶせ寝もおすすめです。
【やり方】
①クッションで腹部を圧迫しうつ伏せになる
➁10分間うつ伏せの状態をキープする
③クッションを取り左右に寝返りをうつ
④寝返りを5往復程度行い、腹部に刺激を与える
ポイントは、腹部に均等に圧がかかるよう平らな場所を選ぶこと。
畳やフローリングなど硬めの場所の方が効果を実感しやすいでしょう。
本やスマホを見ながらでも良いので、毎日10分間のうつ伏せ寝を習慣にしてみてください。
1日1回就寝前に行えば、次第にお腹の調子がよくなるはずです。
【注意点】
- 食後は避ける ※
- 腰痛持ちの人や腸に疾患がある人、妊娠中の人は行わない
- うつぶせ寝の最中に痛みを感じたら、ただちに中止する
※食後すぐにお腹を圧迫すると、食べたものが逆流して吐き気を催したり嘔吐したりする可能性があります。
お腹の張りの改善は市販薬の使用もおすすめ
ご紹介した方法を実践しても、お腹の張りが思うように改善されない場合は、市販薬を利用してみましょう。
便秘の方はまずは便秘を改善
便秘になると、腸の詰まりや有害ガスの発生により、お腹の張りの原因になります。
そのため、便秘ぎみの方は便秘の症状をまずは改善しましょう。
臭いおならが頻繁に出るなどの理由で早急に便秘を改善したい場合は、便秘薬を利用するとよいでしょう。
症状が重くはないものの、日頃から便秘気味という方は、次にご紹介する整腸薬を利用することをおすすめします。
乳酸菌配合の整腸薬で腸内環境を整える
お腹の張りの原因は、主に腸内に溜まったガスです。
腹部膨張感の症状があるときは、ガスの発生を抑える成分や、腸のぜん動運動を促す成分が配合された整腸薬の服用がおすすめです。
善玉菌である「乳酸菌」が産生する乳酸には、腸のぜん動運動を高める作用があります。
また、腸内に善玉菌が増えると悪玉菌の増殖が抑制されるので、腸内環境が整い、ガスが溜まりにくくなります。
整腸薬を選ぶ際は、乳酸菌が配合された製品を選ぶようにしましょう。
また、ビタミンやミネラル、アミノ酸などの栄養素も含まれた製品であれば、胃腸障害時の栄養補給にも役立ちます。
まとめ
お腹が張る腹部膨満感はさまざまな原因によって引き起こされます。
腹部膨満感を解消するには、「腸内環境を整えること」「早食いを避けること」「ストレスを溜めないこと」などが効果的です。
思うようにお腹の張りが改善しないなら、市販薬の服用もひとつの手です。
胃腸薬は腸内フローラを整え、ガスが発生する原因となる悪玉菌の増殖を抑えてくれます。
便秘薬や下痢止めと併用できる胃腸薬もあるので、症状に合ったものを選びましょう。
なお、病気が原因でお腹が張ることもあります。
強いお腹の張りがいつまでも続くと思ったら大腸がんだったという可能性もゼロではありません。
特に40歳以上で肉が中心の食事が多い人、タバコやお酒が好きな人は要注意です。
今回ご紹介した情報も参考に、定期的なヘルスチェックと健康的な生活習慣を心がけ、お腹の張りとは無縁の健やかな生活を手に入れましょう。