アニメ「夫婦わかもと」の“中の人”が登場!
あらためてフェムケアプロジェクトについて話そう
2024年1月にプレオープン、同年3月8日(国際女性デー)にグランドオープンした「FEMeFREE PROJECT」。1周年を機に人気連載アニメ「夫婦わかもと」(めおとわかもと)を制作している“中の人”・齋藤邦雄さんを招いて、プロジェクト担当の冨永と森泉とで鼎談を行いました。コンテンツ制作側の想いやこだわり、ここまで続けてきたからこそ見えてきた意義と課題、そして未来についても語り合います。
■夫婦わかもと(めおとわかもと)
生理や妊娠・出産、更年期などの悩みは、夫婦間であっても中々話せないもの…。実話を元に、「妻・わかちゃん」と「夫・もとくん」が、わかりやすくフェムテックやフェムケアを伝える「FEMeFREE PROJECT」の人気コンテンツ。
夫婦の理解が深まるような“女性のあるあるアニメ”をYouTube「夫婦わかもと」チャンネルで配信中。
漫画家/ディレクター 齋藤 邦雄
大手ベンチャー勤務後、漫画家のアシスタントを経てプロデビュー。伝わりづらいコンテンツをかみ砕いて分かりやすく説明することを得意とし、広告用の漫画や、動画の制作も数多く手がけている。2020年には自身の漫画動画YouTubeチャンネルを立ち上げた。フェムテックやフェムケアを伝えるアニメ「夫婦わかもと」では、リサーチからアイデア出し、シナリオ執筆、コンテ作成、編集・調整まで、全体のディレクションを担っている。
わかもと製薬株式会社 冨永 千絵
わかもと製薬のフェムテックプロジェクト立ち上げ人。広告企画推進部にて、コミュニティサイトやSNSを通して社外へ情報発信やイベント出展の準備や企画を担当する中で、フェムテックは女性にとって必要不可欠であることを知る。社会はもちろん、自社内でもフェムケアに対する理解の低さに課題を感じているため、意識改革に向けて日々奮闘中。フェムテックエキスパート資格を保有する。
わかもと製薬株式会社 森泉 仁美
2024年の6月からわかもと製薬の広告推進企画部に在籍し、フェムテックプロジェクトの広報担当として全体的な施策の流れを任されている。オウンドメディア「FEMeFREE PROJECT」のほか、YouTubeの管理やInstagramの投稿などの発信も手掛け、’25年1月に開催するリアルイベントの企画も考えるマルチタスク。フェムテックを広めるきっかけとして、それぞれの世代に寄り添ったコンテンツを目指し、サイトを自分の子どものように育てたいという想いで取り組んでいる。
3人それぞれが選ぶ「夫婦わかもと」のお気に入り回は?
冨永:これまで、わかもと製薬はフェムケアという分野に足を踏み入れたことがなかったので、手探りで模索しながら、あっという間の1年でした。実は“女性の健康課題は隠すのが当たり前”と思っていたこともあったんですが、「夫婦わかもと」を通して「男性にも話していいんだ!」と思えるようになりました。
森泉:私が「FEMeFREE PROJECT」に参加したのは、プレオープンから半年経った’24年の6月。冨永をはじめ、男性上司も含めた会社全体として、プロジェクトに対する熱量がとても高いことに驚きました。「フェムケアやフェムテックはこんなに必要とされているんだ!」ということを再認識しましたし、運営していてすごく楽しいです。
齋藤:そもそも「夫婦わかもと」は、 “アニメでフェムケアを広めよう”ということが立ち上げの大きなテーマでしたね。
冨永:フェムケアのことを文章にすると重くなりがちなんですけど、齋藤さんから「妻・わかちゃんと夫・もとくんの夫婦あるあるアニメ」というご提案をいただいて、これなら多くの方に知っていただけると思いました。分かりやすく伝えることができて、男性の理解も徐々に深まっていると実感しています。
森泉:それは私も実感しています。1回ごとにクスっと笑えるところがある楽しい内容にしたいので、齋藤さんには「コントになるように」とお願いしているんですよね。
冨永:週に1回、「夫婦わかもと」の定例ミーティングをしていますけど、話している中でもネタのヒントが出てきますよね。「夫婦わかもと」の中で、齋藤さんのお気に入り回はどれですか?
齋藤:ショート動画の「男の生理の理解がヤバいwwww」は好きですね。スタートした当初は再生数を伸ばすのが僕の課題でもあったので、あえてちょっと煽るような動画にしたんですけど。TikTokに上げた時に男性からも女性からもコメントがたくさん付いて、軽い論争になったんですよね。盛り上がって再生回数も伸びたし、ネタとしても好きです。
森泉:実は、私もその回がお気に入りなんです。攻めた内容でしたけど、ラフに意見交換をしやすい仕上がりになっていたのがよかったです。今後もそこを目指して、ツッコミどころのあるアニメにできたらいいなと思っています。
齋藤:そうですよね。コメントがたくさん付くということは、いいコンテンツなんだなって思います。
冨永:私は、「もしも、男性にも生理がきたらどうなる?」の回がすごくおもしろかったです。アニメだからこそ発信できる内容だし、あの回のコメント欄も盛り上がっていましたよね。男性同士がコメント欄で言い合っているのも印象的でした。
森泉:確かに。男性の中でも理解度の違いがすごくあるんだなって感じました。
女性特有の悩みを共有し、理解することで起こった変化
冨永:齋藤さんが「夫婦わかもと」を制作する上で大切にしていることは何ですか?
齋藤:2つあります。ひとつは「傷つけないライン」ですね。分かりやすく男性VS女性という見え方にしないようにしています。2つ目は、「飽きさせないバランス」です。見ている方が飽きないように、絵が切り替わるようにして、短いセリフで掛け合いになることを意識しています。
冨永:私は、“押し付けないようにしたい”という想いがありますね。男性は生理について習ってきていないのに、今になって「女性の健康課題の大切さを知らないとダメだ!」と押し付けたら、拒否反応が起こるじゃないですか。でもやっぱり知っていただきたいので、男性の意見も取り入れながら、一方的にならないように関わっています。
齋藤:夫のもとくんは、女性に対して理解のあるキャラクターなんですけど、テーマで取り上げたことをすべて学んでレベルが上がっていってしまうと、リアルな男性と乖離してしまうんですよね。だから、1回覚えたことをすべて忘れるおバカキャラにして(笑)、ちょうどいいバランスにしています。
冨永:でも、それがすごくリアルなんですよ! もとくんの寄り添いたい気持ちは分かるけど、“我々女性が求めているのはそこじゃない”っていう(笑)。
齋藤:実際は、“どうしていいか分からない”というのが多くの男性の根っこにあると思います。
冨永:齋藤さんがこのプロジェクトに関わる前と後で変わったことはありますか?
齋藤:妻と生理の話をするようになりました。「夫婦わかもと」を作る過程で、妻にできあがった動画を見せたり、「女性としてこれを聞かれたらイヤかな?」と聞いたりしたことで、話しやすくなったんだと思います。
森泉:素敵~!
齋藤:妻と出会って14年くらい経ちますけど、生理についてちゃんと話したことがなかったんですよ。男からすると、生理は触れちゃいけないもの、聞かれたくないものだと思っていたけど、女性からしてみればフラットなものなんですよね。「今日、生理だから」とか、PMSのあたりからも話してくれるようになって、それは大きな変化です。
冨永:ご夫婦にとっても、いい変化ですね。
齋藤:あ、あと、初めてナプキンのおつかいを頼まれました!
森泉:すご~い!
冨永:信頼されているじゃないですか!
齋藤:でも、種類が多すぎますよね。スマホに写真が送られてきたんですけど、同じものを探すのに時間がかかりました。
森泉:ドラッグストアで、まわりの目が気になりませんでしたか?
齋藤:なりました! 恥ずかしいというか…。薬局に行っても、男は生理用品の近くを通らないようにしているんですよ。「パートナーのを買いに来ている」と分かるだろうからいいですけど、やっぱり居心地はよくないですね…(苦笑)。
冨永:そうなんですね(笑)。
齋藤:あと、以前は、生理中はお腹の痛さにプラスしてメンタルまで不安定になることを理解できていなかったです。それで変な話しかけ方をしちゃったり(笑)。でも今は、「あ、今は話しかけられたくないんだな」ということが分かるようになりました。
知識を広めることでお互いを思いやれるやさしい社会に
森泉:家庭以外で、齋藤さんが行動を起こすようになったことはありますか?
齋藤:行動レベルではないかもしれないですけど、想像力が働くようにはなりました。例えば女性が4人いたら、1人生理期間中、1人PMS期間中、1人更年期、1人だけ元気、くらいの割合かなと思うんです。そういう目で社会を見るようになりましたね。
冨永:その視点、素晴らしいです!
齋藤:具体的な行動で言えば、「夫婦わかもと」の制作チームに、イラストレーターと編集をお願いしている女性がいるんですが。「こういうコンテンツだし、遠慮しないで言ってください」と伝えているので、「生理が辛くて2~3日休んでいました」とかで進行が遅れたりすることも全然大丈夫です。
森泉:わあ、理解がありますね!
齋藤:でも、ほかの企画で女性にそれを言うのが正解かどうかは分からないですね…。
冨永:セクハラのラインとギリギリな感じがありますよね。
齋藤:そうなんですよ。
冨永:今後の「夫婦わかもと」では、妊活と不妊の部分もテーマとして取り上げていきたいですね。女性の健康課題が多岐に渡っている中で、多角的な視点を持って、いろんな分野からも伝えていかなければという使命感があります。
森泉:学生のうちからライトに切り込める、性教育的なタッチポイントも持っていけたらいいですね。
冨永:それで言うと、私は男女一緒に性教育を受けてこなかった環境に疑問を抱いているんですよ。小さいうちから性教育の一環として、女性の健康課題について男性の理解も得られるように、性教育の教材に使っていただけるような動画も作っていきたいです。
森泉:生理ひとつとっても、女性ひとりひとりの高低差がありますよね。それを理解していただいて、男女ともに助け合えるような世の中になれば、女性はもっと羽ばたけるのかなと思います。
冨永:もっと自由に女性の健康課題を話せる世の中、みんなで解決していく世の中が理想だなって思いますね。
齋藤:男性視点からすると、対応の前に、まずは知識かなと思います。
森泉:確かに!
齋藤:僕も知識を得たことで想像力が働いたので、まずは全部知っておくことが大前提。 「お腹が痛いんでしょ?」くらいの知識ではなくて、「生理の症状は人によって違うんだ」とか、 「家事や仕事のパフォーマンスが変わる」ということを知って、そこからの“何をしようか”だと思います。
冨永:知らないとできないですもんね。
齋藤:ほんとに知らないと何もできないです! 「やって」と言われてやるのではなくて、男性から自発的にできるようになると、やさしい社会になると思うので。ますは“ちゃんと広める”ということが大事だと思います。
冨永:男性視点からの興味深いお話を聞くことができました。齋藤さん、今日はありがとうございました!