編集部が気になるあの人に突撃インタビュー

女性のウェルビーイング実現のために、政治家、実業家としてできること
アイドルから政治家、そして実業家へとキャリアチェンジをし続ける橋本ゆきさん。前編では、アイドル時代の健康に関する無知さや政治家になったきっかけについて伺いました。社会問題を解決するべく、さまざまな活動にチャレンジし続けているなか、昨年6月に第一子を出産。ますます多忙を極めながらも、アイドルのネクストキャリアを支援する会社「ツギステ」を企業した理由とは? さらに、これからの展望と目標も伺いました。
橋本ゆき

1992年生まれ、三重県出身。17歳から東大受験アイドルとして活動し、2012年東京大学文科三類に合格。同年からアイドルユニット「仮面女子」のメンバーになる。2019年3月にアイドルを卒業、「誰もが挑戦できる社会」を作るため同年4月に渋谷区議選に出馬し、最年少議員として当選。2023年には無所属として2期目の渋谷区議会議員トップ当選を果たした。政治家として活動しながら、アイドルのセカンドキャリアを支援する会社「ツギステ」の代表取締役も務めている。
アイドルを次のステージへ送り出す「ツギステ」の事業
政治家として多忙ななか、アイドルのセカンドキャリアを支援する会社「ツギステ」を立ち上げた理由を聞かせてください。
アイドルというユニークな経験には必ずユニークなスキルが付くので、それを必要としてくれる場所が必ずあると確信を持っているんです。私自身、アイドルをやってよかったなと思っています。
その一方で、まわりを見ると、みんなキャリアに困っているんです。9年間アイドルを一緒にがんばってきた、私より人気があったメンバーたちが、次のステージになかなか進めない現状がありました。
私は、いろんな困難があったとしても諦めずに、誰もが自分の幸福を選択して、実現することができる社会を作りたいと思って政治家になったのに、まわりは人生の進み方に困っている。“アイドルをやっていたあの頃が人生のピークだった”という状況を全然解決できていないなと思ったんです。でも、行政で解決できることではありません。それならば、会社として仕組みを作るしかないなと思って、起業に至りました。
ツギステの事業のひとつに「女性の健康改題の解決のサポート」がありますが、それにはご自身の経験が生きているのでしょうか。
そうですね。現役のときに心も体も健康で活動することが、その後のキャリアにもつながっていきますから。特に若い女の子は脆い部分があるので、そこのケアをする必要性を感じています。
私が議員になって、SRHR(Sexual Reproductive Health and Rights/性と生殖に関する健康と権利)や、日本の性教育が充実していないことを知った上で、アイドル時代の経験を振り返ると、問題だらけだったことに気づいたんです。誰かが旗を振って、芸能界全体でタレントのケアをすることを当たり前にしたいという気持ちがすごく強くありますね。
ツギステの柱である「就職の支援」を行うなかで分かってきたのは、メンタルを病んでいる子がすごく多いこと。新しい環境に飛び込むハードルが高くなるし、企業側も採用に躊躇してしまいますよね。病んでいても働けるようにサポートすることももちろん大切なんですけど、そもそも病まないようにケアしてあげることが切れ目のない支援として必要だと思っています。

心身のケアが当たり前になっている芸能界の生態系を作りたい
アイドルの心身の健康を阻害しているものは何だと思いますか?
いちばんの元凶は、SNSなんじゃないかなと思っています。常に人の目にさらされている状況の中、いろんなことが直接届いちゃうんですよね。その前の時代はファンレターを郵送していたので事務所が検閲できたし、過激な内容が直接届くことはなかったんです。
今は、エゴサーチをして、自分に関する書き込みを見に行ってしまうこともあって。コンプレックスを助長させられますよね。それから、世界中の人の発信を見られるので、例えば韓国のスタイルのいいアイドルを見て「私は全然かわいくない」と思い込んでしまったり。そういうストレスをすごく受けているんじゃないかなと思います。
橋本さんは経験者だからこそ、理解して、共感して、サポートすることができますね。
芸能界って、なかなか相談しづらいんですよね。「不満を言ったら扱いづらいタレントと思われちゃうんじゃないか」、「干されちゃうんじゃないか」、「いい子でいなきゃ」、とか考えてしまうんです。真面目な子ほど自分の悩みやしんどさを言えない状況になっているので、そこを変えていきたいです。どうしたら自分の好きな自分になれるか。リテラシーも含めて発信できるといいなと思っています。

大風呂敷を広げると、芸能界を変えたいんです。タレントの心身のケアをすることが当たり前で、それができている事務所に新しい才能が集まって、企業やメディアが安心して仕事を発注できる生態系を作れたらいいなと思っています。ツギステはまだまだ小さい企業ですけど、言い続けていくことが大事なので(笑)。
実業家として、政治家として、できることで社会を変えていく
26歳のときに子宮頸がんの前がん病変が見つかりました。現在の体調はいかがでしょうか。
最初の議員検診で子宮頸がんの再検査になって、「がんになっていないので、経過観察です」と言われて以来、毎年がん検診に行っています。幸いなことに、持っていた子宮頸がんのウイルスは、がん化することなく落ち着いています。
生理不順に関しては、ホルモンバランスを含めてだいぶ治りました。結婚して妊活をするとき、生理がこない問題をどうにかしないといけなかったので、アイドル時代から飲んでいる薬を服用しながら、健康的な食事やトレーニングで体を整えていきました。それで少しずつ数値が改善されたんだと思います。
健康的な生活を送ることで、婦人科系の問題が改善されることを自ら体現されていますね。
アイドルをやっていたときから、「いつか結婚してお母さんになって…」という想像をしていました。でも、目の前のことにいっぱいいっぱいで、無理なダイエットをしたり、体からのシグナルを無視すると後になって影響するということが分からないんですよね。
これからツギステでやっていきたい目標があったら教えてください。
今はアイドル専門としてやっていますけど、最近は「アイドルであり、インフルエンサーです」とか「アイドルであり、声優です」とか、カテゴリーの境目がどんどん曖昧になっていますよね。なので、アイドルだけじゃなくて、横にどんどん広げていきたいと思っています。芸能界を選択した若年女性全般のキャリアの悩みは同じなので、みなさんが困らないようにサポートの枠を広げていきたいと思います。
政治家としての目標はいかがですか?
「自分はこう思う」ということを優先できなくなってしまうので、政党に所属したくない気持ちがすごくあるんです。自分に正直でありたいので、政党に所属するよりも単体でできることで社会を変えたいと思っています。
私は今、渋谷区議会議員として活動していますけど。渋谷区は小さな自治体のひとつでありながら、日本全体を変えることができる影響力のある自治体だと思っているんです。渋谷から小さな一歩を重ねることで社会全体を変えることができると信じて区議会議員をやっています。ゆくゆくは渋谷区長を目指して、社会を変える旗振り役になりたいと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
私と同年代の方だと、結婚や出産、キャリアチェンジとか、ライフステージの変化がいろいろ重なりますよね。すごく不確実なことも多いし、不安もあると思います。いろんなことを乗り越えてきた私が思うのは、自分に対するケアは想像以上に大事だということ。
アイドル時代の私のように、いろんなことを理由に、体調や機嫌をよくする優先度を下げてがんばっている方がすごく多いはず。でも、結果的に仕事でいいパフォーマンスを出すために、調子のいい自分でいるためには、メンタル面もフィジカル面も自分のシグナルにしっかり向き合ってほしいなと思います。“いつでも準備ができている人”にこそチャンスがまわってくると思うので、調子のよい自分をマネジメントして作っていけたらいいですよね。

政治家、実業家、母の3役をこなす多忙でありながら、心身共に健やかでイキイキとしている橋本さん。これからどんなふうに社会を変えてくれるのか期待をしてしまいます。私たちも自分をなおざりにせず、“いつでも準備できている人”を目指しましょう!
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