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編集部が気になるあの人に突撃インタビュー

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無月経、不正出血…、
元アイドルが身をもって知った無知であることの危険性

アイドルから政治家に転身し、渋谷区議を務めている橋本ゆきさん。生理が止まってもあたり前という環境に身を置いていたアイドル時代を経て、女性の健康に関する知識の大切さを訴えます。また、26歳の若さで政治家になったエピソードもお話しいただきました。

TODAY'sGUEST

橋本ゆき

橋本ゆき

1992年生まれ、三重県出身。17歳から東大受験アイドルとして活動し、2012年東京大学文科三類に合格。同年からアイドルユニット「仮面女子」のメンバーになる。2019年3月にアイドルを卒業、「誰もが挑戦できる社会」を作るため同年4月に渋谷区議選に出馬し、最年少議員として当選。2023年には無所属として2期目の渋谷区議会議員トップ当選を果たした。政治家として活動しながら、アイドルのセカンドキャリアを支援する会社「ツギステ」の代表取締役も務めている。

学業と両立しながら年間1000ステージをこなす日々

アイドル時代、どんなところにやりがいを感じていましたか?

ステージデビューした頃はファンの方が全然いなくて、私を目当てに来てくれるのは1人2人しかいなかったんです。そこから、ライブを重ねるごとに推してくれる方が増えることにやりがいを感じていました。握手会でファンの方が「これで明日もがんばれるよ!」と言ってくださることもやりがいでしたね。あと、ほんとに激しいステージだったので、たくさん動いて汗をかくことが単純に気持ちよかったです(笑)。

アイドル活動で大変だった点も聞かせてください。

大学生活との両立がすごくハードでした。劇場公演は365日あり、平日は夜に2公演、土日は3~4公演をやっていました。なので、大学の授業は1限から4限に詰めて履修していたんです。授業を受けた後すぐに劇場に行ってライブをして、終わってからは新曲の振り入れやレコーディングを夜中までやって、始発で帰宅して、また大学に行く、という生活を送っていました。もう純粋にフィジカルがしんどかったです!

パフォーマンスがすごく激しいグループだったので、脚の疲労骨折やギックリ腰もやりました。ほかにも、重いマイクを握り過ぎて腱鞘炎になったり、マイクをぶつけて前歯を折ったり、いろんな負傷をしました。

アイドルの方々には、我慢する場面が多くあるのでしょうか。

とりわけ体調不良に関してはタフな部分があると思います。私がアイドルをやっていた頃は、どれだけ体調が悪くても仕事に穴をあけないことがあたり前でしたから。グループの中で一人が抜けるとフォーメーションが変わって、他のメンバーの負担になるから休みづらい、ということもありました。

何年も生理がこないことが「あたり前」とされる環境で…

かなりハードな日々を送っていたんですね。そんななか、女性特有の体のケアはどうしていたのですか?

今、思い返すと、婦人科系の知識がまったくなかったですね。まわりの人たちも、それを意識しないことがあたり前だったと思います。私は痩せたい気持ちがすごく強くて、“痩せたら人気が出るんじゃないか”とか、“〇〇ちゃんはもっと細い”とか、常に人と自分を比べていました。それで無理なダイエットをして、生理が何年もきていない状態に何も感じていなかったんです。

楽屋で「生理が何年もきていない」という話をすると、まわりの子から「私も!」という声が挙がるんです。私もまわりの子もそれが深刻なことだと思っていないので、「ラクでいいよね」で話が終わっちゃう環境でした。

体の酷使とストレスが原因で生理が止まってしまったのでしょうか。

そうだと思います。5年間くらいそのままにしていて、20歳を超えてからやっと、「ちょっとマズいんじゃないか…」と思って婦人科に行ったんですよ。血液検査でホルモンバランスがおかしくなっていることが分かり、高プロラクチン血症と多嚢胞性卵巣症候という疾患名がつきました。

医師に「これは戦争中の地域の女性に多い病気で、それくらいストレスを感じているってことです。このままでは危険ですよ!」ってすごく叱られたんです。そこで初めて「ああ、私の体は大変な状況だったんだ…」と気づきました。

生理が止まってしまうことの問題意識を持っていなかったんですね。

学校でも事務所でもそういうことを教えてくれる機会がなかったし、まわりに知識のある子もいなかったです。今のようにSNSで女性の健康について発信されていなかったので、普通に知らなかったですね。

病院でホルモンバランスを治す薬を処方していただき、服用しながら改善を試みたんですけど、全然改善しなくて。「もっと自分を大事にしなさい!」って医師に言われ続けていました。

症状が改善されたのはアイドルを辞めてからですか?

アイドルを辞めて政治家になってからですね。それまで行政から子宮がん検診の無料クーポンをもらっていたんですけど、まったく興味がなくて受けていなかったんです。議員になってすぐに議員健康診断を受けたら、子宮頸がんの前がん病変(がんになる一歩手前前の状態)が見つかったんです。

まさか自分が20代でがんになる可能性があるなんて考えもしなかったので、本当にびっくりしました。そこからいろいろ調べて、知識のないことがどれだけ怖いことだったかを実感しました。それをきっかけに、生理のことや健康に目を向けるようになりました。

10年間近く放置していたことになりますね。

そうなんです。アイドル時代を思い返すと、楽屋でメンバーが「私、生理じゃないのに、血が出てるんだけど…」と言っていることが何回もあったんです。あのときの私に知識があったら「それは不正出血だから、ライブを休んで今すぐ病院に行ったほうがいいよ!」って言えたのに。知らなかったから「え~、何でだろうね?」で話が終わっていたんです。そういう状況だったことにすごく危機意識を感じました。

区議会議員に転身してからも生きたアイドルのスキル

議員になったお話が出たので、アイドルから政治家へ転身した経緯を教えてください。

「東大アイドル」という肩書があったので、報道番組のコメンテーターとか、新聞の社会面の記事の執筆とか、インテリタレントとしてのお仕事をよくいただいていたんですね。アイドルとして責任を持って発信をしなければと思って、政治塾に入って勉強をしました。

そこで知れば知るほど“もっと若い人が政治に参加しなきゃいけない”という想いが強くなっていったんです。例えば、テレビで共演したベテランの国会議員が「まあ、あなたには分からないと思うけど」と言ってくるんですよ(笑)。そういう経験から、若い世代の政治参加が必要だと思いました。

そんななかで、グループのメンバーが事故で車イス生活になってしまったんです。でも彼女はアイドルを諦めずに、数か月のリハビリを経てステージに復帰しました。そのことが私にとって衝撃的だったんです。“社会ってこうあるべきだな”と思いましたし、“どうせできない”ということを前提に作られている制度を変える側になりたいという気持ちが強くなりました。

アイドルを辞めて、ちょうど25歳になって被選挙権を得たタイミングだったので、選挙に出ようと決意したんです。

区議になってみて気が付いたことを教えてください。

アイドル時代は自分自身を大事にすることを犠牲にしていたなと感じました。それから、辞めて一般人になることが、よしとされていないというか、“ここで成功しなかったら終わり”という雰囲気があって、私自身も「アイドルを辞めたら何も残らない」と思っていました。でも全然そんなことはなくて、残るもの、得たものがいっぱいあったんですね。

どんな場面で、アイドルの経験が生きていますか?

人と話す能力があたり前に付いているので、表舞台に立って話すことに関して物怖じしない、うまく人に伝えることができる、とかですね。SNSで人を不快にさせない発信も上手だと思います。「こういう発信をしたら、こういう人からこういうふうに思われるんだろうな」というのが分かるんですよ。

それから、アイドル業界はいろんなバックボーンを持つ人が集まっているので、多様性を受け入れられ、いろんな事態に寛容です。ライブ中のアクシデントを何度となく経験してきたので、臨機応変に対応する能力も付いていますし。そういうことを生かして、“まだまだ活躍できる”ということを政治家になって感じましたね。

編集後記

女性の健康への知識の重要性を自身の体験を通して知った橋本さん。また、アイドルと政治家は遠く離れている印象でしたが、アイドルこそ政治家向きなのではと感じさせてくれます。後編では“アイドル出身の政治家”だからこそできる取り組みについて伺います。

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